
フレイムメイプルトップが鮮やかなソロイストタイプのギター。
ホームページでも紹介してるけど、高校時代の友人からのオーダーで作ったオリジナルモデルです。
ボディーシェイプもウチのCurionからアレンジしたので、ソロイストっぽいけどたぶんちょっと違う筈。
僕もこういう仕事なので、ギターのデザインやスペックには常々思うところがあって、今回はこの友人のギターと共にそんな話を少し。
スケールはおなじみの25.25インチ。彼のモデルはずっとこのスケールでやらせていただいてます。元々は25.5のロングスケールに1046のゲージを張った時、左手の負担が大きいのを和らげる目的でうちのオリジナルギターCurionに導入したもの。使用感や音の違いは伝えなければ気付かない程度なので、よくおススメしています。
スケールは意外と語られることが少ないのですが、自分に合う弾きやすい長さというのもあるので、気にしてなかった方は今度何か試奏する時には意識してみると何か発見があるかも。

ヘッドストックもかなり昔のデザイン。まだ楽器店勤務時代にショップオリジナルで企画したものだけど、完成前に僕が退職するというアクシデントで日の目を見ることのなかったデザイン。(実際にはプロトが2本あって、なんとアトランシア製!)
ヘッドストックはネックの先端部分でもあるので、ここのデザイン、取り分けサイズは音色に与える影響が大きいです。ざっくり言うとサイズが大きく重いヘッドは音もヘヴィーに。スリムなデザインは軽いので明るいトーンになります。これはペグの重さも含んでの話。つまりペグを変えると音が変わるのは重さの影響です。似たような重さなら大して変化は無いです。

ブリッジはGOTOH 510TS FE1 + GRAVITY トレモロブロック。今は諸事情あって生産出来てないけどいつか復活させたいオリジナルパーツ。低音域の増強とイントネーションピッチの精度向上を図ったスティールブロックです。
ここでも重さが物を言います。加えて硬さも。全体に言える話ですが、重ければ重い音、軽ければ明るい音、硬ければ硬い音、柔らかければ甘い音になります。
ブリッジもまたその影響がモロに出る所なので、音を狙う際に重要なパーツと言えます。

指板はエボニー。フレットは24F、ジェスカーステンレス55090SSを搭載。もちろんコンパウンドラディアス。インレイはアバロンの美しさと白蝶貝の視認性の良さを併せたデザイン。
指板の素材は近年南方系の物(大抵は色の濃い木)ほど入手しにくくなってきてますね。代替品も多くなってきてますが、木目以外はあまり大差無いと思います。音を狙うならメイプル、ローズ、エボニーという大きな括りで考えればよいと思います。まあ木目が魅力だったりするので一概には言えませんが....。

そしてボディーバックはアフリカンマホガニー。トータルのボディー厚は50mm程度にしてます。アーチトップってボディー中央が45mmのモデルもあって、その場合エッジ付近の厚みが結構薄いので、なんだかもったいなくてちょっと増量してます。ヒールデザインはスルーネックならではの大きいカット。まさにヒールレス。
ボディーが音に与える影響は、素材はもちろんなのですが、個人的には ”トップ面積対厚み” が重要と捉えてます。実際の数字に加えこのトップに対しての厚みでローの出方が変わります。レスポールが良い例ですね。フライングVなんかはその逆パターン。でかいけど薄い。これについてはギブソンのギターがイメージしやすいです。見たまんま、持ったまんまの音が出る。
こんな風にいろんな所で音は決まっていきます。ピックアップもトーンは変えられますが、音の基となる部分はやはり造りの方が決定権を持ってる気がしますね。なので、僕はどうせなら設計からと常々思います。ほんと言うとストラトなんかフレットの高さが変わったらポケットの深さも変えないと元のバランスにならないので。
そういう観点から、オーダーメイドのギターはありとあらゆる部分に意味を持たせる事が出来ます。細かく書いてはいないけど、ネックの幅、厚み、シェイプ。コントロールの構成や配置。ハードウエアのチョイス。カラーリング。それこそウッドマテリアルから始まって全て一つの目標に狙いを定めて設計していくので、思い描くギター像がある方ほど着地点が近いギターが出来上がります。
昔と違ってギターの構造も多様化して、新しいパーツもたくさん出てきてます。今はホントにいろんなギターが作れるので、たくさん妄想を膨らませていただければと思います。これ考えてる時が一番楽しいので。
ではまた。