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Rune guitar

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ギターリペアと日々のコト・・・

 本業は楽器(主にギター、ベース)の修理ですが、こんな物もやってます。オリジナルのギター内蔵ブースター。BB741といいます。
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 70年代後半辺りから一世を風靡した、超有名ペダルに使われていたオペアンプLM741を使用。現在では4558などに取って代わられた感がありますが、パーツとしてはまだまだ現役。普通に買えるし104.png
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 このLM741を使った回路、なんというか高性能ではないけど、必要十分且つ音が痩せないという楽器用機材として失くしてはいけない所をちゃんと持っている、そんなサウンドですね。日本ではオーディオと楽器が同じ枠に入りがちですが、本質は全く違います。

 オーディオは基本録音されたものを再現するのが仕事なので、レンジを広くカバーします。低音から高音まで広く均一に。
 一方楽器用の機材はその楽器専用が多いので、レンジは狭くていいんです。いやむしろ広くしたらダメなんですね。なんだか立体感の無い音になってしまう。

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 あ、また脱線しちゃいましたね。
話を戻して、そのBB741を搭載していただきましたので、その時の話しを。

 BB741の回路はとてもシンプルで、調整はドライブとレベルのみ。ドライブ用のポットと、On/Off用SW。そしてオーナーさま独自のアイデアによる特種サーキット用のミニSWを追加する為、新たにキャビティーを増設。バッテリーもそこに収納します。

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 基板は元々のコントロールキャビティーに配置します。ウチのオリジナルギターがテレキャスと同じ小さなキャビティーなので、ボリュームポットと同じ幅にこだわってかなり小さくしてあります。これはほとんどのギターに入る筈。
 バッテリーは交換の手間を考えると、別にした方がよいのですが、更にボックス用のキャビティーを増やすのもなんなので、今回は別の手を使います。

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 なんだかんだ全部入ると結構混み合いますね。このギターはHSHの配列なんですが、ハムのコイルタップがちゃんとしたシングルのように使えるピックアップなので、3シングルとしても使えるように5wayレバースイッチと、2ハムとして使う為の3wayミニトグルスイッチの2通りの配線を切り替えで実現させます。
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 1ボリュームとレバースイッチ&ミニトグルスイッチ。下にあるのがそのワイアリング切り替えとブースターのOn/Off。そしてドライブのコントロールというレイアウト。出来る事の割に意外とシンプル。

 ブースターはなるべく元の音をそのままゲインアップさせるようになっているので、ドライブ0ではOn/Offの違いが判らないです。つまりOnのままドライブコントロールだけで操作してもよいし、ドライブ固定でミニSWでOn/Offでもよいです。内部にアウトプットレベルがあるので、ちょい上げ目でソロの時にドンとやっても良いですよ。

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 願わくば、大型のチューブアンプと一緒に音作りしていただくと理想的。クリーン、クランチ、リードまでほぼ手元でいけます。
 このギターのように元々守備範囲が広いと、音のバリエーションは更に豊富に。足元で操作するのと違ってステージのどこにいてもゲインをいじれるしね。


 こういう何か目的をもって回路を工夫する作業はまるでパズルの様。皆さんも何かやりたい配線があったらパズルを楽しんでください。

とりあえず、ではまた。

# by Rune-guitar | 2023-06-01 23:32 | guitar repair
 ようやくカーブについての話しになります。
ボリュームポットの構造は前回のでだいたいおわかりいただけたと思いますが、仕組みは解ってもカーブは見ても何か違いが見える訳でもないので、動画を撮ってみました。
外部リンクになりますが、見てみて下さい。
 こちらでは静止画を挙げておきます。
ボリュームポット その3_c0179274_02425742.jpg
 前回でも使ったポットの基板部分です。テスターのマイナス側を1番端子に繋いで、プラス側を直接抵抗部分に当ててみましょう。
まずは3番寄りに当てて、全体の抵抗値を示します。これは500kΩのポットですね。カーブはAカーブ。

 ここでカーブの種類について軽く触れておきますね。
 カーブとはポットを回した時に抵抗値をどのように変化させるか、用途に応じて使いやすく設定したものです。
 3種類のカーブがあって、それぞれAカーブ(オーディオテーパー)、Bカーブ(リニアテーパー)、Cカーブ(リバースオーディオテーパー)と呼んでます。どこかしらに必ず抵抗値とカーブの表記があるので、画像参照してください。

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 Aカーブは音量調整用として、ノブを回した際の電圧の変化を、耳で聴いた時に自然な音量変化になるようアレンジされたもの。

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 Bカーブは電子回路の中で、回した分だけ電圧が均等に可変するようになってます。
パラメーターの調整用として使われる事が多いですね。
ボリュームポット その3_c0179274_03174509.jpg
 CカーブはAカーブの逆の働きをするようになっていて、わかりやすいのは左利き用ギターのボリューム。動きが反対になるので、Aカーブをそのまま逆配線したのでは音量変化が極端になってしまうんですね。
 あとはエフェクターのゲイン調整なんかに使われたりしますが、需要が少ないのであまり売ってないです。

 では具体的に何が違うのか、再び分解した基板を見てみましょう。
ボリュームポット その3_c0179274_03230362.jpg
まずボリューム0の状態。1番と2番が短絡して抵抗値は0。
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続いて半分くらいまでいくと抵抗値が少し増えてだいたい40kΩくらい。
 ノブの目盛りでいうと5ですが、数値で見ると半分の250kにはほど遠いです。
これがアレンジされた部分ですね。回した分だけ増えるBカーブとの違いです。Bカーブはここで250kになるように出来てます。
ボリュームポット その3_c0179274_03310460.jpg
 じゃAカーブでの250kはどこか?
ここです。ノブでいうともう7か8くらい。ここで半分。

 これを各カーブ毎にグラフにしたものがネットにたくさんあるので、興味ある方は探してみてください。Bカーブは判るけどAとCはどっちか解る人にしか解らない描き方なので、まあ覚える必要もないし何となくでOKです。

 結論としてはギターに使うカーブはほぼAカーブ一択です。間違ってBを買わないようにねって事です。Bもボリュームには使えなくないけど、立ち上がりが少し急になるので早く回すといきなり音量が上がった感じになります。メーカーによってはボリューム奏法がやりやすいなどのメリットがありますが、これは使ってみて判断かな。
 また、個人的にはトーンにBは無いかな。変化の仕方がボリュームよりも更に極端になります。有効幅が狭いというか、0か10かみたいな掛かりになるので、トーンにはAカーブ推奨です。

 さて、ようやくというか最後はちょっと駆け足だったけど、ボリュームポットってこんなヤツというのが伝わればよいなと思います。
 回路を追う時は、3番が入口で2番が出口。これが基本で、ジャズベースやグレッチなど2つのピックアップを2つのボリュームでブレンドして使う事をメインとしてる場合は逆になる場合もあります。1番はいずれの場合もグランドです。
 
 次回はまだ何も考えてませんが、何かリクエストがあればお寄せください。出来るものは取り上げてみたいと思っております。

それではまた。

# by Rune-guitar | 2023-05-27 02:37 | guitar repair
 前回はポット交換の際に気をつけるポイントとして、シャフトのネジ部の径、シャフトの径と形状についての話しをしましたが、今回は内部の話しをしようかと思います。
 ギターの配線自体はとても簡単なものだけど、信号の流れを追う時にパーツの構造がわかってないと躓いてしまうので、まずは構造などから。

ボリュームポット その2_c0179274_01041839.jpg
 ボリュームポット(可変抵抗器)の記号はこんな風に描きます。番号は各端子に割り当てられていて、1番と3番の間を2番が行ったり来たりする事で仕事をします。間のギザギザが信号を流れにくくする抵抗という部分。これは後で説明しますね。

ボリュームポット その2_c0179274_01045868.jpg
 図はピックアップからのシグナルが3番に入って、2番からジャックへ流れていく一般的な使い方。1番はアースに繋げておいて、1番2番が繋がると音が出なくなる仕組み。つまりボリューム0。3番と2番が繋がればピックアップからのシグナルが全てジャックに流れて音が出ます。これが10の状態。
ボリュームポット その2_c0179274_01053791.jpg


 では実際の部品を見てみよう。物によってはこんな感じにバラす事が可能。
この左2つのパーツが先の回路図の実際の姿。黒い部分がカーボンを塗った抵抗で、このレールの上をスライダーが滑る訳だ。
ボリュームポット その2_c0179274_01340954.jpg
 スライダーは内側と外側に接点があって、内側の接点は2番端子から出ているリング状の部分と接してます。外側の接点は黒い抵抗部分と接していて、その位置が1〜2番間と2〜3番間の抵抗値を分配している感じ。
ボリュームポット その2_c0179274_01350977.jpg
ボリュームポット その2_c0179274_01352403.jpg
ボリュームポット その2_c0179274_01085281.jpg
ナントカえもんみたいになってしまったが、先の記号だとこういう事。
 因みにトーンは別にトーン用のポットがある訳ではなく、大抵ボリュームと同じ物を使う。要は繋ぎ方の違いね。

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 さてそれではいよいよ本題、抵抗値とカーブについて。
 まず抵抗とは何ぞや? よく基板にくっついてる落花生みたいなマトリョーシカみたいなヤツ。それが抵抗。はい、コレです。
ボリュームポット その2_c0179274_19095442.jpg

 これは固定抵抗というヤツ。電気の流れるラインに組み込んで電圧を分配したり、制限する役目のもので、組み込んだら値をイジる事はないので固定抵抗ね。
 で、抵抗値とはその電気の流れにくさを表す数字で、大きいほど流れにくい。フィルターの目の細かさなどをイメージするとわかりやすいかも。単位はΩ(オーム)。
 リード線などにも僅かながら抵抗はあるので完全に0とはならないが、無視してよいレベルという事で0としてる。
 で、そのリード線と同様にピックアップのコイルにも抵抗値があるが、こちらは塵も積もればナンチャラで、何千ターンと巻き付けられてるコイルの抵抗値はキロ単位に。だいたいシングルコイルで6〜7kΩ、パワーのあるハムバッカーでは15kΩくらいのもある。

 そこでよく耳にするのは、シングルコイル用のポットは250kΩでハムバッカー用は500kΩを使うという呪文。これは電気的に正解の数字という訳ではなく、単にフェンダーがストラトに使っていた数値が250kで、ギブソンが使っていた数値が500k(昔は300k)てだけなんじゃないかな? 

 正直なところ、この呪文はかなり安易だと思う。理屈はしらんがとりあえずこれだけ覚えとけばOK、みたいな感じであまり好きではないです。
 実際、8kくらいならシングルコイルもハムバッカーも存在するので、それをシングルだから250kとかハムバッカーだから500kとするのはちょっとね。間違いはないんだけどね。

 ただそれ以外にも選択の方法がある訳で、例えば抵抗値が大きいとハイが残ってゲインも多少稼げるが、反面ノイズが目立ちやすいデメリットがある。逆に小さいとややおとなしめで落ち着いたトーンになり、ノイズも抑え気味になるとか。楽器店時代の大先輩はこれを "感度のようなもんと思って" と教えてくれたが、すごくイメージしやすい表現だと思う。
 未だにピックアップ交換の時、ポットどうしようか迷う事あります。シングルからハムに変える時に、元のピックアップが8kで250kのポットが着いてるところを10kくらいの物に変える場合とかね。

 そう、あと1つ2つ違う値のポットがあればよいなと思う。380kとかあったら使ってみたいな。

 因みに10%くらいの製品ムラは普通にあるので、実測すると思わぬ数値に遭遇する事はあります。


 また今回も長くなってきたので、カーブについてはまた次回に。特種なポットなども紹介してみようか。

それではまた。
 

# by Rune-guitar | 2023-05-16 01:30 | guitar repair
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 前回のレバースイッチに続いて、今回はボリュームポットの話しを少々。

 ポット。この呼び名はよく "ポッド" と間違われる事が多いが、ポテンショメーター(potentiometer)の略なので、ポッドではなくポットが正解。
日本語では可変抵抗器と呼ばれるけど、抵抗とは電気を流す量を制限するもので、その値が変えられる事から可変抵抗な訳です。まあ具体的な構造は次回やるとして、今回はどんな種類があるのかを紹介してみましょう。
 皆さんが迷うのはおそらく交換の際にどれを買えばよいかだと思うので、メーカーやサイズ、抵抗値などの説明をしていこう。

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 ポットを選ぶのに必要な情報は、各部のサイズと形状および抵抗値。サイズはケースの大きさもあるけど、これは24パイか16パイの2つしか無い。むしろ取り付ける際に注意が必要なのはネジ部やシャフトの方だったり。
 よく耳にするインチサイズ、ミリサイズ。実際のところこれが一番厄介なのではないかと思う。

 なぜこれが厄介かと言えば、実際には誤差とかそういうレベルではなくそもそも別の物と言っていいくらい違うものを、インチとかミリとかなんだか見ても判らなそうな微妙に違うような言い方するから迷うのだ。

 インチとはアメリカで使われている単位で、1インチは約25.4mm。メーカーで言うと有名なのはCTSやBOURNSなど。この2社はどちらもほぼ同じサイズなので、ひっくるめてインチサイズと呼んでいる。本来は分数での表記になるが、覚えにくいのでここではなるべくミリ表記する。
 一方ミリは国産メーカーやアメリカ以外のメーカーで使われてる単位だが、パーツの知名度やグレード的にアメリカ以外のメーカーでもポットにはCTSやBOURNSを使ってたりするので、ギターのブランドでは判別出来ないと思ってた方がよい。
 一番間違いないのは実測だが、見た目で分からなくもないので画像参照してください。
 
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 横から見ると差がわかりやすいかも。こんな感じ。因みに書き出しから2枚目のポットが2つ写ってる画像では、左側のが大きいけどネジ部はミリ仕様のM8で、右の小さい方は3/8インチ約9.5mmとなってる。
 まとめるとギターで使われるネジ部の太さは、ミリ仕様のM7(7mm)、M8(8mm)とインチ仕様の3/8”(約9.5mm)。ほぼこの3種類と思っていい。
 当然ながら取り付け穴と異なるポットを使いたい場合は、穴を広げたり各種アダプターを使うなどして対応する事になる。

 あとはネジ部の長さもあるけど、これはギターによってチョイスされているので、外してから測ってみてね。画像はレスポールなどに使われてるロングシャフト。
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ミリ仕様に長さの種類はあまり無いが、CTSは3〜4種類ある。普通は9.5mmだけどもっと短いのとか、1/2インチ(約12.7mm)なんかもあるにはある。


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 次はノブを差し込むシャフトの形。ココが変わってしまうとノブの種類によっては取り付けられなくなるので、注意が必要。
 ここもインチだミリだ言われてるが、よく勘違いされてるのはミリは6mm径でインチは1/4インチ6.35mmというもの。これ間違いではないのだけど、このギザギザが付いてるタイプはスプリットシャフトといって、径はインチもミリもほぼ同じ6mm。
違いはローレット(ギザギザ)の数で、ティース(teeth)という単位で呼びます。
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最近のフェンダー系プラスチックノブはもう兼用になってるからこの違いに問題は無い。マズいのはギブソン系のアクリルノブだ。成型の段階でノブの穴にギザギザが刻まれてるので、これが異なると挿し込めなかったり最悪割れたりする事も。
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 小さくて見えみくいかもしれないが、元のアクリルノブを使いたい場合はここに気をつけよう。18teethのポットからCTSなど24teethのポットに交換するのなら、ノブも新調しないとダメ。もしくはCTSポットでミリ用M8の18TEETHが売ってるので、そちらを選ぶのもアリ。

 このようにネジ部の径とシャフトの形で既にこんな状態だが、更に言えばギブソンのポットはこれまた独自のサイズなので、ポットをCTSに交換するとノブが緩くなる。逆にギブソンのポットにインチ用ノブはキツくて付かない事がある。この差はたぶんコンマ1くらいで見てもわからない。ここはもうノブとセットで交換するか、ギブソンパーツで揃えるしかない。

 そしてもう一つ。スプリットシャフトに対してソリッドシャフトというのがある。こちらはローレットも先割れも無いただの丸棒シャフト。
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 コチラは正しく径が6.35mとやや太くなってる。ノブはメタルノブなど横からネジで固定するタイプでないと取り付けられない。
 先のアクリルノブ同様、交換時にここの仕様が変わるとやはりノブが合わなくなる事がある。例えば6.35mm穴のノブにスプリットシャフトは細すぎて操作の際にセンターがズレてしまったり、留めネジの位置が適切でないとシャフトを痛めてしまったり。
 
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 この辺の対策は便利グッズが販売されてるので、ソリッドからスプリットにする場合はそちらを使う事もおすすめする。
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/211127/
とか
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/236551/
とか。

もしくはスプリットシャフト用のメタルノブを使うのも手だ。
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ネジ止めではなく差し込み式。ナイロンブッシュのような感じでメタルノブのくせに触れてもアース落ちないけど、逆にメタルノブ特有のチリチリノイズも出ない。



 とりあえずポット交換に関するポイントをざっと挙げてみたつもりが、なんかノブの話しになってるし。

ちょっと長くなったので一旦終了します。

 次回は抵抗値と内部の構造についてやってみる予定。

# by Rune-guitar | 2023-05-10 01:19 | guitar repair
 配線作業を自身で行う方は多いと思う。前回のノイズの話でも少し触れたけど、ギターの配線は単純この上ない。ピックアップから始まり、しっかり線を辿れば途中いくつかの分かれ道があるものの、出口のジャックに割とすんなり到達出来るハズ。通過するパーツも基本的には入り口と出口なので、案外推測でもなんとかなる。
 ボリュームポットなんかは中が見えないので少々解りにくいが、ストラトやテレに使われているレバースイッチは接点がむき出しなので、レバーの位置と接点の関係がとてもよく解る。
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という事で今回のネタはレバースイッチ。

 このタイプのスイッチで一番有名なのは画像右のCRL製の物。70年前から同じ造りで今もハイエンドクラスのギターに使われてる。基板の素材がちょっと変わったくらいでほぼそのまんまの姿。しかも今だ現役トップというバケモノスイッチ。
 ところが ”そんなんでいいのか⁉” と言わんばかりにフェンダー製品に於いてその座を奪ったのが画像左のOAK社製スイッチ。最近はこのOAKのスイッチがメインで、CRLはヴィンテージスタイル扱いになってる模様。もちろんCRLとの互換性もあるが、この画像の物はそれよりも複雑な4回路5接点という特種な配線が可能なタイプ。その名もスーパースイッチ。これについての話をしようと思う。

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 レバースイッチの働きは複数のラインから一つをセレクトするもの。通常は各端子につながれたピックアップなどの信号を一つ選んで出力の端子に送り出すのが仕事。レバーと連動するパーツが端子と端子を繋ぐ。その動きをイメージ出来るとよいのだけど。
 画像のCRLは4つの端子が入り口3:出口1と配置されていてこれで1回路。裏側にもう一回路の計2回路入って1つのスイッチなのに対して、スーパースイッチは1回路に6つ、5:1になってるのが特徴。それが4つ入ってるんだけど、これについては時系列に沿って説明しよう。


 かつてCRLのレバースイッチは3ポジション。54年当時はストラトも3ポジションで、各ピックアップはそれぞれ単体で使う設計だった。CRLのスライダーは接点部分が幅広になっていて、切り替える際に隣の端子に触れてから元の端子と離れるリレー方式。下の画像赤丸の部分。スライダーが二つの端子にまたがってるのがそれ。
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 ピックアップ切り替え時に一瞬でも音が途切れてしまわないようにそうなっているのだが、その時の音(いわゆるハーフトーン)がイイネって事で、75年頃に各ピックアップの間のポジションで止まる5WAYスイッチに改良される。これで二つのピックアップを同時に鳴らすパラレル接続が標準仕様となり今に至る。
 そして80年代頃にはリアやフロントにハムバッカーを積んだストラト系ギターがメジャーになり、複数のピックアップを同時に使う時にリハムバッカーのコイルタップが自動でONになる配線も出てくる等、ギターの配線はより複雑なパターンが求められるように。余談だがハーフトーンはストラトの為にあるような言葉なので、広くはミックストーンとか違う呼び方の方がよいと思う。レスポールでハーフトーンとは言わないし。

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 そんなピックアップの接続バリエーションの一つに、2ハムながら5ポジションを使うパターンがある。リア、フロント単体以外の三つのポジションにミックスはもちろんタップサウンドやボビンの入れ替え等々、各メーカー様々な配線パターンを割り当ててるが、残念ながらこれは普通のセレクターでは不可能。
 スーパースイッチはその為に登場したと言ってもいいくらい様々な配線が可能なホントにスーパーなスイッチなんだけど、構造的にはそんなに複雑なものではない。CRLのリレー部分を独立した端子にして、2回路を4回路(つまり同じ基板を2枚)にしただけだ。(画像のコレは無視してください)
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 考え方としては、ハムバッカーの2つのボビンをバラしてリアとフロント計4個のボビンを独立したコイルとして扱う感じ。各ポジション接続する端子は1つだけなので、このポジションではこのコイルを使うという感覚で1回路1コイルとして考えるとわかりやすいかも。とりあえず基本として。
 しかしそこにシリーズパラレルの切り替えやコイルタップなどを取り込んでいくと、パターンによっては回路が足りなくなることもしばしば。そんな時は1回路辺りの役割を増やしたり、5in 1out を 1in 5out として使うなどの工夫で結構クリア出来る事もあるので、パズル感覚で考えるのも楽しいかも?
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 画像は2ハム1シングルのいわゆるHSH配列の配線パターン。1.フロントハム 2.フロントタップ+センター 3.センター 4.リアタップ+センター 5.リアハム という構成。これはCRLなど普通の5WAYでも可能なパターンだけど、それをスーパースイッチでやると仕組みがイメージしやすいかなと。
 回路の節約の仕方もわかりやすい。例えばリアとフロントは被る端子が無いのでまとめてしまえばそれで1回路空きが出るとか、リアフロントともジャンプした端子にタップの線を持ってきてもアース用の1回路が空くとか。
うまく使えばあきらめていた配線パターンも可能になるかもしれない。


 最後に割とよく使われるパターンを紹介しておこう。2ハムでフロント側を1とした5ポジションの配列パターン。パラレル、タップ、シリーズなどいろんなバリエーションが得られるパターンなので、興味のある方はぜひトライしてみてほしい。
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 画像の左側にレバーを倒すとリア、右に倒すとフロントになる位置関係。フロントのHOT1と2はタップ時のコイルをリアとは極性の違う組み合わせにする為のもの。リアフロントとも同じタップ方式だと、同メーカーの場合ハムキャンセル効果が得られなくなるので、この場合フロントは1コイル目、リアは2コイル目を使うようにしてあるという事。
 DUNCANのピックアップを例に挙げると、リアHOTは黒のワイヤー、リアTAPは赤と白、緑と裸線はアース。フロントHOT1は黒、フロントCOLD1は白、フロントHOT2は赤、フロントCOLD2の緑と裸線はアースへといった感じ。
出力はマスターボリュームポットの3番に行けばOK。

この配列は 1.フロントハム / 2.フロントタップコイル1 / 3.フロントハム+リアハム / 4.フロントタップコイル1+リアタップコイル2 / 5.リアハム というパターンになる。
 フロントのタップはミックスせずにシングルコイルのように使うところがポイント。ハムキャンセルは効かないがパラレルミックスよりもやや音が太く、意外とフロントハムをタップ状態で使ってる方はいらっしゃる。噂だがエディーヴァンヘイレンもそうだとか?


 そんなこんなでスーパースイッチの話でした。
さあ、配線の沼へいってらっしゃい。

# by Rune-guitar | 2023-05-03 17:47 | guitar repair