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Rune guitar

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ギターリペアマンの視点から、仕組みやパーツなどにまつわる話しを綴っています。

ディストーションとオーバードライブとブースター

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 新年早々大きな事故や災害があって、ちょっと心が疲れ気味の方も多くいらっしゃると思います。そういう時は無理をせず、でもがんばっていきましょう。何事もバランス。


 さて、この所なかなか更新が出来てませんでしたが、振り返ってみても僕のブログって内容的には修理ネタあまり無いんですね。これはまあなんというか本業はもちろん修理なんですが、僕自身の基礎の部分は作る事だと思ってます。昔からね。でもそれは”作る”というより”造る”の方が近いのかも。本当は開発とかの仕事に就けたらよかったのかな。

 なので頭の中でいろいろ考えて、ある程度までイメージ出来たら検証に入る。この辺りまでが至福の時ですね。夜中にそんな事をやってるとほとんどアブナイ人ですが、物ってそうやって出来てるんだと思います。
 ウチのオリジナルブースター もそう。どう使うのか。どんな音にするのかなど結構検証しました。いやいや目で見えない物はかなり手強いです。
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※内蔵用オリジナルブースター BB741 スタンダードセット BB741 アドバンストセット 


 さて、そんな音作り。その昔僕も経験ありますが、エレキギター初心者の方にとって音作りってかなり難解ではないですかね? エレキギターはそもそもアンプで音を出すのが当たり前なので、音を出す所までは問題無いとしても各ツマミをどうイジればよいのか? これは難しいですよね。

 多くの場合はサンプルセッティングなどを参考にするのだと思うけど、その音が思ったのと違う場合にいきなり困っちゃう。どのツマミを回せばよいか、説明書(今時は動画なのかな?)とか見てもイマイチよくわからないのは、そのツマミが何をしてるのかが見えないからです。

 それは言い換えると "音が電気信号になっている時の状態" をイメージ出来ないからです。これについて話してみますね。


 エレキギターの音作りで最もコダワリたいのが歪みです。ユガミではなくヒズミ。ディストーションサウンドというエレキギターならではの音。今回はここに絞って進めていきます。

 最近のアンプは割と簡単にディストーションサウンドを出せますが、この効果を得る為の外付け機材であるエフェクターもゴマンとあります。更にその中で細かく分類があって、大きくディストーション、オーバードライブ、ブースター、だいたいこの3つに分けられます。ファズというのもあるのですが、今回はちょっとお休みで。

 それぞれ基本的には大きな違いはなく、音をどのくらい大きくさせるのかみたいなもの。自分の使ってる機材によって、どの程度の働きがちょうどよいのか? そこが一つポイントになります。
 まず音が電気信号に変わる所をイメージしてみましょう。元々音は空気の振動です。それが鼓膜に伝わって音として認識されるんですが、その振動は波として表せるんです。

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 図1を見てください。これは縦軸が振動の大きさ、横軸が時間です。弦が止まっている状態を0として、縦軸は振れ幅、横軸は振れる速さになります。1往復して0に戻る。これを1サイクルとして、1秒間に1サイクルを1ヘルツ(Hz)。これを周波数と呼びます。チューニングの基本になるA=440Hzは1秒間に440サイクルの振動って事ですが、これはまた別の機会に。
 この縦軸を電気の強さに変換したものがシールドケーブルを流れる音声信号で、アンプやエフェクターでいろいろイジる事が出来ます。

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 音作りはこの波をどのように変化させるかな訳ですが、ディストーション等のエフェクターはこの波の形を滑らかなS字からカクカクの波に変えちゃいます。(図2) 
 波の形をそのまま”波形”と呼びますが、左の綺麗な波形を正弦波、右のカクカクの波形を矩形波と呼び、ディストーションやオーバードライブはいずれもこの矩形波を得る為の物。
 すごく大雑把に言うと波形の上と下の部分をカットしてしまうのですが、事の始まりであるアンプの場合、取り分け古いチューブアンプでは、ボリュームを上げ過ぎると処理出来る範囲を超えた時に上と下が再生出来ない。結果矩形波になっちゃったんですね。(図3) それがカッコよかったってのが全ての始まり。身近なのだと拡声器なんか使ってボーカルの声を歪ませたり。アレです。
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 一方エフェクターの場合はその処理出来る範囲をクリッパーという働きをする電子部品によって作ります。多くはダイオードという素子。LEDもダイオードなので実際に使われたりしてます。
 そこに送るシグナルを倍増させる事で歪みの強さをコントロールするのですが、ディストーション、オーバードライブ、ブースターの違いは、それらのどこに特化してるか?みたいに捉えると使い方が見えてきます。


 例えばアンプにかかわらず強い歪みが欲しいのであればディストーション。これはアンプはクリーンで使い、エフェクターのon/offで音色を切り替える場合に最適。歪ませるのが仕事なので、歪が弱いとあまり面白くないものも多い。個人の感想ですが。

 そしてアンプの歪みをサポートするならオーバードライブ。こちらはアンプをある程度歪ませた状態で使い、ギターのボリュームで歪みをコントロールするなど、アンプを主役にした使い方に向いてます。エフェクターのon/offは歪みの幅を広げる感じですかね。アンプのサポート的な働きなので、どんなアンプでもいい訳じゃないのが難しいところ。相性があったりします。

 ギターの音をなるべく変化させずにアンプに送るシグナルを大きくしたい(結果アンプの歪みを強くしたい)ならブースター。これが一番ギターとアンプの音を活かしたエフェクターと言えるけど、そのエフェクターの個性は一番薄い。
 もちろん敢えて若干の味付けをしたブースターもあって、それは目的によって ”トレブルブースター” とか ”ミッドブースター” とかいろいろな呼び方をされますが、用途としては歪みではなくトーンの補正的な意味合いが強い。
 また、"オーバードライブをブースター的に使う" というのもありますが、実際そういう使われ方は多いのでその辺がまた理解をややこしくする。

 ついでに、バッファは波形を一切変える事はせず、伝送時に劣化しにくい強い信号に変えるのが目的。電気的には電圧は変えずに電流量を増やすのがバッファ。
 なんとなくイメージ出来ました? 

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 そうそう、実際に音を作る際にいじるツマミの名前ですが、ディストーション、オーバードライブ、ブースター共に必ずあるのがDRIVE(またはGAIN)とLEVEL(またはOUTPUT)の2つ。DRIVEは元の音をどのくらい増幅するかを決めるツマミ。LEVELは増幅して大きくなった音量を最終的に調整するツマミです。※ツマミと言ってますが、正しくはコントローラーとかパラメーターとかの事です。
 DRIVEを上げるとクリッパーに引っかかる量が増えて、波の潰れ方がキツくなり結果歪みが強くなる。当然音量も多少上がるので、それをLEVELで調整する。こんな流れです。


 まあどれもやってる事は似たようなもんなのですが、その似たような効果を何によって得るか、どの程度の性能にするかの違いですね。僕も専門的な本当の違いはよく分かりませんが、どっちかと言うと名前は音のイメージを伝える意味合いが強いのではと感じます。

 さあ、参考になったかどうか。先述の周波数は、アンプにもついてるトーンコントロールやイコライザーの特色を決めるものになりますが、この辺りはまた別の機会にやりたいと思います。


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 最初に戻ってオリジナルのブースター。試行錯誤して一応BB741という名前で製品は出来たんですが(製品の詳細はコチラ)、これをどうやって試してもらうかが問題でした。オリジナルのギターに搭載する事は決まってたので使い勝手とか音を聞くことは出来るんですが、いざ自分のギターに積んだ時にどうなるのか?

そこで考えたのが…。

 エフェクターにしてしまえ!。まあそれしかないですよね。ギターをお持ちいただければどんな感じになるのか試せます。

 しかしこれが意外に良い感じ。ギター内蔵用の基板だからエフェクターとして製品にするには、基板の固定方法とか問題はあるけど、ギター本体に入れるのと大して違わないとも言える。トラブる事は無いが体裁の話しね。

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 で、その試奏用ペダル。一応名前つけまして、OD741といいます。今のところBB741と内容に違いは無いけど、ゲインの設定はペダル用に変えてもいいかなと思ってます。ミニSWで切り替えでもいい。
 内蔵の場合、役割としてはギター本体のゲインアップがメインなので、ちょっと音を太くするとか前に出すとかあまり歪みは無くてもよいが、ペダルとなるとその辺りの勝手が違ってくる。アンプのドライヴを補ったり、クリーンとドライブの切り替えに使う事もある。接続順もいろいろだろうから、歪の幅が広いのは邪魔にはならないハズ。
 
 実は先日、BB741を内蔵していただいたお客様に1台作りました。僕と嗜好が近い方なので、上手く使ってくれると思います。まだブースターを搭載してない他の愛器のテストにも使えるしね。
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 で、このOD741。基盤が小さいので、ミニも作れます。ACアダプターオンリー。昔の回路がベースなので、余計な物が付いてない分ACノイズに注意が必要ですが、こんな感じ。


 ご興味ありましたらお問い合わせくださいませ。メールにて受け付けております。mail@runeguitar.com
内蔵用のBB741はコチラのページを参照ください。
よろしくお願いいたします。

 

by Rune-guitar | 2024-01-11 22:54 | Curion

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