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Rune guitar

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ギターリペアと日々のコト・・・

フレット交換って簡単?_c0179274_1373663.jpg


 たまにね、”フレットの交換って実はすごくカンタンなんです。”ってな文章を目にする。”ちょっとコツを覚えれば...”とかね。 趣味でギターイジリをされる方は結構多い。ましてや高額のリペアなら、尚の事自分で済ませてしまいたい。そりゃそうだ。僕もそうだった。

 ただね、ん〜...ネット上のこういう文章ってウソとかホントとか白黒つけるものではなくて、あくまで ”その人の場合”という参考意見として受け止めるべきなのは周知の事。でも、やはり人によっては ”えっ そうなの!?”とか ”この間、ン万も払ってやってもらったのにぃ...”などと妙な疑心を芽生えさせてしまうのではとつい思ってしまう。友人曰く、日本人は活字(出版物としての意)に弱いのだそうだが、ネット上の文字も当てはまるのだろうか?。

 実際、個人が趣味でやったフレット交換とプロがお金をいただいて行う作業が同じレベルである事は殆ど無いと思う。あるとしたら、元プロかそれに近い経験をされている方の仕事だろう。そういう話ではない。
 多くの方が、フレット交換と聞けばやる事は、今打たれているフレットを新しい物に入れ替える作業と思うだろう。もちろんその通りなのだが、実際の作業における最重要ポイントは指板の修整、成型にある。

 そもそもフレットを交換する理由の多くはフレットの減りによるビビリ、音詰まり等だ。それをきちんとした状態にする為の大工事なのに指板の歪みを無視するなんてのは、余程の理由が無い限りナンセンスだ。アコギなんかは腰折れしてる個体も多いし、エレキでもロッドの効きが甘くなってきてるネックとか多いしね。フレット交換はそんな全体的な不具合を全部スパーッとキレイにしちゃういい機会だ。

 しかし、一口に修整と言ってもどこをどのくらい落とすのか、どの辺が限界なのかの見極めは難しい。ポジションマークやセルバインディングに気を遣い(場合によってはあらかじめ取り外したり)完成時の状態を予測して、そこから弦の張力や打ち込み後の反り等を引き算したりなんだりして決めて行く。何も考えずに真っ直ぐには出来ないのだ。

 その他、細かい所では ”いかにフレットをきれいに抜くか”。フレットの溝はフレットを抜く際に痛みやすい。特にエボニーとかね。それに元のフレットと新たに打つフレットのサイズの違いにも注意。同じ物を打てばいいってもんじゃない。溝が緩くなってきてる場合もある。

 更に、いざ打ち込みに入っても上手くフレットが座ってくれない事は多々ある。元々の木の柔かさや脆さ、フレット自体の硬度や形状など、いろんな要素が絡み合ってる事もある。それでも2、3本打ち込んでみるとだいたい対処法が見えたりするが、こういう困ったチャンには手を焼く。とにかくフレット一本一本の座る位置が、極力均等で浮いた感じ無くピタッと指板に這うような状態を目指す。どうせ後で擦り合せるから..なんて甘い事考えてるとせっかくの新しいフレットなのに背が低くなってしまう。

 注意点はまだまだいろいろある。仕事となると仕上がりの美しさなんかも問われるしね....。慣れというのはそれらを無意識にクリアしていく事なんだろうな。

 年間数十本のギターをフレット交換してても尚、僕には慣れの問題とかすごく簡単などとは言う気になれないなぁ。ん..当たり前か、プロなんだから。
フレット交換って簡単?_c0179274_13825.jpg

# by rune-guitar | 2009-12-26 01:47 | guitar repair
あんまりなヤツ_c0179274_0314653.jpg


 ブリッジの貼り直しである。アコースティックギターのブリッジは経年変化でよく剥がれるのだ。原因の多くは弦の張力によるトップ板の変形で、これが引き金となって大抵は紙1、2枚程度の隙間が出来る。弦をピンで留めるタイプならブリッジが吹っ飛ぶ事は無い。まぁ、よくある症状というか、ある意味ブリッジも消耗品(変形や割れたりもする)なので、交換を考えると剥がれてくれないと困るのだ。あまりに強固にくっついてるとトップにダメージがいく。

 しかしその逆で、あんまりな接着で世に出てしまうギターも多い。コスト、生産上の都合だろうが、基本的に接着剤が効きにくい塗装面に瞬間接着剤のようなものでペタッと貼ってあるモデルって結構ある。本来なら、木の面同士を加熱や加湿で剥離可能な接着剤(ニカワや水溶性のもの)で接着すべき部分なのだが...。



 画像のモデルは国産の某有名メーカーのもの。結構古そうだ。いつ剥がれたかは判らないが、持ち込まれた時はまるでトレモロのアームダウン状態である。まさしくあんまりなヤツだ。弦を外したらブリッジもポロンと取れた。コイツを再び接着するには、まずブリッジの形状に合わせてトップの塗膜を取り除かなければならない。

 
 ここでようやく話したかった所になる。アコギのトップ板は単板ならブックマッチが当たり前。一枚の板を、本を開くように二枚に割って接ぐ方法だ。この製法上、刃物が噛む向きが左右の板で逆になる。スプルースはノミ等がちょっと噛んだだけで深くめくれたりするので木目の向きは要注意なのだ。これは塗膜を剥がす上でもかなり重要な事で、極力平面を維持し塗膜だけを取り除きたいのだから、必ずセンターを境に左右で反対の方向から剥がす。その工程で半分までいった所がこの画像。

 ま、別にあんまり大したネタじゃないんだけどね。こういう所にも気ィ遣ってんのよと言いたかっただけさァ。オソマツ。
# by rune-guitar | 2009-09-16 00:33 | guitar repair
 しばらくご無沙汰にしてしまったが、やっと手が空いて来た....という訳ではない..。

どっちかというと現実逃避に近い。まぁこのご時世、実際受注数自体はやや少なめになってきたが、内容的には以前にも増してヘヴィーだ。

こんなのとか

久々に_c0179274_07389.jpg


こんなのとか

久々に_c0179274_2242574.jpg


そんなのが多い。かなり多い。いや、貯めこんでしまったからなのだが....。

ちょっと昔話をしよう。

 リペアを始めた頃、メインの仕事はお店さんの買い取り中古品をクリーニングして調整する事だった。そのうち少しずつ修理らしい仕事が貰えるようになり、最初はナット交換(お約束?)とかエレキのパーツ交換。

 とにかく本数をこなす。食事とトイレと寝る時間以外すべてギターと一緒。月に手掛ける本数は100とか120とかだったっけ?。今、考えるとこれも恐ろしい。でも、この時期に元の職場で付き合いのあったメーカーさんと伝票取り引きをしてもらえるようにもなったのは、パーツの消費がかなり多かったからでもある。

 そしてどれくらいしてからか忘れたが、すり合わせやP.U交換等、店頭品ではなくお客様からの預かり品をまかせてもらえるようになった。今でもそうだが、その頃の僕は自分の仕事レベルがどの程度なのか知らないが故、店頭品じゃないとなると一本のギターに随分と時間を費やしていた気がする。どこまでやればOKなのか確信が持てないからいつまでもイジってる。これは仕事が丁寧なのとは違う。仕事が遅いのだ。

 それでも何故か内容はだんだん濃くなってきて、木工や塗装がウエイトを占めてくる。リフレットやネック折れ等は既に定番だ。アコースティックではブリッジ作成交換やネックリセット等、まず接着を外すというイヤ〜な作業から入る事も多々ある。当然また接着する訳で、本来塗装前の作業をやる場合も多い。まさに先の2枚の画像。


このブログを読んで下さってる方の中にはリペアマン志望の方もいらっしゃるかもしれない。

一つ言っておきたい。

リペアは体力勝負だ。

集中力?眼力?、精神力?、etc?。 いや〜それも結局は体力だ。技術はやれば付いてくるけど体力は付いてコネ〜ぞ〜。
# by rune-guitar | 2009-06-25 00:10 | guitar repair
 製作やってる方は皆さんご自分のロゴをもってらっしゃるかと思うが、僕も今回初めてデカールを発注してみた。フェンダースタイルとでも言えばよいのか、いわゆる水転写シールを作ってもらったのだ。

 製作って技術的なものよりも販売に至るまでのノウハウの方が必要らしい。段取りというヤツか。本体の方はもう2年くらい前から手掛けて、プロト含めて何本か作ってたけどロゴのデザインや付属品(ケースとか)なんかが全部後回しになってて、結局今になってもまだパッケージが定まってない。

 ま、とりあえず初めて自分のロゴのついたギターが出来たので写真撮ってみた。ヘッドだけだけど。こんなんです。

ロゴ_c0179274_293841.jpg


 全体的にフェンダースタイルを踏襲してるのでトップコート無しの直貼りだ。少数生産なので、一枚あたりの単価がバカにならない。ほとんどが版代だから枚数が多いほど単価は下がるが、生涯かけて何本作れるかもわかんないのでまずは50枚。一枚あたり¥1,000くらいになるので失敗するとちと痛い。

 でも、やっぱロゴが入ると面構え変わるねぇ〜。名乗ってる以上変な者ではござらんという証しだからかな。自分の子の門出みたいな気がするよ。後は身支度整えて、今月中にはお店に並べてもらえるのではないかという所。(なんてケースは今日発注だし、まだ保証書作ってないし、展示用のポップやカタログもしくは仕様書なんかもこれからだ)

 ね、メーカーさんて大変だなあと思うよ。1ロット何百本て単位でギターを企画、生産、販売する。当然売りっぱなしな訳も無い。アフターの事もある。幸い?ウチは修理屋だからこの点は心配しなくていいけどね。ブランドロゴってそういう責任の意思表示なんだな。

 さあ、このギターは皆さんからどんな評価を頂くんでしょうか。腹くくっとかないとな。万人に受け入れられる筈は無いんだから。むしろかなりの単一指向性ギターだし、オールハンドメイド故マシン加工にゃ適わない部分もある。

 ただし、一本一本の細かい所に手を入れられるのは手工のなせる技だ。そういう所を大事に作っていこう。出来合いのネック、ボディーで作れる設計じゃないんだから。



 でもホント生涯に何本作れるんだろう。デカール余っちゃったりして...。
ロゴ_c0179274_21063.jpg

# by rune-guitar | 2009-01-07 02:13 | guitar repair
 12月14日。やっと重い腰をあげ行って来た。

 上野、東京都美術館フェルメール展。小雨の降る中、閉館も近い3時頃だったが美術館前は長蛇の列。なんの下調べも無く行ったので、正直ビックリした。更にチケット売り場の前で初めて目当ての作品が出展されてない事を知ってまたビックリ。というかショック!。2時間もかけてここまで来て引くにも引けない。チケットを買って列の最後尾へ。

 ”ここから1時間待ちで〜す” 驚きだ。一体何人来てるんだ?。(後で調べたらなんと934,222人だったらしい)さすがテレビの力。面倒臭がりの僕でさえ足を運んでしまったのは番組を観たからだ。そこで紹介されてた作品が出てないのを知らなかった人は僕だけではなかったらしく、後ろの人もガッカリしてたっけ。


 さて、そのフェルメール展。”光りの天才画家とデルフトの巨匠たち”とサブタイトルがついている。デルフトというのはオランダの地名との事。17世紀頃のデルフトの画家達の作品展という事か。
 展示作品数は40点。そのうちフェルメールの作品は7点。彼は生涯でたった30数作品しか遺してないので、わずか7点でも約2割の作品が集まった事になる。目玉無しでもこれは凄い事なのかもしれない。実際、出展不可になった理由は作品保護の為らしいので、仕方あるまいね。

 待つ事1時間、ようやく中に入る。 ...暗い。作品保護の為の国際基準だそうだ。ん〜観づらい..がこれもしょうがない。なんせ350年前の絵だ。みんな食い入るように観てる。
 最初の23点はカレル・ファブリティウス、ピーテル・デ・ホーホといった巨匠(らしい。知らなかった)作品が並ぶ。個人的に気に入ったのはヘラルト・ハウクヘーストという画家の作品”デルフト新教会の回廊”という絵。高い吹き抜けの建物の中に差し込む光りが柱を照らしている様が、どう見てもホントに光ってるように見える。写真よりも光って見える。キャンバスの表面を見ようとしても見えない。あたかもそこにそういう光りが有るようにしか見えない。エアブラシも無きゃフォトショップもないこの時代の、画家の画家たるものを見せつけられた気分だ。


 そしてやっと辿り着いた人の壁..じゃなくてフェルメール作品。予想はしていたが案の定 ”立ち止まらずにゆっくりおすすみくださ〜い”の誘導。向こうも事故防止の仕事だ。しゃぁないが絵に入り込むのは少々難しい。


 だが粘りながら限られた時間内で観た彼の作品は、

 ダントツだ。

 悪いけど他の展示作品とは格が違う。まず人物の描写を彼のように描いている作品は他に無く、背景と人物とにギャップを感じてしまう作品が多い。あるいはパースや遠近感に歪みを感じたりとか...。なんかエラそうで恐縮だが、フェルメールの作品にはそういったものが微塵も無い。ホントにズレが無いのか感じさせないのか判らないがそんな事どうでもよくなる。特別出展作品の ”手紙を書く婦人と召使い” なんかはその最たるものだ。
 そこに現実に空間があって2人の人物が何か話しているような、そういう生きた時間の流れさえ感じられる。これが本物か...。
 その他の作品でも、彼は描かれた人物の想いや言葉?まで伝えようとする。これほどまでに活きた人物を描いてる画家は今回は彼一人だった気がする。”光りの天才画家”だけでは言葉不足なのでは?。



 口が開いてる自分に気づく。



 最後は別のブース(2階)でフェルメール全作品の原寸大の写真を展示。予定されていながら出展不可となった”絵画芸術”は思ったよりもデカかった。大作だったのだ。残念。

 そしてお約束のグッズ販売コーナー。大盛況。出展作品のポストカードがあったけどカレル・ファブリティウスの自画像のは売れたのだろうか?。そんな余計な事を気にしながら美術館を後にした。

 雨はやんでいて、西洋美術館のイルミネーションがきれいだった。
# by rune-guitar | 2008-12-16 03:06 | 絵の事