前回ネックのジョイントスクリューは締めすぎない方が云々という話しをしましましたが、どんな場合でも個々に加減は付き物なので、そこが難しい所であり、面白い所でもあったりしますね。もともとネジ全般は締めすぎ禁物なので、動かなければいい、緩んだらまた締めればいいくらいの感覚でもよいと思います。電装系など緩んで困る所には緩み止め等それなりの対策も出来ますしね。まあ何事もバランスです。
そう、ギターのセッティングで結構大事なのはそのバランスを取るという点です。丁度良い落とし所。いろんな人間がいるようにギターも個々に違うので、それぞれに合ったバランスで整えてやります。エレキなんかもうほとんどネジで調整出来るし、特にストラトタイプの場合は相当な変化を期待出来るので、やった事のない方はトライしてみてくださいね。なんとなくでも解る事が増えると、上達に繋がったりもするのでね。
そこで今回はストラト系ギターの最大の魅力?シンクロナイズドトレモロユニットのセットアップにまつわる話しをしましょう。これもネット上にはセットアップ方法がたくさんあると思うので、方法よりも考え方に重点を置いて話したいと思います。
因みにシンクロナイズドトレモロはフェンダー社の製品名なので、同型の他社製品はヴィンテージトレモロとかスタンダードトレモロとか違う名前で表記されてますが、こういう解説記事では混乱するのでここではシンクロユニットと呼ばせていただきます。下の画像のユニットについての話です。
シンクロユニットを調整する際の一番の課題はチューニングの維持ですかね。このユニットは6本のスクリューでボディーにマウントされてますが、新しい場合はともかくちょっと古くなってくると各スクリューに傾きや変形が生じてくる事があります。これが原因でユニットがスムーズに動かなくなると、アームダウン後の戻りが悪くなり元の位置に戻り切らない状態になります。ちょっとダウンした状態で止まってしまうので、音程はフラット気味に。アームアップが出来るフローティングにセットされてる場合はアップする事で元に戻ったりします。
こういうのをアームとうまく付き合うとか言いますが、これは無くせません。極力減らす努力は出来ても無くなりはしないので、そこは前提として知っておいてください。
対策としては6本のネジを微妙に回転させて一番動きがスムーズになるポイントを探すのですが、これは弦を外して裏のスプリングも取って完全にフリーの状態にしてやると判りやすいです。出来たら一度ネジも全て取り払ってユニットも外して、ボディーのネジ穴周辺をちょっと掃除して固形ワックスとか塗っておくとよい。
そしてまず1、6弦部のネジから留めてみて、動かして確認しながら残りのネジを入れていくと動きのよろしくないネジが判ったりする。ネジはアームを使うかどうかによってネジ込む高さが違うので、ここは要注意。
よく両端の2本と中4本で変えるとかありますが、あれは両端2本だけキチっとやって中4本は干渉を抑える為に緩めにという発想。当然ベタ付で使う場合には意味はないし、それで動きがスムースになる訳でもないです。大事なのは締め込む高さ。これは図を参照されたし。
こんな風にネジの頭が動作の邪魔をしない事、あと締め過ぎ!そこを意識するとよいです。
そしてここも大事。裏のスプリングの張り具合。これはスプリングそのものにもいろいろあるからそっちは置いといて、フローティングとベタ付けとダウンのみ、この3種類の使い方によるセッティングの違いを少々。
まずフローティングはどの程度アップさせるかが一つポイント。これの基準として3弦解放のGが使われます。”3弦Gで1音くらい” これが一般的。もちろん音程に囚われない感覚的なものでも全く構わないけど、先のダウンの戻りが悪い時とか、ナットやペグでの弦のたわみを解消する際にこれくらい引っ張れると直りやすいというのはあります。概ね1.5音くらいまでがいい所かな。ちょい高めにしておくと音楽的にも収まりやすい。
スプリングの本数とハンガーの締め具合はゲージによって異なるが、0942だとスプリングは3本がよいと思う。Raw Vintage でも5本は多いかも。この辺はアップする量と相談してください。1046だと4本で弱め。3本で強めも出来なくはないけどバーに掛かる負担を意識して決めるとよいかな。
次にベタ付け。これはバーを使用しないのだから、あまりシビアな事は無いが、やはりあまり強い力で引っ張る必要はないかと。クラプトンとかスプリング5本パンパンで更にブロック入れて動かなくしてるけど、通常はおススメしません。確かにフローティングよりもベタの方が音はしっかりするけど、ネックジョイントと同様押さえつける力が強くなりすぎると逆効果になる。
ただし、チョーキング時に浮き上がるようだと、ダブルチョークでは隣の弦がフラットしちゃうので、その程度では浮き上がらないくらいの張り具合が一つ基準になります。フローティングではわざわざ隣の弦もすこしチョークして音程を合わせたりするけど、アーム使わないのにそこに気を遣う事も無いという考え方。
最後にダウンのみ使う場合。これはアーム使うけどベタ付けの音も欲しい。アップ使わないし。弦切れた時にフローティングだと全部のチューニングが狂うのがイヤ。という方が選ぶセッティング。確かに弦が切れた時の安心感は捨てがたいけど、ダウン後のチューニングをアップして修正する方法が使えないので、調整としては一番ハードルが高い。ユニットの戻りはよしとして、ナット滑りや弦の巻き方など、プレイヤー自身によるちょっとしたメンテが必要でもあるので、なかなかお付き合いが大変なお方でもある。ポイントはベタ付け同様スプリングの張り具合。どれだけ力をかけたらダウンするのかで判断。個人的にはやはり無駄に押さえつけたくないので、あちこちチョーキングしながら浮くか浮かないか、またはバーを軽く動かしてみて扱いにくい動きにならないくらいの張り具合にします。バーの負担も意識したい。
この張り具合を決めてる時、ユニットとボディーの着き具合で音がどのように変わるかをチェックすると、振動の伝わり方が接する力と関係あることがよく判りますよ。
以上、バネの張り具合もネジの締め具合もやはりバランス。そういうお話でした。
調整ってやり方は分かっても正しい着地点がわからないというのが多いと思います。でもそれはある程度自分で決めてよいというかあまり縛られるほどの事でもないので、ちょこちょこ弄って様子をみての繰り返しもありです。そのうち自分にとってのツボが見えてくるので、根気よくやってください。