僕の工房は主にリペアやカスタマイズをやっているのですが、たまにオーダーで製作なんかもやってます。まあ小さな工房ですからNCルーターとか無いし、塗装もラッカーしかやってません。
でもその代わりどんな変わった内容のものでもあまり制約無く作れるので、そのせいか今までの作品は個性的なギターが多いです。スキャロップとか多フレットとかね。
反対にオーソドックスなギターはあまりオーダーが無く、ノーマルなストラトとかレスポールなんかは作った事無いです。
まあ考え方次第ですが、オーダーとは基本的に売ってないから作るのであって、世にはフェンダーのストラトがたくさんあるのに、わざわざオーダーでノーマルなストラト作らないですよね。やはり作るだけの理由がある訳です。例えばネックグリップとか、素材とか改造の域を超えてる類いです。
おそらく各メーカーさんもそこは悩み所じゃないかと。いわゆるストラトタイプと呼ばれるギターは基本構造や設計を同じくして、各要所毎に特殊スペックを盛り込んだ物が主流になっています。スーパーストラトなんて呼ばれる事もあるくらい。
フェンダーがヴィンテージシリーズに対してスタンダードモデルをラインナップしてるのと同じで、改める所は改めるという発想ね。
そこで、いわゆるストラトタイプ、スーパーストラトと呼ばれるものはヴィンテージとどの辺が違うのか? これについての私見を述べてみたい。
まずボディー、ネックのデザインやサイズについてはあまり大きな変更点は無いかな。スケールも25.5が多いし、パーツとの兼ね合いもあるからペグ穴の配置やブリッジ周りの座ぐりなんかもだいたい同じ。
素材もネックにはメイプル、ボディーにもアルダーやアッシュなどフェンダー系の材がよく使われている。基本トーンはほぼ同じって事。
違うのはピックアップ用のキャビティーや指板のRとフレット数。そしてマウントするパーツ類。これらの組み合わせで、かなりの個性が出せる。2大ギターの西の王ストラトというギターが持つ最大の魅力かも。南の王はその完成度故ほとんどイジれないからね。
ただ、ほぼほぼカスタマイズという概念で仕様が決まっていくので、結局どのメーカーも同じ方向を目指す事になりがち。指板Rは250〜400ミリくらいまでフラットに。フレット数は22でやや高めのジェスカーステンレスワイヤー。電装系はいろいろだけど基本ローノイズ処理が当たり前。ハードウェアはGOTOHさんホント強い。ペグとトレモロユニットはかなりのシェア率になるんじゃないだろうか? 510シリーズのユニットは今最強だと思う。
そんな風に、もっと繊細な部分(例えばネックジョイント部など)を除くとだいたい同じ傾向にあるのが今のストラトタイプ。ホント、スペックとして文字だけみたら大差無い。
余談だが、ここから派生したソロイストタイプやディンキータイプはまた違う方向性を持っていて、特徴はダイレクトマウントのピックアップとロック式トレモロで、よりハードな音楽にシフトしてる。こちら立役者はグローバージャクソンね。やはりストラトタイプとは別の路線。
参考になるかわからないが、アイバニーズのRGはこの類いだけど、AZはストラトに寄せてるようなので、同じメーカーの中で対比出来るのは面白いと思う。
話しをストラトタイプに戻そう。このように使い勝手の面では各メーカー特に大きな違いは無いが、音については様々だ。
これまでにもいろんなメーカーのストラトタイプを見てきたけど、有名所はやはり個性を出してくるもんだ。Suhrとタイラーなんか真逆向いてるんじゃないかと思うくらい主張が違う。
Suhrは実にキチンとしていてプロのツールって感じ。一方タイラーはもう少しワイルドでカッチリしてないのが良い。ツールと言うより相棒と言った方が似合いそう。
どっちがいいかは完全に好みなので、ここはお試しいただいてどっちが好きか、それだけで十分。
こういうのっていわゆるストーリーってやつを語るとそれぞれ更に魅力が出るのだろうけど、僕はあまりそういうのには興味無いんです。使ってナンボ。自分のオリジナルモデルにストラトを選ばなかったのもそんな所から。そもそも設計を変えたかったので。
まとめると、本家ストラトのルックスや使用感そのままに、より性能を上げたギター。それこそがストラトタイプ、スーパーストラトの存在意義ってトコでしょうか。もっと広い意味でもストラトタイプって使われるけど、それはあくまで何系かという括りであって、今回はちょっと特別扱いしてみました。
そして国内メーカーや工房物にも優れたストラトタイプがたくさん出ているので、良い物お探しの方はそちらもぜひお試しくださいね。
今、国産は盛り上がってるので!
それではまた。