
さて、本題に入ろう。
シアノアクリレートは無酸素状態になると急速硬化する接着剤だ。
僕たちリペアマンは、これを接着剤として使う他に、木に染み込ませる
事で強度を得る為にも使う。
例えば古いクラシックギターのペグ交換等は、ネジをあまりタイトに
入れられない時がある。割れちゃうからだ。かといって下穴を大きめに
するとネジが効きにくい。大抵、マホガニー材だからすぐ舐めちゃう。
そんな時、大きめの下穴に一旦ネジを軽く留めてネジ山を作ってから
ネジを抜き、穴に低粘度の瞬間接着剤を少量染み込ませてやるとウマく
いく時がある。大きめの穴でも山に強度があるからしっかり留まるのだ。
同じような理由で、フレット交換の際にも溝の強度を稼ぐ(食いつき
を良くする)意味で、瞬間接着剤は使われる。ただし、いろんな条件が
ついて回るのだが。
そもそもフレット交換という作業を ”コツさえ掴めば簡単”という
方もいれば、”素人が手を出す領域ではない”という方もいる。
実際の所は個人の判断になるのでどっちとは言えないが、様々なポイント
をクリアしていかなきゃならないのは事実だ。
その中で最大のポイントがフレットの足と溝のサイズだ。コレが合って
ないとウマくない。キツければ入らない。無理に入れると逆反る。
緩ければ浮いてしまう。
仮に同じフレットが用意出来ても、指板の痩せや度重なる交換で
ルーズになった溝も多いから、ハナから合わないと思ってた方がいい。
また、打ち込む際の衝撃(といっても大したものじゃないが)で、
すでに打ち込んだフレットが浮いてくる事もある。同型のフレット
を使用した時に多いが、足の爪が元の爪痕に入ってしまうと噛まない
のだ。ズラして入れるのだが何回も交換されてるとキビシい。
その他まだたくさんあるが、こういった状況に於ける対策の一つが
瞬間接着剤なのだ。キチンと打ち込まれたフレットを長期間動かなく
する為に使用するのが正しい使い方で、多くのポイントを無視して
無理矢理留めてるのとは大違いなのだ。
正直、瞬間接着剤なんて使わなくて済むならこんなラクな事は無い。
使えばそれなりに作業が増えるのだから、手抜きどころじゃない。
楽器の強度や構造上、打ち込む事(押し込む事含む)が困難な場合を
除き、貼付けるようないわゆる接着剤の使い方は無く、やむを得ず
その手を使う場合はとてもシビアな作業になってしまう。
なんか言い訳がましい? でも事実だと思ってるよ。今や新品でも
普通に接着剤使ってるからね。だから、抜くときはこうするとキレイ
に抜けるのだ。
