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Rune guitar

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ギターリペアマンの視点から、仕組みやパーツなどにまつわる話しを綴っています。

ピックアップの話し

 久々の更新になってしまいました。修理屋なのに修理のネタがあまり無いこのブログですが、最近アクセス数が増えてきておりましてありがたい事です。お役立ち情報としてのネタを心掛けておりますので、ぜひ今後ともよろしくお願いいたします。


 さて、今回のお話しは"ピックアップ"。ギターの音を拾うマイクですね。
 一口にピックアップと言ってもかなり幅のあるパーツですので、ひとまずエレキギター用に絞って仕組みから取り付けまで解説していきますね。たぶんまた長話しになるので、何回かに分ける事になるでしょう。お付き合いください😊


 初めに種類から。残念な事にエレキギターという物は、未だに!70年も前の!たった2種類のギターで解説が出来るほど進化をしたがらない変な楽器です。いや、実際にはいろいろ新しい物も出てきてはいますけどね。でも話の中心となるスタンダードモデルはこの2本。クラシック音楽のように当時の作品を再現するような使命もないのに、初心者用のギターで必ず目にする2本。

 それはストラトキャスターとレスポールです。特に画像は用意してませんが、エレキに興味ある方ならもはや画像もリンクも不要ですよね。

 そのストラトに搭載されている ”シングルコイル” とレスポールに搭載されている ”ハムバッキング” という2種類のピックアップについて話してみたいと思います。
 まずシングルコイルから。 


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 これがシングルコイルピックアップというヤツです。初心者の方でも見た事あるんじゃないかな。”西のフェンダー、南のギブソン” てなもんで、1954年の発売以後このシングルコイルを搭載したストラトはウエストコースト系の音楽には欠かせない存在となりました。
 サウンド的にはカラッと明るいタイプ。歯切れの良い輪郭のはっきりしたトーン(音色の意味)で、今ではあらゆるジャンルで使われてます。
ただデメリットとしてよく言われる点にノイズの多さがあります。構造上仕方ないのですが、電波系のヴーッというノイズ(ハムノイズ)には無防備なので、そこはいろいろ対処が必要な所です。

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 ストラトにはこのシングルコイルが3基マウントされてます。ネックに近い方からフロント(F)、センター(C)、リア(R)と呼ばれ、レバースイッチで5通り(昔は3通り)の音色が選べます。
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 それぞれ単体の音に加えてリアとセンター、もしくはフロントとセンターのピックアップを同時に使う事が出来ますが、このサウンドを ”ハーフトーン” と呼び、ストラトの魅力の一つとなってます。因みにストラト以外ではハーフトーンとは呼ばず、ミックストーンなどといいます。
 

 カバーを外すと中身が見えますが、この構造こそがシングルコイルな訳で、似たような大きさでも違う構造の物はシングルコイルサイズの別物だったり、全く違う姿をしていてもコイルが一つならそれはシングルコイルです。
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 構造は至ってシンプル。上下2枚のファイバー板にポールピースと呼ばれる金属の棒が6本刺さってます。ポールピースは磁力を帯びていて、その周りに髪の毛みたいに細い銅線がとんでもない数で巻き付けられてます。あまり公表されてないけど約8000ターンくらいらしい。まあこの数は大して重要ではなく、別の数字になって後ほど出てきます。
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 電気の流れる線を巻き付けた物はコイルと呼ばれ、いろんな仕事をします。そのコイルが一つなのでシングルコイルと言う訳です。


 この磁石とコイルで出来た単純な部品がエレキギターの心臓部。これが無いとアンプから音を出せません。仕組みは電磁誘導っていうヤツで、詳しくはググッてください。簡単に言うとスティール弦の振動でポールピースの磁界に変化が起こると、コイルに電気が発生するというもの。とても微々たる電力ですけどね。

 
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 そしてこのコイルと磁石にはあるルールが。ちょっと画像に描き込んでみたけど解るかな? 図と併せてご覧ください。
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 磁極の向き、コイルの巻き方向、電気の流れる方向。この3つを上手く合わせないと、複数のピックアップを同時に使った時(先のハーフトーンとか)にちょっとした不具合を起こすのですが、それを逆位相とか位相のズレ、反転などと言います。



 ここでちょっと位相について。位相とは音や電気信号をグラフにするとわかりやすいです。前回の周波数ネタと被りますが、図1は弦を弾いた時の向きと同じに電気に変換された図です。
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 例えば図Aが弦の動きをそのまま電気信号に変換したものとすると、Bはまるっきり裏返した状態になってます。これを反転と言ったり、位相のズレと呼んだりします。先の3要素のうち1つが反対だと、このように波形がひっくり返ってしまうんです。
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 位相の反転は、実際聴いた感じでは ”鼻を詰まんだような音” なんて表現をします。2つのピックアップを同時に使用した際に、片方のピックアップが拾った音と真逆の波形がもう片方から出てくるので、合わさると打ち消しあってなんとも妙なサウンドになるんです。これをフェイズアウトした音と言います。
 理論上では相殺されて音が無くなりそうですが、実際には2つのピックアップの位置を全く同じには出来ないし、全く同じピックアップを作る事も出来ません。その為波形が微妙に異なり、無音にはならず低域の無い線の細い音になります。



 話を戻して、先の画像では巻き始めから反時計回りにワイヤーが巻かれてます。それぞれ白と黒のリード線に接続され、通常は黒い線をグランドへ。白い線は出力(Hot)としてポットやスイッチを経由してOUTPUTジャックに向かいます。
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 位相がズレるパターンは3つ。図2の中でBの巻方向というのがちょっと解りにくいかな。電気の流れる向きを変えれば同じ事なのでね。ただ位相がズレる要素として巻方向と電気の流れる方向、そして磁極の向き、このうち一つもしくは3つが合わない場合、位相は反転してしまうんです。2つなら反転の反転で元通り。
 なのでもしピックアップを一つだけ交換するなら、唯一変更が効くHot/Coldを入れ替える事で位相を合わせる作業が必須になってきます。この話しはまた出てきますが、まずは位相が合ってないとよろしくないと思っておいてください。
 


 
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 次にハムバッキングピックアップについて。
 シングルコイルの細かい話しは置いといて、先にハムバッキングの方を説明します。
 基本的な構造はシングルコイルと同じですが、こちらはボビンの数が2つ。故にダブルコイルと呼ぶ人もいますが、ただ2個ってだけじゃないです。

 ここでストラトの弱点であるノイズの話しを蒸し返します。ハムノイズというのは主に電源周りとかから飛んでくる電波なんですが、ハムバッキングという名前は、そのハムを相殺するという仕組みから来ています。
 具体的には片方のコイルが拾ったハムノイズに、もう一つのコイルが拾った位相反転したノイズをぶつける事でノイズだけを打ち消す、そんな画期的なピックアップなんです。ワイヤレスイヤホンなどに付いてるノイズキャンセル機能もこれと同じ理屈ですね。

 先に配線の方から。2つのピックアップを同時に鳴らすという点ではストラトのハーフトーンと似てますが、ストラトは2つのコイルを並列に接続するのに対し、ハムバッキングは直列に繋ぎます。この違いは出力に表れて、並列(パラレル)はやや大人し目なサウンドに。直列(シリーズ)はパワフルなサウンドになります。理科の実験でやる電池と電球のアレと同じですね。
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 この2つ並んだコイルの間から1本線を取り出して、コイル1つだけの音を得る事も出来ます。これをコイルタップと言いハムバッキングピックアップのサウンドバリエーションになってます。
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 ただし、コイル1つと言ってもストラトのシングルコイルと同じ音が出る訳ではないです。
ハムバッキングのポールピースは磁石ではなく、磁石はボビンの下にある為に表面の磁力はシングルコイルよりもやや弱め。加えてコイル1つのターン数も5000ターンくらいなので、タップ時のパワーはシングルコイルよりも弱くなります。ここは知っておくべき所。

 そのタップにも関わる、ハムバッキングピックアップからの線は大きく2種類。1つはホットに撚り線1本と、それを覆う網線でコールドとグランドを兼ねる1芯シールド(シングルコンダクター)。
 もう一つはそれぞれのボビンのホット/コールド各1本ずつと裸線のグランドを一纏めにした4芯シールド線(4コンダクター)。シールドは網線ではない物も多い。
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 ヴィンテージ仕様の物は1芯シールドが多いですが、モダンタイプの物では殆どが4芯シールドになっていて、他メーカーのピックアップと同居する際にフェイズアウトを回避出来るようになってます。


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 中身こんな感じ。それぞれのホット/コールドが4色のリード線に接続されてる様子。ここでの色分けは各メーカーで適当に決められてるので、異なるメーカーのピックアップを同居させる場合の混乱の源となってます。

 参考までにDUNCANはスラッグ(無可動)ポールピース側が黒ホット白コールド、アジャスタブル側が赤ホット緑コールドになっていて、白と赤を直結してコイルタップ時に使用します。タップしないなら絶縁しておきます。
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 もし位相が合わなかったら、ホットコールドを入れ替える。グランドとペアになってる緑をホットに、黒をグランドとペアにしてアースに落とせばOK。
 1芯シールドはこの配線を中でやってある為、タップや位相反転が出来ない点には注意が必要です。

 最後にハムバッキングのノイズ対策について説明します。わざわざ名乗るくらいなので、これは当時画期的な発明だったんですよ。開発したのはギブソン社。原理はもっと前からあったみたいだけど、今の完成形とも言えるデザインはセス·ラヴァーさんの功績らしい。もう70年も前なのに未だに現役バリバリ。てかこれ無しには始まらない程の絶対的存在ですね。

 その特許を取れる程の構造とは、先のシングルコイルの話しでも出てきた位相の反転を利用したものです。位相が反転する要素には磁極の向きとコイルの巻方向がありました。あとホット/コールドとね。
 問題となるノイズ成分はまあそこら中にあるんですが、基本電波なのでコイルに乗っかってきます。そこで2つのコイルの片方を逆巻きにする事でノイズを相殺しようとするんですが、当然弦振動の波形もひっくり返る為ノイズは消えてもギターの音がフェイズアウトしてしまいます。しかし、ここで更に磁極も逆にしてやると今度は弦の波形だけが反転してフェイズイン。ノイズ成分は打ち消されたまま正常な音に戻るんです。これこそが名前の由来、ハムバッキング構造なんですね。

 この構造はシングルコイルにも応用されていて、例えばストラトのハーフトーン時にノイズキャンセル効果が得られるように、センターピックアップだけ逆巻き逆磁極にしてある製品もあります。
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 この磁極の向きはあまり取り上げられることが無いんですが、メーカーによってはコイルタップ同士のミックストーンでもハムキャンセル出来るようになってるものが増えてきましたね。昔はセレクタ―の都合上タップ線をアースに落とすやり方が主流だったので、2つのコイルの前後を入れ替えない限り同じ磁極のコイルがセレクトされる為、ノイズはキャンセルされずコイル2つ分のノイズが垂れ流しでした。まだこの磁極を意識した配線はポピュラーではなかったというか、コイルタップがあまり必要とされてなかったのかな。
 しかし最近はスーパースイッチ(過去記事はこちら)という変態スイッチが出てきたお陰で、配線のバリエーションは増大。配慮も増大。特に2ハムを4つのシングルコイルと捉えて、タップ時に使用するコイルのポジションやノイズキャンセルも絡めたパターンでは、従来の5ポジションの中にあった ”使わない音” を別の ”使える音” に置き換えることが可能に。これは操作をシンプルにする上ではとても画期的です。配線ちょっとややこしいけど。

 故にピックアップ交換の際にはテスターは必ず使います。テスターはそのピックアップの導通やおおまかな出力、位相も調べる事が出来るので、半田ごてと並んで重要なツールです。持ってない人はぜひお求めを。デジタルとアナログ(針メーター)は好みもあるけど僕は針派。両方あると便利。


 さてさてちょっと長くなりすぎたので、ここいらで次回にしておきます。次回はなんだか流れ的にテスター使って配線の構築とかですかね。

 それではまた。




by Rune-guitar | 2024-04-14 22:45 | guitar repair

by Runeguitar