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Rune guitar

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ギターリペアマンの視点から、仕組みやパーツなどにまつわる話しを綴っています。

American Performer Mustang のトレモロユニット

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 お得意様からアメリカンパフォーマームスタングという、ちょっとカッコイイギターをお預かりしました。なんとピックアップをジャガーの物に交換!なんかローノイズでルックスも良いぞ。
 このシリーズは従来品のレプリカではなく、あくまで今のモデルとして作られていて、いろんな所が進化してます。その中でちょっと感動したあるパーツの話しをしたいと思います。

 フェンダームスタングというと、ショートスケールで22フレットの使用感、独特のレスポンスが特徴のダイナミックトレモロが魅力ではないかな。ストラトのシンクロナイズトレモロとは一味違う掛かり方。
 使用アーティストではやはりcharさん。ムスタングをあんな風に使える人はそういないですよね。

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 ムスタングに搭載されてるダイナミックトレモロユニットは、ストラトのシンクロナイズトレモロとは全く異なり、テイルピースとブリッジがセパレート型。テイルピース側にスプリングを2本装備して、スタッドのクビレを支点として弦との張力バランスを取る仕組み。ブリッジ側は両端から伸びた脚の先端を軸に、弦の動きに合わせて前後に動くようになっています。
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こんな感じ。伝わるかな。
以下の画像と併せてご覧ください。
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3枚目違うギターだけど、ブリッジサドルの脚。
バーを動かすとテイルピースが前後に振れて、ブリッジサドルはそれに合わせてというか釣られてというか連動する仕組み。
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 この動作はオクターブピッチやチューニングの安定を考えるとあまり良いとは言えないけど、当時の需要というか求められてる効果としてはシンクロよりも合ってたのかな。バーの可動範囲は大きい割に、ピッチの揺れ幅はそんなに広くないので、ストラトよりもやわらかでしなやかなビブラートが得られます。まあストラトは急過ぎると。

 charさんはそのダイナミックトレモロを、文字通りダイナミックな使い方してしまう訳ですが、チューニングを保つにはストラトよりも更に気を遣う事になります。

 ストラトもナットの滑りやペグの巻き、バーの操作など、いろいろ使いこなす為のワザがありますが、 ダイナミックトレモロはそもそもその造りにかなり改善の余地があります。その最たる部分がテイルピースの支点です。
 今回紹介するフェンダーのアメリカンパフォーマームスタングのトレモロユニットは、その問題に果敢に取り組んでおりまして、コレは紹介しない訳にはいかない。ここをキッチリ改善してくる辺り流石老舗です。まずは画像を。支点部分をユニット裏側から撮ってみました。
 
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 従来まではプレートに開けられた穴がなんとなく支点らしく面取りされていて、スタッド側のクビレもなんとなくでした。まあ、それはそれで一応機能するんですが、トレモロユニットの要はちゃんと元の位置に戻るかどうか。
 フローティングにセットされたユニットはどれもここが一番大事なトコ。フローティングってそのニュートラルな位置で止まるのが案外難しいんです。バランスで留まってるだけなので、0ポイント近辺はちょっとの負荷で位置が微妙にずれやすく、結果全体のチューニングがおかしくなってしまう。

新しいユニットはここをフロイドローズやwilkinson、フェンダーアメリカンスタンダードトレモロのようにナイフエッジ方式にして、支点部分で発生する摩擦を極力減らし不安定要素を取り除く努力がされてます。ここに手を付けたのはホント流石。だって他メーカーは絶対手を出さない領域だもん。

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 こんな感じ。わざわざ座ぐりまで変更してやるのが立派。この改良のお陰でユニットの動きはとても良くなってます。
もちろんその他の問題点にも改善が見られます。

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 このアメリカンパフォーマーシリーズは演奏性を重視してるので、ヴィンテージの仕様なんかには囚われません。指板Rは9.5インチと最近のフェンダーの仕様になってまして、当然ブリッジサドルも併せて変更してあります。個別の弦高調整が出来ないタイプなので、ここはしっかり9.5になってますね。ABRの汎用品だとRがイマイチだったりするので、この辺りもうれしい。
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 そして皆が困っていたアームバーを差し込む穴にナイロンブッシュが付いた!これがあると無いとで使用感がずいぶん違う。以前は横から押さえるネジの先にナイロンのパーツが着いてたんだけど、やはり今度のはアソビが少ないよ。
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 ついでに各部の調整画像も少し。
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オクターブ調整は普通のドライバーだとテイルピースに当たってやりにくいので、こんなヤツを使ってみた。なかなか良い。因みに出荷時には前後逆向きにマウントされてるみたいだけど、サドルの位置によってはオクターブ調整ネジが当たりそうで、気になっちゃうのでコッチ向きにしてます。

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 弦高は個別には出来ないので、ブリッジの左右の高さで調整。ジャガーやジャズマスターみたいなスパイラルサドルにしなかったのはメリットもある。サドルにかかるテンションが弱いので、高さ調整ネジの緩みや鳴きなどにはコッチの方が強い。サドルからの弦落ちなんかにもね。

 以上、かなりざっとだけどアメリカンパフォーマームスタングのトレモロについてでした。ホントはまだ変更点や謎の部分あるんだけど。
 しかし、正直ムスタングってストラトやテレのように数売れる機種じゃないのに、新しくするからにはやるんだぁと思いました。サイクロンの時もボディー厚に合わせてトレモロブロックを短くしてたけど、向うって必要な事は作ってでもやるよね。今有るものでナントカしよう的なのは無い。

そういう物の作り方は好きです。


by Rune-guitar | 2023-06-07 23:16 | guitar repair

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