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Rune guitar

runeguitar.exblog.jp

ギターリペアマンの視点から、仕組みやパーツなどにまつわる話しを綴っています。

 久々の更新になってしまいました。修理屋なのに修理のネタがあまり無いこのブログですが、最近アクセス数が増えてきておりましてありがたい事です。お役立ち情報としてのネタを心掛けておりますので、ぜひ今後ともよろしくお願いいたします。


 さて、今回のお話しは"ピックアップ"。ギターの音を拾うマイクですね。
 一口にピックアップと言ってもかなり幅のあるパーツですので、ひとまずエレキギター用に絞って仕組みから取り付けまで解説していきますね。たぶんまた長話しになるので、何回かに分ける事になるでしょう。お付き合いください😊


 初めに種類から。残念な事にエレキギターという物は、未だに!70年も前の!たった2種類のギターで解説が出来るほど進化をしたがらない変な楽器です。いや、実際にはいろいろ新しい物も出てきてはいますけどね。でも話の中心となるスタンダードモデルはこの2本。クラシック音楽のように当時の作品を再現するような使命もないのに、初心者用のギターで必ず目にする2本。

 それはストラトキャスターとレスポールです。特に画像は用意してませんが、エレキに興味ある方ならもはや画像もリンクも不要ですよね。

 そのストラトに搭載されている ”シングルコイル” とレスポールに搭載されている ”ハムバッキング” という2種類のピックアップについて話してみたいと思います。
 まずシングルコイルから。 


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 これがシングルコイルピックアップというヤツです。初心者の方でも見た事あるんじゃないかな。”西のフェンダー、南のギブソン” てなもんで、1954年の発売以後このシングルコイルを搭載したストラトはウエストコースト系の音楽には欠かせない存在となりました。
 サウンド的にはカラッと明るいタイプ。歯切れの良い輪郭のはっきりしたトーン(音色の意味)で、今ではあらゆるジャンルで使われてます。
ただデメリットとしてよく言われる点にノイズの多さがあります。構造上仕方ないのですが、電波系のヴーッというノイズ(ハムノイズ)には無防備なので、そこはいろいろ対処が必要な所です。

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 ストラトにはこのシングルコイルが3基マウントされてます。ネックに近い方からフロント(F)、センター(C)、リア(R)と呼ばれ、レバースイッチで5通り(昔は3通り)の音色が選べます。
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 それぞれ単体の音に加えてリアとセンター、もしくはフロントとセンターのピックアップを同時に使う事が出来ますが、このサウンドを ”ハーフトーン” と呼び、ストラトの魅力の一つとなってます。因みにストラト以外ではハーフトーンとは呼ばず、ミックストーンなどといいます。
 

 カバーを外すと中身が見えますが、この構造こそがシングルコイルな訳で、似たような大きさでも違う構造の物はシングルコイルサイズの別物だったり、全く違う姿をしていてもコイルが一つならそれはシングルコイルです。
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 構造は至ってシンプル。上下2枚のファイバー板にポールピースと呼ばれる金属の棒が6本刺さってます。ポールピースは磁力を帯びていて、その周りに髪の毛みたいに細い銅線がとんでもない数で巻き付けられてます。あまり公表されてないけど約8000ターンくらいらしい。まあこの数は大して重要ではなく、別の数字になって後ほど出てきます。
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 電気の流れる線を巻き付けた物はコイルと呼ばれ、いろんな仕事をします。そのコイルが一つなのでシングルコイルと言う訳です。


 この磁石とコイルで出来た単純な部品がエレキギターの心臓部。これが無いとアンプから音を出せません。仕組みは電磁誘導っていうヤツで、詳しくはググッてください。簡単に言うとスティール弦の振動でポールピースの磁界に変化が起こると、コイルに電気が発生するというもの。とても微々たる電力ですけどね。

 
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 そしてこのコイルと磁石にはあるルールが。ちょっと画像に描き込んでみたけど解るかな? 図と併せてご覧ください。
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 磁極の向き、コイルの巻き方向、電気の流れる方向。この3つを上手く合わせないと、複数のピックアップを同時に使った時(先のハーフトーンとか)にちょっとした不具合を起こすのですが、それを逆位相とか位相のズレ、反転などと言います。



 ここでちょっと位相について。位相とは音や電気信号をグラフにするとわかりやすいです。前回の周波数ネタと被りますが、図1は弦を弾いた時の向きと同じに電気に変換された図です。
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 例えば図Aが弦の動きをそのまま電気信号に変換したものとすると、Bはまるっきり裏返した状態になってます。これを反転と言ったり、位相のズレと呼んだりします。先の3要素のうち1つが反対だと、このように波形がひっくり返ってしまうんです。
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 位相の反転は、実際聴いた感じでは ”鼻を詰まんだような音” なんて表現をします。2つのピックアップを同時に使用した際に、片方のピックアップが拾った音と真逆の波形がもう片方から出てくるので、合わさると打ち消しあってなんとも妙なサウンドになるんです。これをフェイズアウトした音と言います。
 理論上では相殺されて音が無くなりそうですが、実際には2つのピックアップの位置を全く同じには出来ないし、全く同じピックアップを作る事も出来ません。その為波形が微妙に異なり、無音にはならず低域の無い線の細い音になります。



 話を戻して、先の画像では巻き始めから反時計回りにワイヤーが巻かれてます。それぞれ白と黒のリード線に接続され、通常は黒い線をグランドへ。白い線は出力(Hot)としてポットやスイッチを経由してOUTPUTジャックに向かいます。
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 位相がズレるパターンは3つ。図2の中でBの巻方向というのがちょっと解りにくいかな。電気の流れる向きを変えれば同じ事なのでね。ただ位相がズレる要素として巻方向と電気の流れる方向、そして磁極の向き、このうち一つもしくは3つが合わない場合、位相は反転してしまうんです。2つなら反転の反転で元通り。
 なのでもしピックアップを一つだけ交換するなら、唯一変更が効くHot/Coldを入れ替える事で位相を合わせる作業が必須になってきます。この話しはまた出てきますが、まずは位相が合ってないとよろしくないと思っておいてください。
 


 
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 次にハムバッキングピックアップについて。
 シングルコイルの細かい話しは置いといて、先にハムバッキングの方を説明します。
 基本的な構造はシングルコイルと同じですが、こちらはボビンの数が2つ。故にダブルコイルと呼ぶ人もいますが、ただ2個ってだけじゃないです。

 ここでストラトの弱点であるノイズの話しを蒸し返します。ハムノイズというのは主に電源周りとかから飛んでくる電波なんですが、ハムバッキングという名前は、そのハムを相殺するという仕組みから来ています。
 具体的には片方のコイルが拾ったハムノイズに、もう一つのコイルが拾った位相反転したノイズをぶつける事でノイズだけを打ち消す、そんな画期的なピックアップなんです。ワイヤレスイヤホンなどに付いてるノイズキャンセル機能もこれと同じ理屈ですね。

 先に配線の方から。2つのピックアップを同時に鳴らすという点ではストラトのハーフトーンと似てますが、ストラトは2つのコイルを並列に接続するのに対し、ハムバッキングは直列に繋ぎます。この違いは出力に表れて、並列(パラレル)はやや大人し目なサウンドに。直列(シリーズ)はパワフルなサウンドになります。理科の実験でやる電池と電球のアレと同じですね。
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 この2つ並んだコイルの間から1本線を取り出して、コイル1つだけの音を得る事も出来ます。これをコイルタップと言いハムバッキングピックアップのサウンドバリエーションになってます。
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 ただし、コイル1つと言ってもストラトのシングルコイルと同じ音が出る訳ではないです。
ハムバッキングのポールピースは磁石ではなく、磁石はボビンの下にある為に表面の磁力はシングルコイルよりもやや弱め。加えてコイル1つのターン数も5000ターンくらいなので、タップ時のパワーはシングルコイルよりも弱くなります。ここは知っておくべき所。

 そのタップにも関わる、ハムバッキングピックアップからの線は大きく2種類。1つはホットに撚り線1本と、それを覆う網線でコールドとグランドを兼ねる1芯シールド(シングルコンダクター)。
 もう一つはそれぞれのボビンのホット/コールド各1本ずつと裸線のグランドを一纏めにした4芯シールド線(4コンダクター)。シールドは網線ではない物も多い。
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 ヴィンテージ仕様の物は1芯シールドが多いですが、モダンタイプの物では殆どが4芯シールドになっていて、他メーカーのピックアップと同居する際にフェイズアウトを回避出来るようになってます。


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 中身こんな感じ。それぞれのホット/コールドが4色のリード線に接続されてる様子。ここでの色分けは各メーカーで適当に決められてるので、異なるメーカーのピックアップを同居させる場合の混乱の源となってます。

 参考までにDUNCANはスラッグ(無可動)ポールピース側が黒ホット白コールド、アジャスタブル側が赤ホット緑コールドになっていて、白と赤を直結してコイルタップ時に使用します。タップしないなら絶縁しておきます。
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 もし位相が合わなかったら、ホットコールドを入れ替える。グランドとペアになってる緑をホットに、黒をグランドとペアにしてアースに落とせばOK。
 1芯シールドはこの配線を中でやってある為、タップや位相反転が出来ない点には注意が必要です。

 最後にハムバッキングのノイズ対策について説明します。わざわざ名乗るくらいなので、これは当時画期的な発明だったんですよ。開発したのはギブソン社。原理はもっと前からあったみたいだけど、今の完成形とも言えるデザインはセス·ラヴァーさんの功績らしい。もう70年も前なのに未だに現役バリバリ。てかこれ無しには始まらない程の絶対的存在ですね。

 その特許を取れる程の構造とは、先のシングルコイルの話しでも出てきた位相の反転を利用したものです。位相が反転する要素には磁極の向きとコイルの巻方向がありました。あとホット/コールドとね。
 問題となるノイズ成分はまあそこら中にあるんですが、基本電波なのでコイルに乗っかってきます。そこで2つのコイルの片方を逆巻きにする事でノイズを相殺しようとするんですが、当然弦振動の波形もひっくり返る為ノイズは消えてもギターの音がフェイズアウトしてしまいます。しかし、ここで更に磁極も逆にしてやると今度は弦の波形だけが反転してフェイズイン。ノイズ成分は打ち消されたまま正常な音に戻るんです。これこそが名前の由来、ハムバッキング構造なんですね。

 この構造はシングルコイルにも応用されていて、例えばストラトのハーフトーン時にノイズキャンセル効果が得られるように、センターピックアップだけ逆巻き逆磁極にしてある製品もあります。
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 この磁極の向きはあまり取り上げられることが無いんですが、メーカーによってはコイルタップ同士のミックストーンでもハムキャンセル出来るようになってるものが増えてきましたね。昔はセレクタ―の都合上タップ線をアースに落とすやり方が主流だったので、2つのコイルの前後を入れ替えない限り同じ磁極のコイルがセレクトされる為、ノイズはキャンセルされずコイル2つ分のノイズが垂れ流しでした。まだこの磁極を意識した配線はポピュラーではなかったというか、コイルタップがあまり必要とされてなかったのかな。
 しかし最近はスーパースイッチ(過去記事はこちら)という変態スイッチが出てきたお陰で、配線のバリエーションは増大。配慮も増大。特に2ハムを4つのシングルコイルと捉えて、タップ時に使用するコイルのポジションやノイズキャンセルも絡めたパターンでは、従来の5ポジションの中にあった ”使わない音” を別の ”使える音” に置き換えることが可能に。これは操作をシンプルにする上ではとても画期的です。配線ちょっとややこしいけど。

 故にピックアップ交換の際にはテスターは必ず使います。テスターはそのピックアップの導通やおおまかな出力、位相も調べる事が出来るので、半田ごてと並んで重要なツールです。持ってない人はぜひお求めを。デジタルとアナログ(針メーター)は好みもあるけど僕は針派。両方あると便利。


 さてさてちょっと長くなりすぎたので、ここいらで次回にしておきます。次回はなんだか流れ的にテスター使って配線の構築とかですかね。

 それではまた。




# by Rune-guitar | 2024-04-14 22:45 | guitar repair
 前回歪みの話しの時、周波数について少し触れたけど、この周波数が何にどう関わるのか? 音作りする上でどの程度重要になってくるのか? 今回はそんな話しをしようと思います。
 毎度ブログ書きながら思うんですが、僕みたいな解説ブログではイメージしてもらう事が大事だと。文章なんてそのまま理解する訳じゃなし、へぇ~ってなるのは頭に図が浮かんだ時なので、だからいつも話が長いです。ホント暇な時におススメします。逆に斜め読みする方が時間がもったいないので。

 さあ早速始めましょう。まずは音そのものから。
 人間は鼓膜の振動を音として認識しますね。鼓膜を振動させるのは空気です。もっと言うと空気の揺れです。何かが振動しても空気がないと鼓膜には届かないので、音は聴こえません。
 振動は空気を押したり引いたりして波を起こします。その波に合わせて鼓膜が動き、人間はそれがどんな振動かを感じ取ります。

 その"どんな振動"かを表すものの一つが周波数で、音の高い低いを数字で表す事が出来るんです。周波数が小さいと低い音。大きいと高い音を表します。

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 前回お話ししたサイクルという言葉。波が押して引いて元に戻る一連の動きを指し(図1の左)、1秒間に1サイクルで1Hzという所まで話しましたが、このHz(ヘルツ)が周波数の単位になります。チューニングしたり音を作ったりイメージを伝えたり、覚えておいて損は無い数字なのでメンドクサイけど覚えてみてね。


 人間の耳は聴こえる範囲がだいたい決まってます。可聴範囲と言いますが、概ね20Hzから20kHz。これより下も上も耳では聴こえません。下は体感で認識出来るみたいだけど、上は加齢と共に聴こえ難くなるようで、モスキート効果なんてのが話題になった事もあります。(若い人の方が超高音まで聴こえるのを利用したもの)

 ではギターの音域はその中のどの辺りにいるかと言うと、大雑把に80Hzくらいから1.5kHzくらいかな? これはあくまで音程(音の名前)での話しなので、耳に聴こえる音の周波数とは異なります。実際の音には倍音という音の質感に関わるもっと上の周波数が加わってるので、歪んだエレキギターの音なんかでは聴感上1.5kHzはミドル~ハイミッドの帯域。ディストーションの効いた高音域は10KHz以上にもなる。音の名前はその音の一番低い周波数を基音として音名で表してるんです。

 なんか楽典ぽくなってきたな。ついでに今時のチューニング事情はどうでしょう? みんなほぼほぼチューナーだろうから、A=440Hzという言葉に馴染みがあるかどうか? 
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昔は音叉が当たり前だったので、音叉の音と5弦5フレットのハーモニクスを合わせるやり方が主流でした。その440HzのAの音がギターでは1弦5フレットに当たります。ピアノで言うと真ん中辺りのA。低い方から4番目のラの音です。(ギターの楽譜は1オクターブ高く表記してるのでそこは注意)
 ピアノに当てはめるとギターの音域って真ん中より低い方なんですよね。でも歪んだ音なんかはもっと高く聴こえたりしますね。それが倍音てヤツです。ハーモニクスで出せる音が最も基音に近い倍音で、普通に弾いてもこの成分は含まれてるんです。更に倍音の倍音というように一つの音でも様々な倍音を含んでいて、ディストーションサウンドはこの元々含まれてる倍音を増幅する効果があるので、基音以上の高い周波数がたくさん聴こえるようになります。

 更にもう少し予備知識を。 基音の周波数が倍になると音程は1オクターブ上がり、半分になると1オクターブ下がります。5フレットのハーモニクスは開放の2オクターブ上が鳴るので、5弦5フレットのハーモニクスが440Hzなら開放は110Hz。同じく1弦5フレットが440Hzなら、その12フレット上の17フレットは880Hzになる計算ですね。

 さあ、なんとなく見えてきたでしょうか。ようやく前回からの続きっぽくなってきたかな?
 ではいざ音作り。まずはアンプのトーンコントロールを見てみよう。
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 価格帯や仕様によって様々だとは思うけど、だいたいBass Middle Treble の3コントロールが多いかな。低音域、中音域、高音域の各帯域に分けてそれぞれ調整出来る。カットのみ、もしくはブースト/カット両方出来る物があるんだけど、ポイントはそこではない。それがどの辺の周波数なのか?が肝心なんです。

 かつての国内メーカーは、その数字の選択に当たってオーディオの概念を参考にしていた節が見受けられる。僕はこれあまり好きではないのだけど、楽器にオーディオのセオリーを当てはめてもそういい事は無い。
 オーディオは基本録音された物を再生するのが仕事。音源はオーケストラから環境音楽まで、さまざまな帯域が使われてる。当然それを再現する機材は、あらゆる帯域を再生出来なければダメ。しかもクセの無いように均一に。
 しかしこれが楽器の再生となると、なんとまあ全く向いてない。いわゆるペタンコな音になる。音抜けと言われる”通る音”や一番目立ってほしい所がフラットに、更にあまり必要無い超低音域が出過ぎると、ホント表情の無い平たい感じになってしまう。
 これはアンプを音作りに使う物として捉えてなかったという事。ギターの音を忠実に再生する物として考えてたんだろうね。


 話しを戻して、今どきのエレキギター用のアンプはだいたい味付けがされていて、それがそのメーカーのカラーとなっている。その音色を丸くしたり鋭くしたり調整するのがトーンコントロールやイコライザーで、各ツマミにどの辺の周波数をイジルかが設定されている。
 ただ、その数字は殆どの場合表記が無いので、実際に音を聴いて確認するしかないが、優れたメーカーは(どことは言わないが)このポイントを実に上手く押さえてる。どの帯域をどういじったらカッコイイ音になるか解ってる。コレ、ヴィジョンをしっかり持ってないと出来ないです。目指すゴールが解ってる。ここがメーカーのプライドにも繋がるんだけど、この部分では欧米には敵わない気がする。あくまで個人の感想ですが。


 この周波数のポイント。アンプではだいたい3つか4つくらいだけど、それをもっとたくさんいじれる様に特化したものがイコライザーと呼ばれる機材。低音から高音までをいくつかの周波数で分けて、それぞれブースト/カット出来るようにした代物。昔はストラトでレスポールの音が出せるとかいい加減な触れ込みもあったけど、ウソでもイメージはしやすい表現だったと思います。実際ストラトの線の細さをある程度は補えるし、ディストーションで倍音が増えた後ではかなり劇的な音作りが出来るのだから、レスポールの音が出なくてもみんな詐欺だとは言わなかった。良い時代だ。

 そのイコライザーにはグラフィックとパラメトリックの2種類があって、違いはポイントになる周波数を予めたくさん決めてグラフのように並べたのがグラフィック。視覚的に解かりやすいのが売り。その数をバンド数と言って、コンパクトエフェクターで6バンドか7バンドくらい。ラックマウントなど業務用機器では31バンドとかもある。
 ポイントはだいたい倍々(1オクターブ)で取るので、6バンドなら100Hzから200、400、800、1600、3200、7バンドで6400Hzが加わるかってトコ。ギター用ではこの帯域で十分。
 だが、問題はイジリたいポイントがそこに無い場合だ。間とかね。特に800Hzから1.6kHzの間にはギターにとってかなり重要なポイントが詰まってる。好みにもよるが、他はともかくココがイジリタイってポイントはほぼこの間にあるといってもいい。


 そんな痒い所に手が届く使い方が出来るのがパラメトリックイコライザー。グラフィックが固定された一つの周波数に対してパラメーター1つ(ブースト/カット)しか無いのに対し、パラメトリックはバンド数こそ少ないが周波数を自分で決めてブーストorカットが出来るというもの。使い方はあらかじめブーストするのかカットするのかを決めて、音を聴きながら周波数を可変させる。ブーストした山やカットした谷の幅(カーブ)を変えられるものもある。これをツマミ一つにしたコンターというコントロールはアンプにもよく装備されてるが、そういう仕組みなのよ。
 周波数をいじれるのはすごく直感的な音作りが出来るので、僕は断然パラメトリック派なんですが、現在コンパクトエフェクターではあまり製品が無さそう。昔はBOSSのPQ-4とかあったけど、今や中古で¥30,000くらいするみたい。オドロキ😱


 で、この話しの最大の山場? ディストーションサウンドに於ける最もイジリたい周波数はどこか?
 僕の経験側では1.2k前後かな。もちろん他の帯域もいじるけどそれは必要に応じて。そうではなくその作りたい音の基本の部分は1.2kHz辺りにある事が多いです。あ、もちろんギンギンのディストーションの話ですが。 

 ではここをどうするか? この1.2kHz。

 これカットするんです。ブーストじゃなくてカット。カーブは狭め過ぎないようにして、レベルを4dBくらいマイナスしてからフリークェンシーを回して心地よい所を探す感じ。いわゆるドンシャリサウンドですね。歪みの肌理が細やかになって扱いやすい音になります。
 ドンシャリってメタル専門サウンドのようですが、それは他の帯域次第。200~400Hz辺りと5k~8kHz(ここはホント好み)辺りをブーストすると結構メタリックになります。


 さて、いかがでしたか? 周波数知ってると結構違うでしょう? 慣れてくるとその音がどんな音なのか表現出来るようになるし、どうしたいのかもイメージしやすくなります。ケーブルの音の違いなんかもイメージ出来るかも。
マルチエフェクターやモデリングものを扱う時にもきっと役立つので、ぜひ活用してください。

それではまた。

# by Rune-guitar | 2024-02-01 00:59 | guitar repair
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 新年早々大きな事故や災害があって、ちょっと心が疲れ気味の方も多くいらっしゃると思います。そういう時は無理をせず、でもがんばっていきましょう。何事もバランス。


 さて、この所なかなか更新が出来てませんでしたが、振り返ってみても僕のブログって内容的には修理ネタあまり無いんですね。これはまあなんというか本業はもちろん修理なんですが、僕自身の基礎の部分は作る事だと思ってます。昔からね。でもそれは”作る”というより”造る”の方が近いのかも。本当は開発とかの仕事に就けたらよかったのかな。

 なので頭の中でいろいろ考えて、ある程度までイメージ出来たら検証に入る。この辺りまでが至福の時ですね。夜中にそんな事をやってるとほとんどアブナイ人ですが、物ってそうやって出来てるんだと思います。
 ウチのオリジナルブースター もそう。どう使うのか。どんな音にするのかなど結構検証しました。いやいや目で見えない物はかなり手強いです。
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※内蔵用オリジナルブースター BB741 スタンダードセット BB741 アドバンストセット 


 さて、そんな音作り。その昔僕も経験ありますが、エレキギター初心者の方にとって音作りってかなり難解ではないですかね? エレキギターはそもそもアンプで音を出すのが当たり前なので、音を出す所までは問題無いとしても各ツマミをどうイジればよいのか? これは難しいですよね。

 多くの場合はサンプルセッティングなどを参考にするのだと思うけど、その音が思ったのと違う場合にいきなり困っちゃう。どのツマミを回せばよいか、説明書(今時は動画なのかな?)とか見てもイマイチよくわからないのは、そのツマミが何をしてるのかが見えないからです。

 それは言い換えると "音が電気信号になっている時の状態" をイメージ出来ないからです。これについて話してみますね。


 エレキギターの音作りで最もコダワリたいのが歪みです。ユガミではなくヒズミ。ディストーションサウンドというエレキギターならではの音。今回はここに絞って進めていきます。

 最近のアンプは割と簡単にディストーションサウンドを出せますが、この効果を得る為の外付け機材であるエフェクターもゴマンとあります。更にその中で細かく分類があって、大きくディストーション、オーバードライブ、ブースター、だいたいこの3つに分けられます。ファズというのもあるのですが、今回はちょっとお休みで。

 それぞれ基本的には大きな違いはなく、音をどのくらい大きくさせるのかみたいなもの。自分の使ってる機材によって、どの程度の働きがちょうどよいのか? そこが一つポイントになります。
 まず音が電気信号に変わる所をイメージしてみましょう。元々音は空気の振動です。それが鼓膜に伝わって音として認識されるんですが、その振動は波として表せるんです。

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 図1を見てください。これは縦軸が振動の大きさ、横軸が時間です。弦が止まっている状態を0として、縦軸は振れ幅、横軸は振れる速さになります。1往復して0に戻る。これを1サイクルとして、1秒間に1サイクルを1ヘルツ(Hz)。これを周波数と呼びます。チューニングの基本になるA=440Hzは1秒間に440サイクルの振動って事ですが、これはまた別の機会に。
 この縦軸を電気の強さに変換したものがシールドケーブルを流れる音声信号で、アンプやエフェクターでいろいろイジる事が出来ます。

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 音作りはこの波をどのように変化させるかな訳ですが、ディストーション等のエフェクターはこの波の形を滑らかなS字からカクカクの波に変えちゃいます。(図2) 
 波の形をそのまま”波形”と呼びますが、左の綺麗な波形を正弦波、右のカクカクの波形を矩形波と呼び、ディストーションやオーバードライブはいずれもこの矩形波を得る為の物。
 すごく大雑把に言うと波形の上と下の部分をカットしてしまうのですが、事の始まりであるアンプの場合、取り分け古いチューブアンプでは、ボリュームを上げ過ぎると処理出来る範囲を超えた時に上と下が再生出来ない。結果矩形波になっちゃったんですね。(図3) それがカッコよかったってのが全ての始まり。身近なのだと拡声器なんか使ってボーカルの声を歪ませたり。アレです。
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 一方エフェクターの場合はその処理出来る範囲をクリッパーという働きをする電子部品によって作ります。多くはダイオードという素子。LEDもダイオードなので実際に使われたりしてます。
 そこに送るシグナルを倍増させる事で歪みの強さをコントロールするのですが、ディストーション、オーバードライブ、ブースターの違いは、それらのどこに特化してるか?みたいに捉えると使い方が見えてきます。


 例えばアンプにかかわらず強い歪みが欲しいのであればディストーション。これはアンプはクリーンで使い、エフェクターのon/offで音色を切り替える場合に最適。歪ませるのが仕事なので、歪が弱いとあまり面白くないものも多い。個人の感想ですが。

 そしてアンプの歪みをサポートするならオーバードライブ。こちらはアンプをある程度歪ませた状態で使い、ギターのボリュームで歪みをコントロールするなど、アンプを主役にした使い方に向いてます。エフェクターのon/offは歪みの幅を広げる感じですかね。アンプのサポート的な働きなので、どんなアンプでもいい訳じゃないのが難しいところ。相性があったりします。

 ギターの音をなるべく変化させずにアンプに送るシグナルを大きくしたい(結果アンプの歪みを強くしたい)ならブースター。これが一番ギターとアンプの音を活かしたエフェクターと言えるけど、そのエフェクターの個性は一番薄い。
 もちろん敢えて若干の味付けをしたブースターもあって、それは目的によって ”トレブルブースター” とか ”ミッドブースター” とかいろいろな呼び方をされますが、用途としては歪みではなくトーンの補正的な意味合いが強い。
 また、"オーバードライブをブースター的に使う" というのもありますが、実際そういう使われ方は多いのでその辺がまた理解をややこしくする。

 ついでに、バッファは波形を一切変える事はせず、伝送時に劣化しにくい強い信号に変えるのが目的。電気的には電圧は変えずに電流量を増やすのがバッファ。
 なんとなくイメージ出来ました? 

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 そうそう、実際に音を作る際にいじるツマミの名前ですが、ディストーション、オーバードライブ、ブースター共に必ずあるのがDRIVE(またはGAIN)とLEVEL(またはOUTPUT)の2つ。DRIVEは元の音をどのくらい増幅するかを決めるツマミ。LEVELは増幅して大きくなった音量を最終的に調整するツマミです。※ツマミと言ってますが、正しくはコントローラーとかパラメーターとかの事です。
 DRIVEを上げるとクリッパーに引っかかる量が増えて、波の潰れ方がキツくなり結果歪みが強くなる。当然音量も多少上がるので、それをLEVELで調整する。こんな流れです。


 まあどれもやってる事は似たようなもんなのですが、その似たような効果を何によって得るか、どの程度の性能にするかの違いですね。僕も専門的な本当の違いはよく分かりませんが、どっちかと言うと名前は音のイメージを伝える意味合いが強いのではと感じます。

 さあ、参考になったかどうか。先述の周波数は、アンプにもついてるトーンコントロールやイコライザーの特色を決めるものになりますが、この辺りはまた別の機会にやりたいと思います。


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 最初に戻ってオリジナルのブースター。試行錯誤して一応BB741という名前で製品は出来たんですが(製品の詳細はコチラ)、これをどうやって試してもらうかが問題でした。オリジナルのギターに搭載する事は決まってたので使い勝手とか音を聞くことは出来るんですが、いざ自分のギターに積んだ時にどうなるのか?

そこで考えたのが…。

 エフェクターにしてしまえ!。まあそれしかないですよね。ギターをお持ちいただければどんな感じになるのか試せます。

 しかしこれが意外に良い感じ。ギター内蔵用の基板だからエフェクターとして製品にするには、基板の固定方法とか問題はあるけど、ギター本体に入れるのと大して違わないとも言える。トラブる事は無いが体裁の話しね。

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 で、その試奏用ペダル。一応名前つけまして、OD741といいます。今のところBB741と内容に違いは無いけど、ゲインの設定はペダル用に変えてもいいかなと思ってます。ミニSWで切り替えでもいい。
 内蔵の場合、役割としてはギター本体のゲインアップがメインなので、ちょっと音を太くするとか前に出すとかあまり歪みは無くてもよいが、ペダルとなるとその辺りの勝手が違ってくる。アンプのドライヴを補ったり、クリーンとドライブの切り替えに使う事もある。接続順もいろいろだろうから、歪の幅が広いのは邪魔にはならないハズ。
 
 実は先日、BB741を内蔵していただいたお客様に1台作りました。僕と嗜好が近い方なので、上手く使ってくれると思います。まだブースターを搭載してない他の愛器のテストにも使えるしね。
ディストーションとオーバードライブとブースター_c0179274_22500941.jpg
 で、このOD741。基盤が小さいので、ミニも作れます。ACアダプターオンリー。昔の回路がベースなので、余計な物が付いてない分ACノイズに注意が必要ですが、こんな感じ。


 ご興味ありましたらお問い合わせくださいませ。メールにて受け付けております。mail@runeguitar.com
内蔵用のBB741はコチラのページを参照ください。
よろしくお願いいたします。

 

# by Rune-guitar | 2024-01-11 22:54 | Curion

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