ご無沙汰しております。異常な暑さが続いておりますが、皆様お変わりないでしょうか。東北地方で被災されました皆さまに於かれましては謹んでお見舞い申し上げます。
さて、前回ピックアップの構造やらをいろいろお話しまして、今回はその続きといいますか実際の配線に於ける可能性について話したいと思います。一般的なギターのサーキットを、もっと自分の使い勝手に合わせて変えてみようというお話です。
エレキギターの代表格。前回も言いましたがストラトとレスポールのサーキットの違いはまずピックアップ。シングルコイルとハムバッキングが持つそれぞれの音色は、木材や造りから来る違いとはまた別の色合いを醸し出します。僕がよく使う表現ですが、材質や構造は音質、電装系は音色なんて説明します。質と色。なんとなくニュアンス違うでしょ?
もう少し細かく言うと質は”重さ”とか”硬さ”とか。色は”明るさ”とかかな。人間で言ったら体格と服装みたいなものか。
もちろん材質にも明るさに影響を与える要素はありますが、ピックアップはこの色調についての影響力が材よりも強いと思います。まあ感じ方次第なんで、あくまで僕のイメージですが。
シングルとハムの持つそれぞれの色合いについては前回も触れているので、今回はそれらをコントロールする配線パターンを見ていきましょう。
まずストラトは3基のピックアップ(以下PU)を1つのボリュームと2つのトーンでコントロールします。PUセレクターはレバー式で3ポジションまたは5ポジション。
ストラトのボリュームは1つ。これはマスターボリュームと言って、全てここで音量コントロール。一方トーンはフロントPU用とセンターPU用の2つでリアはトーン無し。1ボリューム2トーンなんて呼びます。接続パターンは図の通り。
このサーキットのメリットは操作性。主な音色の変化はPUの数とセレクターのポジション数に委ねて、あとはほとんどボリュームのみって方が多い。トーンも2つあるけどセンターPUって単独での出番があまり無いので、フロントトーンを少しいじるくらい。
しかしこのハーフトーンという2つのPUのパラレルミックスは各単体の音よりも人気があるのかも。後ほど出てくるもう少し複雑な配線も、つまりはこのパラレルトーンが幅を利かせてるから。
ちょっと脱線するけど、初心者の方向けにボリュームはともかくトーンの説明を。トーンは音を甘くする回路なんですが、10でそのままの音。0に向かって甘くなるので、そのギターの音を判断するのは10で。
これはアンプにも言えるけど、0~10で表記されてたら10が元の音と捉えるのが普通。12時が0で左右にプラマイになってたら0が元の音。ギターに於けるアクティブEQはこのパターンもあるけど、ブースターなんかは0が元の音なので注意。
この辺の違いは覚えておいて損はないです。
続いてレスポール。
これがレスポールになるとまた別の考え方。PUは2つでセレクターは3ポジションのトグルスイッチ。音のバリエーションはちょっと減るが、その代わり各PUにボリュームとトーンを装備(2vol、2tone)してるので、2つをパラレルミックスしたミドルポジションではそれぞれの値を変えて、いわゆるブレンドトーンを作る事が出来る。これ好きな人は好き。
トーンでは作れないボリュームバランスでの音作りは、フェンダージャズベースやグレッチとかで使われてる。ただレスポールはこの両者と違い、ミックス時に片方のボリュームを0にするとどちらも出なくなるので、ある意味マスターボリューム的にも使えなくはない。
また、PU切り替えと同時にボリューム設定も変えられる点など、ストラトとは見てる方向が違うなあと実感するところ。
このストラトとレスポールの違いは自分が音色をどう扱いたいかの基準になるので、願わくば両方使ってみることをおススメします。百聞は一聴にしかず。この2つを元に今のいろんな配線パターンが作られてるので、弾き心地は最高!ってギターがあるなら配線の改造はそのギターの魅力をより引き出してくれます。
それではその数多ある配線パターンからいくつか解説していきましょう。
1PU(1vol)
画像はアーテイストがらみになってしまうから避けますが、回路図だけ上げときます。見方は左から右へ信号が流れます。クルクルしたのがPU。Coldがアースにつながって、Hotが出力に。ボリュームポットの3番から入って2番に抜けます。その先がアウトプットジャック。
ボリュームポットの構造については
こちらも読んでみてください。回路図の意味が解りやすいかも。
最もシンプルな配線。どう使うん?て方は初期のVAN HALENとRED WARRIORSを参考にしてください。ある意味王道サウンド。
当たり前だけどセレクター無いです。さすがにボリュームは付いてるけどトーンは無し。
この考え方は、トーン回路についているコンデンサー(キャパシター)からの音漏れに起因する。抵抗で止めてるとはいえ繋がってるので10でも多少ロスが出るってやつ。
ハードなディストーションサウンドがメインの場合、トーンの出番は極端に減るか、もしくは使わない方も多いので、この改造はそういう向きには打って付け。
1PUは性能的には決して幅広くはないけど、弾く事だけで表現をするという点ではアコースティックギターに近いのかも。
シンプルな配線は出音をよりストレートにするしね。
2PU(画像は1vol、1tone)
2PUはエレキでは主流となるレイアウト。シングルコイルでもテレキャスターやジャガー、ジャズマスターなどストラト以外のモデルで採用されてます。これらフェンダー系のコントロールは1vol、1toneが多い。PUセレクターはいろいろだけど、元のマイクが2つしかないので、レスポール同様自ずと3WAYのものになるのが普通。
バリエーションAはハーフトーンポジションで各PUをタップミックスしたパターン。外側のコイルと内側のコイルの2パターンになっているのが多いかな。
バリエーションBはちょっと色変えてみた。Aと同じくハーフトーンポジションなんだけど、1つのPUの2つのコイルをパラレル接続にしたパターン。バリエーションAのリア、フロントのコイルタップ同士の組み合わせを1つのPUでやっている状態。メリットはAと違いハムキャンセルが効く点。
バリエーションCは、上記2つの組み合わせプラスアルファ。フロント側ハーフ時はフロントのタップのみ。エディーヴァンヘイレンがそうしてた?とかで人気出た配列。もっとも彼はフロント常にタップだった説もあり。
そしてリア側ハーフ時はリアのパラレル。これはバリエーションBと同じ。
で、一番注目なのはセンターポジションでの組み合わせ。通常同じメーカーのPUをタップにする際、タップ方法が同じだとタップ同士のミックスではハムキャンセルされないんです。全ての場合に於いてとはならないですが大抵同じ側のコイル同士なんで、シングルコイル同様ノイズは出っ放しになります。(バリエーションAも普通に繋ぐとそうなりますが、この場合はノイズよりもコイルの位置を重視した考え方です)
なのでタップ同士でもハムキャンセル効果を得るには、リア、フロントどちらか一方のみ、配線方法を変えるかもしくはコイルの順番を入れ替えて配線する事になります。
コイルの順番とは例えばダンカンのPUでいうと、4芯リード線のカラーコード(各ボビンのhot,coldの色)黒白と赤緑の並びを、赤緑と黒白にするという事。カラーコードが入れ替わるのはホント要注意ですが、それでも個人的には順番入れ替える方を取る事が多いです。
この点を予め考慮したPUもあるので、その場合は外側同士、内側同士で、更にポールピースのアジャスタブルとスラッグの配置も変えずに済む事になります。確かフェンダーのPUだったかがそうでしたね。賢いと思いました。
コントロールについてですが、ギブソン系では2PUの場合1vol、1toneはあまり無くて、2vol2toneか2vol1tone。この辺りもポリシーの違いかな。フェンダーが操作性を重視するのに対し、ギブソンは操作性はともかく音の方を重視してるように思います。ギターを道具と捉えるか、楽器と捉えるか。そんなところが両者のサーキットに表れてるのかも。
それ故かストラトをベースにしたモディファイ物ではPUの数にかかわらず1vol1toneが多いです。やはり道具としての性能を上げようという考え方なんでしょう。実際僕も1v1tで十分ですが、場所が余ってればオマケとして何かしらの機能を使えるようなのが好き。
3PU(1vol、1tone)
この場合の3PUはシングルとハムの混合型とお考えください。SSHとかHSHとか、リアがハムで、センターにシングル、フロントはシングルでもハムでも好きな方。セレクターは5WAYのレバースイッチが主流で、先のリンクで紹介している
スーパースイッチというなんでもアリのスイッチを使えばかなり複雑な配線も可能。
もちろんなんでも出来る=優れてるという訳ではなくて、大事なのは欲しい音がシンプルな操作で得られるかどうか?扱いにくくなっても意味が無いし。
因みにこの3つのパターンは普通の5WAYセレクターでも配線可能。多くのギターに採用されているパターンですが、それは正にそういう事です。
そしてこのレイアウトで大きいのはセンターにシングルコイルがいる事。タップではない本物のシングルコイルが。昔よくタップサウンドをストラトの音とか言ってしまう謳い文句がありましたが、アレどうかと思いますよ。別物ですからね。
先の2PUで同様の話はしてるので各説明は省きますが、バリエーションBについてだけ。こちらもセンターに積んだシングルコイルとの位相を合わせると、ハーフ時にハムキャンセルが可能です。磁極のチェックなど必要ですが、やはりノイズが消えてくれるとなんかウレシイですよ。場合によってタップ時のコイルを入れ替えて配線しましょう。
画像のギターの場合、フロントにはシングルサイズのハムバッキングを積んでるので、一見SSHのようでHSH。このように出力やキャラクターも含めて3種類ものPUをマウントしている事が重要な場合もありますね。
ちょっと変わりダネも。
コチラの画像のギターもかなり特種です。見た目はHSHですがSSSとHHの2種類を切り替えて使えるようになってます。もちろんタップ時の音もしっかり計算されたPUだからこその配列。セレクターも3S用と2H用に別々に装備。
一見複雑そうですが、演奏中に切り替えるのではなく曲ごとに3シングルと2ハムを使い分けるという考え方なら実にシンプル。その他にブースターも内臓してるので、守備範囲はかなり広い。
とりあえずざっと紹介してみましたが、いずれもモダンスタイル(ヴィンテージ系ではないモデル)ではポピュラーなものになっています。音楽の幅が広がるほど出したい音のバリエーションも必要になってくるので、こういったPUや配線の変更で新しい音を加えてみるのも楽しいです。
特にこの所面白いなと思っているのが ”ブレンダー” 。スイッチ切り替えではなく、ブレンド用のポットを用意して2つのPUの混ぜ具合をシームレスで可変させるもの。なんかワクワクするでしょ。
パターンとしては大きく2種類。ハーフトーンのようにパラレル(並列)でミックスするものと、ハムバッキングのようにシリーズ(直列)でパワーを上げるもの。どちらも中間トーンが得られるところが魅力で、シリーズの場合はハムバッキングからコイルタップへ、またはシングルからハムバッキングのような太いサウンドへと無段階で変化させられます。
参考までに回路図を。線の引き回しはこれだけではなくもっといろいろありますが、基本こんな感じというヤツを、パラレルとシリーズ1つずつ紹介しましょう。どちらもその回路の部分だけで、その他のPU、セレクターとアウトプットジャック、アースなどは省略してるので、取り入れる場合は適宜付け加えてください。
ひとつ宣伝を。
このシリーズブレンドサーキットをストラト専用にアレンジした回路を組んでみました。スーパースイッチを使って3シングルのギターをHSHにするような回路となってます。ポイントは操作性。
ブレンド配線はシリーズ、パラレルいずれもPUセレクターとの連携が微妙になってきます。つまりスイッチ操作と別に配線を切り替えてるので、ブレンドを上げたままセレクターを切り替えても元の配列にならないんですね。この辺のもどかしさを排除したワイヤリングになってますので、実用性ではかなり良いと思います。
この回路を解説したダウンロード商品を用意しましたので、ご興味ある方はぜひご購入いただければと思います。回路図、実体配線図ほかガイド全9ページです。
スーパースイッチ他必要なパーツは別途ご用意ください。(お手元のギターによってポットなどは流用出来る場合もあります)
まあこのガイドに限らずこの辺の配線はググるとたくさん出てくるので、いろいろ探してみてください。
とりあえず今回はこの辺で。
それではまた。