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Rune guitar

runeguitar.exblog.jp

ギターリペアマンの視点から、仕組みやパーツなどにまつわる話しを綴っています。

 前回歪みの話しの時、周波数について少し触れたけど、この周波数が何にどう関わるのか? 音作りする上でどの程度重要になってくるのか? 今回はそんな話しをしようと思います。
 毎度ブログ書きながら思うんですが、僕みたいな解説ブログではイメージしてもらう事が大事だと。文章なんてそのまま理解する訳じゃなし、へぇ~ってなるのは頭に図が浮かんだ時なので、だからいつも話が長いです。ホント暇な時におススメします。逆に斜め読みする方が時間がもったいないので。

 さあ早速始めましょう。まずは音そのものから。
 人間は鼓膜の振動を音として認識しますね。鼓膜を振動させるのは空気です。もっと言うと空気の揺れです。何かが振動しても空気がないと鼓膜には届かないので、音は聴こえません。
 振動は空気を押したり引いたりして波を起こします。その波に合わせて鼓膜が動き、人間はそれがどんな振動かを感じ取ります。

 その"どんな振動"かを表すものの一つが周波数で、音の高い低いを数字で表す事が出来るんです。周波数が小さいと低い音。大きいと高い音を表します。

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 前回お話ししたサイクルという言葉。波が押して引いて元に戻る一連の動きを指し(図1の左)、1秒間に1サイクルで1Hzという所まで話しましたが、このHz(ヘルツ)が周波数の単位になります。チューニングしたり音を作ったりイメージを伝えたり、覚えておいて損は無い数字なのでメンドクサイけど覚えてみてね。


 人間の耳は聴こえる範囲がだいたい決まってます。可聴範囲と言いますが、概ね20Hzから20kHz。これより下も上も耳では聴こえません。下は体感で認識出来るみたいだけど、上は加齢と共に聴こえ難くなるようで、モスキート効果なんてのが話題になった事もあります。(若い人の方が超高音まで聴こえるのを利用したもの)

 ではギターの音域はその中のどの辺りにいるかと言うと、大雑把に80Hzくらいから1.5kHzくらいかな? これはあくまで音程(音の名前)での話しなので、耳に聴こえる音の周波数とは異なります。実際の音には倍音という音の質感に関わるもっと上の周波数が加わってるので、歪んだエレキギターの音なんかでは聴感上1.5kHzはミドル~ハイミッドの帯域。ディストーションの効いた高音域は10KHz以上にもなる。音の名前はその音の一番低い周波数を基音として音名で表してるんです。

 なんか楽典ぽくなってきたな。ついでに今時のチューニング事情はどうでしょう? みんなほぼほぼチューナーだろうから、A=440Hzという言葉に馴染みがあるかどうか? 
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昔は音叉が当たり前だったので、音叉の音と5弦5フレットのハーモニクスを合わせるやり方が主流でした。その440HzのAの音がギターでは1弦5フレットに当たります。ピアノで言うと真ん中辺りのA。低い方から4番目のラの音です。(ギターの楽譜は1オクターブ高く表記してるのでそこは注意)
 ピアノに当てはめるとギターの音域って真ん中より低い方なんですよね。でも歪んだ音なんかはもっと高く聴こえたりしますね。それが倍音てヤツです。ハーモニクスで出せる音が最も基音に近い倍音で、普通に弾いてもこの成分は含まれてるんです。更に倍音の倍音というように一つの音でも様々な倍音を含んでいて、ディストーションサウンドはこの元々含まれてる倍音を増幅する効果があるので、基音以上の高い周波数がたくさん聴こえるようになります。

 更にもう少し予備知識を。 基音の周波数が倍になると音程は1オクターブ上がり、半分になると1オクターブ下がります。5フレットのハーモニクスは開放の2オクターブ上が鳴るので、5弦5フレットのハーモニクスが440Hzなら開放は110Hz。同じく1弦5フレットが440Hzなら、その12フレット上の17フレットは880Hzになる計算ですね。

 さあ、なんとなく見えてきたでしょうか。ようやく前回からの続きっぽくなってきたかな?
 ではいざ音作り。まずはアンプのトーンコントロールを見てみよう。
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 価格帯や仕様によって様々だとは思うけど、だいたいBass Middle Treble の3コントロールが多いかな。低音域、中音域、高音域の各帯域に分けてそれぞれ調整出来る。カットのみ、もしくはブースト/カット両方出来る物があるんだけど、ポイントはそこではない。それがどの辺の周波数なのか?が肝心なんです。

 かつての国内メーカーは、その数字の選択に当たってオーディオの概念を参考にしていた節が見受けられる。僕はこれあまり好きではないのだけど、楽器にオーディオのセオリーを当てはめてもそういい事は無い。
 オーディオは基本録音された物を再生するのが仕事。音源はオーケストラから環境音楽まで、さまざまな帯域が使われてる。当然それを再現する機材は、あらゆる帯域を再生出来なければダメ。しかもクセの無いように均一に。
 しかしこれが楽器の再生となると、なんとまあ全く向いてない。いわゆるペタンコな音になる。音抜けと言われる”通る音”や一番目立ってほしい所がフラットに、更にあまり必要無い超低音域が出過ぎると、ホント表情の無い平たい感じになってしまう。
 これはアンプを音作りに使う物として捉えてなかったという事。ギターの音を忠実に再生する物として考えてたんだろうね。


 話しを戻して、今どきのエレキギター用のアンプはだいたい味付けがされていて、それがそのメーカーのカラーとなっている。その音色を丸くしたり鋭くしたり調整するのがトーンコントロールやイコライザーで、各ツマミにどの辺の周波数をイジルかが設定されている。
 ただ、その数字は殆どの場合表記が無いので、実際に音を聴いて確認するしかないが、優れたメーカーは(どことは言わないが)このポイントを実に上手く押さえてる。どの帯域をどういじったらカッコイイ音になるか解ってる。コレ、ヴィジョンをしっかり持ってないと出来ないです。目指すゴールが解ってる。ここがメーカーのプライドにも繋がるんだけど、この部分では欧米には敵わない気がする。あくまで個人の感想ですが。


 この周波数のポイント。アンプではだいたい3つか4つくらいだけど、それをもっとたくさんいじれる様に特化したものがイコライザーと呼ばれる機材。低音から高音までをいくつかの周波数で分けて、それぞれブースト/カット出来るようにした代物。昔はストラトでレスポールの音が出せるとかいい加減な触れ込みもあったけど、ウソでもイメージはしやすい表現だったと思います。実際ストラトの線の細さをある程度は補えるし、ディストーションで倍音が増えた後ではかなり劇的な音作りが出来るのだから、レスポールの音が出なくてもみんな詐欺だとは言わなかった。良い時代だ。

 そのイコライザーにはグラフィックとパラメトリックの2種類があって、違いはポイントになる周波数を予めたくさん決めてグラフのように並べたのがグラフィック。視覚的に解かりやすいのが売り。その数をバンド数と言って、コンパクトエフェクターで6バンドか7バンドくらい。ラックマウントなど業務用機器では31バンドとかもある。
 ポイントはだいたい倍々(1オクターブ)で取るので、6バンドなら100Hzから200、400、800、1600、3200、7バンドで6400Hzが加わるかってトコ。ギター用ではこの帯域で十分。
 だが、問題はイジリたいポイントがそこに無い場合だ。間とかね。特に800Hzから1.6kHzの間にはギターにとってかなり重要なポイントが詰まってる。好みにもよるが、他はともかくココがイジリタイってポイントはほぼこの間にあるといってもいい。


 そんな痒い所に手が届く使い方が出来るのがパラメトリックイコライザー。グラフィックが固定された一つの周波数に対してパラメーター1つ(ブースト/カット)しか無いのに対し、パラメトリックはバンド数こそ少ないが周波数を自分で決めてブーストorカットが出来るというもの。使い方はあらかじめブーストするのかカットするのかを決めて、音を聴きながら周波数を可変させる。ブーストした山やカットした谷の幅(カーブ)を変えられるものもある。これをツマミ一つにしたコンターというコントロールはアンプにもよく装備されてるが、そういう仕組みなのよ。
 周波数をいじれるのはすごく直感的な音作りが出来るので、僕は断然パラメトリック派なんですが、現在コンパクトエフェクターではあまり製品が無さそう。昔はBOSSのPQ-4とかあったけど、今や中古で¥30,000くらいするみたい。オドロキ😱


 で、この話しの最大の山場? ディストーションサウンドに於ける最もイジリたい周波数はどこか?
 僕の経験側では1.2k前後かな。もちろん他の帯域もいじるけどそれは必要に応じて。そうではなくその作りたい音の基本の部分は1.2kHz辺りにある事が多いです。あ、もちろんギンギンのディストーションの話ですが。 

 ではここをどうするか? この1.2kHz。

 これカットするんです。ブーストじゃなくてカット。カーブは狭め過ぎないようにして、レベルを4dBくらいマイナスしてからフリークェンシーを回して心地よい所を探す感じ。いわゆるドンシャリサウンドですね。歪みの肌理が細やかになって扱いやすい音になります。
 ドンシャリってメタル専門サウンドのようですが、それは他の帯域次第。200~400Hz辺りと5k~8kHz(ここはホント好み)辺りをブーストすると結構メタリックになります。


 さて、いかがでしたか? 周波数知ってると結構違うでしょう? 慣れてくるとその音がどんな音なのか表現出来るようになるし、どうしたいのかもイメージしやすくなります。ケーブルの音の違いなんかもイメージ出来るかも。
マルチエフェクターやモデリングものを扱う時にもきっと役立つので、ぜひ活用してください。

それではまた。

# by Rune-guitar | 2024-02-01 00:59 | guitar repair
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 新年早々大きな事故や災害があって、ちょっと心が疲れ気味の方も多くいらっしゃると思います。そういう時は無理をせず、でもがんばっていきましょう。何事もバランス。


 さて、この所なかなか更新が出来てませんでしたが、振り返ってみても僕のブログって内容的には修理ネタあまり無いんですね。これはまあなんというか本業はもちろん修理なんですが、僕自身の基礎の部分は作る事だと思ってます。昔からね。でもそれは”作る”というより”造る”の方が近いのかも。本当は開発とかの仕事に就けたらよかったのかな。

 なので頭の中でいろいろ考えて、ある程度までイメージ出来たら検証に入る。この辺りまでが至福の時ですね。夜中にそんな事をやってるとほとんどアブナイ人ですが、物ってそうやって出来てるんだと思います。
 ウチのオリジナルブースター もそう。どう使うのか。どんな音にするのかなど結構検証しました。いやいや目で見えない物はかなり手強いです。
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※内蔵用オリジナルブースター BB741 スタンダードセット BB741 アドバンストセット 


 さて、そんな音作り。その昔僕も経験ありますが、エレキギター初心者の方にとって音作りってかなり難解ではないですかね? エレキギターはそもそもアンプで音を出すのが当たり前なので、音を出す所までは問題無いとしても各ツマミをどうイジればよいのか? これは難しいですよね。

 多くの場合はサンプルセッティングなどを参考にするのだと思うけど、その音が思ったのと違う場合にいきなり困っちゃう。どのツマミを回せばよいか、説明書(今時は動画なのかな?)とか見てもイマイチよくわからないのは、そのツマミが何をしてるのかが見えないからです。

 それは言い換えると "音が電気信号になっている時の状態" をイメージ出来ないからです。これについて話してみますね。


 エレキギターの音作りで最もコダワリたいのが歪みです。ユガミではなくヒズミ。ディストーションサウンドというエレキギターならではの音。今回はここに絞って進めていきます。

 最近のアンプは割と簡単にディストーションサウンドを出せますが、この効果を得る為の外付け機材であるエフェクターもゴマンとあります。更にその中で細かく分類があって、大きくディストーション、オーバードライブ、ブースター、だいたいこの3つに分けられます。ファズというのもあるのですが、今回はちょっとお休みで。

 それぞれ基本的には大きな違いはなく、音をどのくらい大きくさせるのかみたいなもの。自分の使ってる機材によって、どの程度の働きがちょうどよいのか? そこが一つポイントになります。
 まず音が電気信号に変わる所をイメージしてみましょう。元々音は空気の振動です。それが鼓膜に伝わって音として認識されるんですが、その振動は波として表せるんです。

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 図1を見てください。これは縦軸が振動の大きさ、横軸が時間です。弦が止まっている状態を0として、縦軸は振れ幅、横軸は振れる速さになります。1往復して0に戻る。これを1サイクルとして、1秒間に1サイクルを1ヘルツ(Hz)。これを周波数と呼びます。チューニングの基本になるA=440Hzは1秒間に440サイクルの振動って事ですが、これはまた別の機会に。
 この縦軸を電気の強さに変換したものがシールドケーブルを流れる音声信号で、アンプやエフェクターでいろいろイジる事が出来ます。

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 音作りはこの波をどのように変化させるかな訳ですが、ディストーション等のエフェクターはこの波の形を滑らかなS字からカクカクの波に変えちゃいます。(図2) 
 波の形をそのまま”波形”と呼びますが、左の綺麗な波形を正弦波、右のカクカクの波形を矩形波と呼び、ディストーションやオーバードライブはいずれもこの矩形波を得る為の物。
 すごく大雑把に言うと波形の上と下の部分をカットしてしまうのですが、事の始まりであるアンプの場合、取り分け古いチューブアンプでは、ボリュームを上げ過ぎると処理出来る範囲を超えた時に上と下が再生出来ない。結果矩形波になっちゃったんですね。(図3) それがカッコよかったってのが全ての始まり。身近なのだと拡声器なんか使ってボーカルの声を歪ませたり。アレです。
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 一方エフェクターの場合はその処理出来る範囲をクリッパーという働きをする電子部品によって作ります。多くはダイオードという素子。LEDもダイオードなので実際に使われたりしてます。
 そこに送るシグナルを倍増させる事で歪みの強さをコントロールするのですが、ディストーション、オーバードライブ、ブースターの違いは、それらのどこに特化してるか?みたいに捉えると使い方が見えてきます。


 例えばアンプにかかわらず強い歪みが欲しいのであればディストーション。これはアンプはクリーンで使い、エフェクターのon/offで音色を切り替える場合に最適。歪ませるのが仕事なので、歪が弱いとあまり面白くないものも多い。個人の感想ですが。

 そしてアンプの歪みをサポートするならオーバードライブ。こちらはアンプをある程度歪ませた状態で使い、ギターのボリュームで歪みをコントロールするなど、アンプを主役にした使い方に向いてます。エフェクターのon/offは歪みの幅を広げる感じですかね。アンプのサポート的な働きなので、どんなアンプでもいい訳じゃないのが難しいところ。相性があったりします。

 ギターの音をなるべく変化させずにアンプに送るシグナルを大きくしたい(結果アンプの歪みを強くしたい)ならブースター。これが一番ギターとアンプの音を活かしたエフェクターと言えるけど、そのエフェクターの個性は一番薄い。
 もちろん敢えて若干の味付けをしたブースターもあって、それは目的によって ”トレブルブースター” とか ”ミッドブースター” とかいろいろな呼び方をされますが、用途としては歪みではなくトーンの補正的な意味合いが強い。
 また、"オーバードライブをブースター的に使う" というのもありますが、実際そういう使われ方は多いのでその辺がまた理解をややこしくする。

 ついでに、バッファは波形を一切変える事はせず、伝送時に劣化しにくい強い信号に変えるのが目的。電気的には電圧は変えずに電流量を増やすのがバッファ。
 なんとなくイメージ出来ました? 

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 そうそう、実際に音を作る際にいじるツマミの名前ですが、ディストーション、オーバードライブ、ブースター共に必ずあるのがDRIVE(またはGAIN)とLEVEL(またはOUTPUT)の2つ。DRIVEは元の音をどのくらい増幅するかを決めるツマミ。LEVELは増幅して大きくなった音量を最終的に調整するツマミです。※ツマミと言ってますが、正しくはコントローラーとかパラメーターとかの事です。
 DRIVEを上げるとクリッパーに引っかかる量が増えて、波の潰れ方がキツくなり結果歪みが強くなる。当然音量も多少上がるので、それをLEVELで調整する。こんな流れです。


 まあどれもやってる事は似たようなもんなのですが、その似たような効果を何によって得るか、どの程度の性能にするかの違いですね。僕も専門的な本当の違いはよく分かりませんが、どっちかと言うと名前は音のイメージを伝える意味合いが強いのではと感じます。

 さあ、参考になったかどうか。先述の周波数は、アンプにもついてるトーンコントロールやイコライザーの特色を決めるものになりますが、この辺りはまた別の機会にやりたいと思います。


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 最初に戻ってオリジナルのブースター。試行錯誤して一応BB741という名前で製品は出来たんですが(製品の詳細はコチラ)、これをどうやって試してもらうかが問題でした。オリジナルのギターに搭載する事は決まってたので使い勝手とか音を聞くことは出来るんですが、いざ自分のギターに積んだ時にどうなるのか?

そこで考えたのが…。

 エフェクターにしてしまえ!。まあそれしかないですよね。ギターをお持ちいただければどんな感じになるのか試せます。

 しかしこれが意外に良い感じ。ギター内蔵用の基板だからエフェクターとして製品にするには、基板の固定方法とか問題はあるけど、ギター本体に入れるのと大して違わないとも言える。トラブる事は無いが体裁の話しね。

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 で、その試奏用ペダル。一応名前つけまして、OD741といいます。今のところBB741と内容に違いは無いけど、ゲインの設定はペダル用に変えてもいいかなと思ってます。ミニSWで切り替えでもいい。
 内蔵の場合、役割としてはギター本体のゲインアップがメインなので、ちょっと音を太くするとか前に出すとかあまり歪みは無くてもよいが、ペダルとなるとその辺りの勝手が違ってくる。アンプのドライヴを補ったり、クリーンとドライブの切り替えに使う事もある。接続順もいろいろだろうから、歪の幅が広いのは邪魔にはならないハズ。
 
 実は先日、BB741を内蔵していただいたお客様に1台作りました。僕と嗜好が近い方なので、上手く使ってくれると思います。まだブースターを搭載してない他の愛器のテストにも使えるしね。
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 で、このOD741。基盤が小さいので、ミニも作れます。ACアダプターオンリー。昔の回路がベースなので、余計な物が付いてない分ACノイズに注意が必要ですが、こんな感じ。


 ご興味ありましたらお問い合わせくださいませ。メールにて受け付けております。mail@runeguitar.com
内蔵用のBB741はコチラのページを参照ください。
よろしくお願いいたします。

 

# by Rune-guitar | 2024-01-11 22:54 | Curion
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 前回のピック特集はその後も幾つかモデルを追加してまして、なんだかんだかなりの種類を計測しました。まあ今までサイズを測るというのはやった事無かったし、改めていろんなのを試してみて、数字や画像で比較すると自分の好みはこんなハッキリ決まってたのかと再認識。すごく意外。
 で、自分にとって何がポイントになっているのかちょっと整理してみると、厚みと長さと先端角度の3点が最重要で、素材と形状(外周のライン)がそれに続く。後はオマケというか、ヴィジュアル面で何か一捻りあれば良いものが出来るんじゃないかと。

 という事で、今回は来年(2024年)辺りに発売を予定しているオリジナルピックについて話してみたいと思います。もちろん皆さんにもオススメ出来る品として考えてはいるけれど、全ての人に気に入ってもらえる訳ないのも分かってます。
 ですのであくまで物の考え方として、自分の理想のピックを探すヒントにしていただければと思います。特にギター小僧を経てきた方や、今まさにギター小僧真っ只中の方に届いてくれたら嬉しいです。

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 まず厚みはなんだかんだ安定の1mmなんですが、本来素材の硬さとも絡む厚みは今主流となっているエンプラ(高性能プラスティック)系の素材に於いては、同じ厚みなら硬さにはあまり差が無いと判断しました。サイズも小さいし。逆に着色用の添加剤で微妙に硬さが異なる事もあるそうなので、1.1mm程度まで幅があってもよいのかも。
 要は薄さで弦に負けるのはイヤ。厚過ぎてアタックがポコっとなるのもイヤ。この2点がクリア出来れば必ずしも1.0でなくても良いけど、どうも1.1±0.1くらいがベストらしいという見立てです。

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 次に長さ。これは手の大きさなど人それぞれ弾き方の違いが大きいので、あくまで僕の場合ですが、縦27mmが総合的にベストみたい。単音弾き6割、コード弾き4割くらいのプレイヤーにはちょうど良いと思う(あくまでイメージね)。
 これは単音弾きの時とコード弾きの時などでピックを持つ深さが変わるから。画像でも1mmくらい軽く違うのが判るけど、実際はもっと手を浮かせるとかいろいろな弾き方(持ち方)をするので、小さ過ぎるとこの幅が得られない。長過ぎると邪魔。そんなジレンマが一番少なそうな長さを目指してみました。

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 上の画像は先端角度の比較。ダンロップのJAZZ IIIと重ねてみました。先端が少しズレてるのは長さの違いではなく線が見えるようにしただけです。
 角度というのは少し語弊があるかも。先端のラインはカーブしてるから、角度と言うより開き具合の方が近いのかもしれない。
 昔、雑誌のインタビュー記事でポールギルバート氏が先端の角度を90度に削ってるなんてのを読んだ事があるけど、この90度はいわゆるJAZZ型より鈍角なのでは?。曲線なのでJAZZ型も部分的には90度より広いが、たぶん弦に当てる深さとの兼ね合いでJAZZ型だと食い付き過ぎに感じる事は確かにある。アタック音をしっかり得る為にも先端は尖ってて欲しいが、食い付きがキツくて弦から離れるのに余計な力やスピードが要るのもムダ。そんな所から考えられた先端形状だと思う。
 画像のピックはJAZZ IIIよりも広い角度の物を選んだのだけど、結局IbanezK-LICKSの2メーカーからのみ。ホントこの形少ない。左下MASTER8は開きの狭いモデル代表として。もちろんこの形は人気モデルで、シグネイチャーモデルもたくさんあるので、コチラもチェックしてください。
 僕みたいに短くは持たない、長めに持って浅く当てる弾き方には絶妙に弾きやすい形かも。この場合はこの先端が正解なんだと思う。



 次に大事なのは素材と形状。素材については前回、前々回と触れてきたけど、最終候補に残ったのは左からウルテム、ポリカーボネイト、ポリアセタールの3種類。厚みに対する硬さと滑らかさが割と似ていて、他のセルロイドやナイロンなどよりも撥音が良い。まあ好みなんだけど。
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 それぞれ言うとポリアセタールは全てに於いてバランスが良い。デルリン、ジュラコンをベースに、トーテックスなど各メーカー多少手を加えてるらしいけど、ダンロップではほぼ主力の素材だし、他メーカーでも今やセルロイドよりもメインなんじゃないかな。
 サラっとした表面、低い摩擦係数。適度に食い付き適度に滑る感じは個人的にすごく好き。
長年付き添ったTORTEX JAZZ IIIはコレ。
難点はピンポイントで特筆する所が無いコトかな。普通にイイと言うのは褒め言葉なのかみたいなね。

 ポリカーボネイトはポリアセタールよりもパキッとした硬さを感じる。しなやかさではポリアセタールよりもやや劣るのかもしれないが、この明るいトーンはクリーントーンのシャリっと感によく似合う。この魅力はちょっと薄い方が強調されるのだけど、1.0でもそのニオイは残ってる。まあクセと捉えるか個性と捉えるか、いずれにせよそういうものを持ってる素材には違いない。
 でもなんだかんだ言ってクリアカラーが使えるのが一番魅力。透明度が高いんです。


 そしてウルテム。今一番人気の素材で爪に近いトーンが得られるらしい。が、あまりそこはわからなかった。ジャンルや弾き方によるのだろうね。
 音のイメージはポリカーボネイト同様に明るくキラっとしてるがそこに品がある感じ。時代に合ったトーンだと思う。硬さもかなりあるみたいで、弦離れ良くピッキングはスムーズ。
 良い所ばかり目に付くが、強いて言うならその出木杉君なのが仇なのかも。良すぎ。ケチの一つくらい欲しい。


 この3種類の中でホントの最終候補は今の所ポリカーボネイト。少しだけナイロンをブレンドしてしなやかさをプラス。大阪発のピックメーカー K-LICKSさんのSCALE CHIPで使用している材を使わせてもらおうと思ってます。
↓コレね。
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リサイズしてチェックしたのでこの形は販売されてないけど、K-LICKSさんのサイトには他にも違うデザインがあります。プレスで抜くのと違い、射出成形という型に流し込んで作る方法だからエンボスとかテーパーとか3Dの仕様が豊富。素材もかなり幅広い。あとサイズがちゃんと明記されてるのはスバラシイ。


 デザインの要、形状はダンロップJAZZ IIIの先端を少し広げて一回り大きく、長さを27mmにして、エラを少し丸めて、テーパー無しのフラット1mm厚。グリップ部に何かしらのエンボスを入れてツヤ有りの表面になる予定。ラージJAZZよりは小さいけど、持ち方を変える余地を残したサイズってところ。
 ティアドロップの様に肩が怒ってないのも長さの割に小さく感じる工夫。意外とこの条件クリアしてるのは無いのよ。画像は外周をカットしたものをティアドロップと重ねて比較したもの。
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 さて、最後に一捻り。ヴィジュアル面ではクリアカラーでキレイな色が得られればと企んでますが、まだ未定です。赤なのか青なのか、濃いのか薄いのか、基本色なのか混合色なのか。まだ全然これからなんですが、ちょっとワクワクしてます。
 あともうひとネタ取り入れようと考えてますが、それはまたもう少し形になってから。 たぶん今までに無い、画期的かどうかも怪しい変なネタになるハズです。


それでは3回に渡ったピック話しは
ひとまず完。

それではまた。



# by Rune-guitar | 2023-11-25 00:51 | guitar repair

by Runeguitar