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Rune guitar

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ギターリペアマンの視点から、仕組みやパーツなどにまつわる話しを綴っています。

チューニング 純正律と平均律_c0179274_00140403.jpg
 純正律と平均律。これって学校で習ってるとしたらいつだったんだろうか? 正直小学校の頃から音楽の成績は良くなくて、中3でギターを始めてから独学で覚えてきた事の方が断然多い。最初はアドリブとか出来たらカッコイイだろうなと思って、高2くらいからスケールとかやり出して。楽典買ったのは20歳過ぎてたかもしれない。

 楽典てのは音楽理論の教科書みたいな、なんだか堅苦しい文章で取っ付き辛い本。でもアレって頭から読むもんじゃなくて、わからない所を調べる物。そう考えるようにしてからは逆によく見るようになって、そのわからない事の中の一つがこの純正律と平均律でした。
 どちらもドレミファ〜の音律の事なんだけど微妙に違っていて、今一般的なのは平均律の方。もちろんギターは平均律の音律が出るように作られてます。

チューニング 純正律と平均律_c0179274_00161869.jpg
 この2つの違いは一言では説明が難しいので、大まかに順を追って話すと、大昔ある音にもう一つ音を重ねた時にキレイな響きになる組み合わせが見つかった。そのルールは周波数の比率だそうで、例えばA=440Hzを基音とするとE=660Hzは5度の関係になる。比率は2:3。弦の長さで言うと5弦開放Aを1とすると同7フレットのEは2/3に当たる。このシンプルな比率がキレイな響きに必要な要素で、これを積み重ねて出来たのがピタゴラス音律。

 この辺の詳しい話しはググってもらうとして、この音律での組み合わせは響きがキレイなのがポイントなんだけど、うまくキレイに響かない組み合わせもある。それを補正発展させて出来たのが純正律という訳。
 最近はこの音律に近い響きが得られるフレッティングが施されてるギターも出てきてますね。

 しかし、この純正律にも欠点があって、一つの調(キー)にしか対応出来ない。キーCで調律された場合、ドに対してのミとソはキレイだけど、レに対してのファ#とラ、つまりキーDはうまく調和しない。
 そこでまた改良を加えて、あらゆるキーに対応出来るようにしたのが平均律。ザックリ言うとどのキーでもちょっとずつズレてるんだけど、わかんないっしょ? ていう感じ。
 純正律のような揺れの少ない美しい和音は得られない代わりに、調に縛られない自由を得た訳です。

 この全てのキーに対応出来るってのはすごく革命的で、以後ピアノやギターを始め多くの楽器に取り入れられて、今耳にする音楽はほぼ全て平均律で作られてます。

チューニング 純正律と平均律_c0179274_00310827.jpg
 そこで本題。ではギターのチューニングはホントに平均律なのか?
 今どきチューニングを耳で合わせる人はどのくらいいるかわからないけど、昔は音叉と耳で合わせるのが普通だった。2本の弦を鳴らしてウネリが無くなる様に合わせるんだけど、これ少なくとも隣り合う弦とかよく使うキーのコードでは部分的に純正律っぽい合わせ方になっていると思われる。ウネリを無くすように合わせるのだから。

 反対にチューナーを使ってる場合は開放から全て平均律になっているはず。どの和音もややウネるが、どのキーでも安定した和音になるし、他の楽器(例えばキーボード)等とユニゾンになる場合はこの方が自然だ。

 その部分的に純正律に近いチューニング。これは開放のチューニングだけではなく、オクターブピッチの合わせ方でも大きく変わってきます。
 そもそもアレはなんで未だに12Fなのか? おそらく昔はチューナーとか無かったから、耳で合わせるのに一番わかり易いように12Fになったってだけじゃないかな。今はクロマチックチューナーというどのポジションでも合わせられるのがあるんだから、低音弦なんかは5Fとかで合わせた方でよいです。だいたいイントネーションピッチが合わせられる範囲ってそんなに広くなくて、太い弦なんかは弦長の1/3くらいの範囲しか合わないです。つまり12Fで合わせたら5Fは合わない。よく使うポジションだけ合ってればOKなんです。

 さてさてまた長話しになりましたが、まとめるとギターはチューナーで合わせた時とそれを耳で補正した時とで、平均律なのに純正律っぽい響きにする事も出来る、ある意味ハイブリッドな楽器であるという事。かな?

 以前、平均律と純正律をフレット位置に置き換えたらどのくらいの差があるのか調べたら、音程によってはかなりの開きがあった。
それ以来、ギターの精度に関してちょっと寛容になった気がします。

それではまた。
 

# by Rune-guitar | 2023-10-02 08:27 | guitar repair
 前回ネックのジョイントスクリューは締めすぎない方が云々という話しをしましましたが、どんな場合でも個々に加減は付き物なので、そこが難しい所であり、面白い所でもあったりしますね。もともとネジ全般は締めすぎ禁物なので、動かなければいい、緩んだらまた締めればいいくらいの感覚でもよいと思います。電装系など緩んで困る所には緩み止め等それなりの対策も出来ますしね。まあ何事もバランスです。
ギターにまつわるいろんな説 2  シンクロナイズドトレモロユニット_c0179274_16381599.jpg
 そう、ギターのセッティングで結構大事なのはそのバランスを取るという点です。丁度良い落とし所。いろんな人間がいるようにギターも個々に違うので、それぞれに合ったバランスで整えてやります。エレキなんかもうほとんどネジで調整出来るし、特にストラトタイプの場合は相当な変化を期待出来るので、やった事のない方はトライしてみてくださいね。なんとなくでも解る事が増えると、上達に繋がったりもするのでね。

 そこで今回はストラト系ギターの最大の魅力?シンクロナイズドトレモロユニットのセットアップにまつわる話しをしましょう。これもネット上にはセットアップ方法がたくさんあると思うので、方法よりも考え方に重点を置いて話したいと思います。
 因みにシンクロナイズドトレモロはフェンダー社の製品名なので、同型の他社製品はヴィンテージトレモロとかスタンダードトレモロとか違う名前で表記されてますが、こういう解説記事では混乱するのでここではシンクロユニットと呼ばせていただきます。下の画像のユニットについての話です。
過去にもちょっと取り上げてるので、こちらも参考までに https://runeguitar.exblog.jp/20995375/
ギターにまつわるいろんな説 2  シンクロナイズドトレモロユニット_c0179274_16394851.jpg

 シンクロユニットを調整する際の一番の課題はチューニングの維持ですかね。このユニットは6本のスクリューでボディーにマウントされてますが、新しい場合はともかくちょっと古くなってくると各スクリューに傾きや変形が生じてくる事があります。これが原因でユニットがスムーズに動かなくなると、アームダウン後の戻りが悪くなり元の位置に戻り切らない状態になります。ちょっとダウンした状態で止まってしまうので、音程はフラット気味に。アームアップが出来るフローティングにセットされてる場合はアップする事で元に戻ったりします。
 こういうのをアームとうまく付き合うとか言いますが、これは無くせません。極力減らす努力は出来ても無くなりはしないので、そこは前提として知っておいてください。



ギターにまつわるいろんな説 2  シンクロナイズドトレモロユニット_c0179274_16521272.jpg
 対策としては6本のネジを微妙に回転させて一番動きがスムーズになるポイントを探すのですが、これは弦を外して裏のスプリングも取って完全にフリーの状態にしてやると判りやすいです。出来たら一度ネジも全て取り払ってユニットも外して、ボディーのネジ穴周辺をちょっと掃除して固形ワックスとか塗っておくとよい。
 そしてまず1、6弦部のネジから留めてみて、動かして確認しながら残りのネジを入れていくと動きのよろしくないネジが判ったりする。ネジはアームを使うかどうかによってネジ込む高さが違うので、ここは要注意。
 よく両端の2本と中4本で変えるとかありますが、あれは両端2本だけキチっとやって中4本は干渉を抑える為に緩めにという発想。当然ベタ付で使う場合には意味はないし、それで動きがスムースになる訳でもないです。大事なのは締め込む高さ。これは図を参照されたし。
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 こんな風にネジの頭が動作の邪魔をしない事、あと締め過ぎ!そこを意識するとよいです。


 そしてここも大事。裏のスプリングの張り具合。これはスプリングそのものにもいろいろあるからそっちは置いといて、フローティングとベタ付けとダウンのみ、この3種類の使い方によるセッティングの違いを少々。
 
ギターにまつわるいろんな説 2  シンクロナイズドトレモロユニット_c0179274_16442558.jpg
 まずフローティングはどの程度アップさせるかが一つポイント。これの基準として3弦解放のGが使われます。”3弦Gで1音くらい” これが一般的。もちろん音程に囚われない感覚的なものでも全く構わないけど、先のダウンの戻りが悪い時とか、ナットやペグでの弦のたわみを解消する際にこれくらい引っ張れると直りやすいというのはあります。概ね1.5音くらいまでがいい所かな。ちょい高めにしておくと音楽的にも収まりやすい。
 スプリングの本数とハンガーの締め具合はゲージによって異なるが、0942だとスプリングは3本がよいと思う。Raw Vintage でも5本は多いかも。この辺はアップする量と相談してください。1046だと4本で弱め。3本で強めも出来なくはないけどバーに掛かる負担を意識して決めるとよいかな。


 次にベタ付け。これはバーを使用しないのだから、あまりシビアな事は無いが、やはりあまり強い力で引っ張る必要はないかと。クラプトンとかスプリング5本パンパンで更にブロック入れて動かなくしてるけど、通常はおススメしません。確かにフローティングよりもベタの方が音はしっかりするけど、ネックジョイントと同様押さえつける力が強くなりすぎると逆効果になる。
 ただし、チョーキング時に浮き上がるようだと、ダブルチョークでは隣の弦がフラットしちゃうので、その程度では浮き上がらないくらいの張り具合が一つ基準になります。フローティングではわざわざ隣の弦もすこしチョークして音程を合わせたりするけど、アーム使わないのにそこに気を遣う事も無いという考え方。


 最後にダウンのみ使う場合。これはアーム使うけどベタ付けの音も欲しい。アップ使わないし。弦切れた時にフローティングだと全部のチューニングが狂うのがイヤ。という方が選ぶセッティング。確かに弦が切れた時の安心感は捨てがたいけど、ダウン後のチューニングをアップして修正する方法が使えないので、調整としては一番ハードルが高い。ユニットの戻りはよしとして、ナット滑りや弦の巻き方など、プレイヤー自身によるちょっとしたメンテが必要でもあるので、なかなかお付き合いが大変なお方でもある。ポイントはベタ付け同様スプリングの張り具合。どれだけ力をかけたらダウンするのかで判断。個人的にはやはり無駄に押さえつけたくないので、あちこちチョーキングしながら浮くか浮かないか、またはバーを軽く動かしてみて扱いにくい動きにならないくらいの張り具合にします。バーの負担も意識したい。
 この張り具合を決めてる時、ユニットとボディーの着き具合で音がどのように変わるかをチェックすると、振動の伝わり方が接する力と関係あることがよく判りますよ。


以上、バネの張り具合もネジの締め具合もやはりバランス。そういうお話でした。
調整ってやり方は分かっても正しい着地点がわからないというのが多いと思います。でもそれはある程度自分で決めてよいというかあまり縛られるほどの事でもないので、ちょこちょこ弄って様子をみての繰り返しもありです。そのうち自分にとってのツボが見えてくるので、根気よくやってください。
 ぐちゃぐちゃになったら持ってきてください。なんとかなりますから。
最後にまたまた営業。賢そうな赤と悪そうな白。ぜひご覧ください。

それでは。

# by Rune-guitar | 2023-09-24 20:23 | guitar repair
 このブログを始めたのはもうずいぶん前になります。途中かなりの間放置してしまったので、もしかしたら内容的に重複してるかもしれないのだけど、最近お客様との会話で出た話しを少々。

 いわゆる世間一般に言われる事柄で、プロの観点からしたらちょっと違うかなって事はあるか? って話。
まあ、ありますね104.png。何話か前のアコギのブリッジピンの話 なんかもそうだけど、世間ではなんとなくそう言われているけどって話は結構あります。

ギターにまつわるいろんな説について_c0179274_01441893.jpg
 例えば、ボルトオンのネックを固定するネジの締め具合。今でこそ締めすぎてはいけない説が一般的になってきたけど、あれ何故そうなのかについては ”鳴りが悪くなる” くらいにしか言われてない気がします。でも、そもそもこれの大元になるポイントは、昔のボルトジョイントがあまりにもルーズだったって事。フェンダーでも70年代後半のとかスゴイですからね。まああれは4点止めではなく3点てのもあるけど、とにかくポケットがブカブカだし平らじゃないしで、要は面でしっかり接してないものが多かったんです。

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 ボルトオンネックというのは、ボディーに開けられたネックポケットとネックの末端ネックエンドがなるべくピッタリしていて欲しいもの。当たり前ですが、その理由はちょっとした衝撃でネックがズレてしまわないように。これセンターズレと言います。
 一般によく言われてるのは振動の伝達がとかサスティーンがとかですが、そんなのより以前に演奏中にジョイントが動かれてはチューニングがメタメタになってしまうから。これはおそらくたくさんのプレイヤーが経験したと思う。
 だからジョイントプレートがボディーにめり込むくらいキツくネジが締め込まれている個体をよく見ます。気持ちは分る。演奏にならなくなるから。
 しかしあまりに締め込み過ぎると今度は別の問題が。音についての問題はここで出てくるんです。

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 接点というのは効率だけ考えたらしっかりと大きな面の方が良さそうですが、それはどちらかというと電気信号などの分野ではないかと思います。抵抗が減りそう。
 でも物が振動しているエネルギーは、あまり大きな面同士では力が分散してしまうし、そこにネジによって圧が加わると逆にミュートしあう関係になるようです。それがセットネックの利点へと繋がってるんですね。互いを押さえつけ過ぎない、接着によってジョイントされてるので、確かに理に適ってるんです。
 でも逆に考えるとボルトジョイントはその押さえつける力を加減出来るとも言えます。ただしその為にはネジをキツくする必要のないピッタリした接続面が必要となる。そうして今インスタとかでも良く見る、ネジ留めしてなくてもネックが外れないタイトなジョイントが流行ってきた訳でㇲ。

 もっとも、ポケットにネックをはめただけでボディーが一緒に持ちあがる事には、ほぼ意味はありません。だから音がイイとかでもないし、音響的には先の ”押さえ合う関係” になっているのでどちらかといえば個人的にはNG。あれはその状態(センターがバッチリ合っている)でボディー側のネジ穴をピッタリサイズに(M4のネジなら4mm)に開ける工程の途中。一見ネジ穴ピッタリってどうなの?って思うかもしれないけど、確かにボディー側でネジが効いてはダメ。空回りするけどガタは無い状態がベスト。これで穴が決まったら後はネックはもう少しルーズにします。塗装したら入らないから。そして最終的にスルッとポケットに収まるくらいに仕上げるのが最近のやり方。これでネジは緩くてもネックは動かない。好きなキツさに締め込めばよい。



 うーん、ネックの留め方だけでこんなに長くなるとは。
まあ、そんな風に物事にはいろいろ理由があってそうなってる事が多いので、その理由こそがとても大事。そこを意識せずにいわゆる都市伝説的なものを取り入れても、自分にとってのメリットになるかは??ですね。いや、トライ&エラーはいい事です。でもなぜそうするか、なぜそうなっているのか、これは意外と深堀り出来るので、その根本の部分を見落とさないように。

一応、ちょっと営業も。
オリジナルギターCurion2 外見はレトロでどこぞのギターに交じってってもわからなそうなルックスだけど、中身は独自のハイエンドスペックを装備した一品です。ピッチの安定重視。演奏性、レスポンスにも拘ったギターです。ぜひリンクをご覧下さいませ。

今回はちょっと短めにして、次回この続きを早めにUPしてみようかなと思います。次、何にしよう。たくさんある。


# by Rune-guitar | 2023-09-19 02:23 | guitar repair

by Runeguitar