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Rune guitar

runeguitar.exblog.jp

ギターリペアマンの視点から、仕組みやパーツなどにまつわる話しを綴っています。

 最近ピックについていろいろやっております。昔からピックについては形だの硬さだの材質だのトッカエヒッカエやってたんですが、ここしばらくはずっとJIM DUNLOP TORTEX JAZZ3 1.0mm で落ち着いてました。長さ25.8mm、厚さは1.0mm。かなり小振りなサイズですが、ダンロップでは定番の形状です。
(広告を含みます 画像クリックでサウンドハウスさんへ) 

 僕は80年代ギターヒーロー全盛期出身、代表的なギタリストといえば10人や20人30人軽く挙げられる世代です。ジャンルで言えばハードロック、へヴィーメタル。長髪のコワそうなあんちゃんバンドが次から次へアルバムをリリースしていた、今では想像も出来ない良き時代です。
 その頃のギターヒーローはテクニカル系の方が多く、エディーヴァンヘイレンやイングヴェイマルムスティーン、ポールギルバート、日本人ではラウドネスの高崎晃さん他いわゆる速弾きギタリストがいっぱい。当然その頃にギターを始めた15かそこらの子は結構な確率でその洗礼を受け、それぞれ神と崇めるギタリストに日々大半の時間を費やす事に。まあホントいい時代でした。

 今でこそ速弾きテクニックはジャンル問わず極普通に皆さん速くなってますが、それだけに何方もピックにはかなりこだわりがあると思われます。もう努力とかそういう次元じゃなく、使えるものはなんでも使う。それこそ科学的分析も必要なレベルの速さと正確さ。加えてフレーズの複雑さも相まって相当な難易度になってる訳です。その視点から見るとピックの重要さは今一際クローズアップされてると勝手に思う訳でㇲ。

 という訳で今回のお話しは速弾きに特化したピック探しにちょっとでも役立てばと、その形、硬さ、材質などについて見解を述べてみたいと思います。まだお気に入りが見つかってない方に届きますように。


 ではまず速く弾くという動作に必要なものを考えてみましょう。普通ピックを持つ手はブリッジに軽く腰掛けて、ある程度固定された状態で弾きますね。ブリッジミュートの為もあるけど、やはり浮かせた状態だと狙いも定まりにくいし。
 しかしあまりガッチリ座ってしまうと弦の移動がやりにくいので、軽く弦の上を滑るように移動したり腕や手首や指先も連携して次の音までの時短を図る訳です。そしてこの指先の動きを活かすのに必要なのがピックの大きさなんです。いや小ささと言うべきか? 


ピックについてのお話し_c0179274_11583921.jpg
 ギターを始めたばかりの頃はよく大きめのピック(トライアングル、オニギリ型)を薦められますがあれはしっかり握り込みやすいからで、主にコードストロークにウエイトを置いています。しかしある程度慣れてくると今度はその大きさが邪魔になってきたりします。弾き方に幅が出てくると、もっと小回りが効く方が便利になるから。
 そこで次に選ばれるのがティアドロップという形。おそらくこれが一番市場に出回ってる形状ではないかと思うけど、これでもまだ大きいと言う方が選ぶのがジャズ型。最初に出てきたヤツです。

 このジャズ型が速弾き系に人気がある理由はおそらくその先端の鋭さ。前述のトライアングルやティアドロップよりもかなり鋭い。もちろん小ささもそうなんだけどそれは小回りの方で、鋭さは弦に引っかかる量とトーンに関係します。
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 まず先に小ささについては好みにもよるのだけど、このサイズともなると”握る”というより”つまむ”に近い持ち方で、指先、特に人差し指でコントロールするピッキングに向いてます。指先でクルクル円を描くような動作故にサークルピッキングと呼ばれる弾き方にはうってつけ。腕や手首の動作と合わせて、かなり速い移動にも有利な形状です。

 そしてメインの要素、先端の鋭さなんですが、素早く次のピッキングに移るにはピックが早く弦から離れてほしい訳で、弦に当たってるピックの量を出来るだけ少なくしたい。つまり浅く当てたい。しかしティアドロップなど先端の丸いピックを浅く当てるとトーンが甘くなる。これは厚みのある(だいたい1.3mm~)ピックも同様。丸いものが当たると丸い音になるみたい。
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 そこで短く当ててもしっかりアタックのある音を得られるよう先端を鋭くしたのがJAZZという形状。この呼び名はたぶんJIM DUNLOP の商品名なんじゃないかな。もはや形の名前になってるけど。


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 この弦とピックの噛み付き具合、離れ具合は形状に加えて厚み(硬さ)も影響している。厚みがあると音が甘くなると言ったけど、逆に薄くなるとアタックは良いが硬さが弱まるのでピックがしなって弦にくっついてる時間が長くなる。ピックが負けてる状態。
 この境界線は約1mmと個人的に感じてます。アタックもあり弦に負けない硬さ。このバランスが一番良いのが約1mm~ではないかと。
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 もちろんこの硬さは厚みだけではなく素材そのものの硬さもある。最近の素材は”エンジニアリングプラスティック”という高性能プラスティックが使われてて、調べると硬さや摩擦係数なんかがちゃんと出てくる。まあ樹脂メーカーによって微妙な違いがあるので素材の名称で質を判断してはいけないが、傾向を知るくらいはよいと思う。
 参考までに手持ちのピックをいくつか挙げてみよう。

ピックについてのお話し_c0179274_12034553.jpg
 一番名前が売れてるのはポリアセタールだろうか。デルリンやジュラコンとも呼ばれてるがこれは樹脂メーカーの商品名で、素材としては同じ仲間の樹脂なんだそうだ。細かいコト言うと違うみたいだけどほぼ同列でよいと思う。
 特筆するのは摩擦係数の低さ。滑りが良いと言う事はつまり弦離れが良い訳で、コレを狙った素材のチョイスは最早スタンダードになってる気がする。サラサラした表面で乾燥肌の人は滑りやすいのかもしれないが、ペタペタよりも僕は好き。厚みも1mmで丁度良い硬さになる。


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 もう一つ注目してるのがポリカ―ボネイト。パキンとした硬さが魅力。昔AppleのiMacが半透明のスケルトンカラーで人気だったけど、あれポリカ―ボネイトね。ああいう筐体なんかにも使われるエンプラだそう。
 もひとつ魅力はその透明性。カラフルな着色が可能で、まるでキャンディーみたいなルックスは正直弾き心地と天秤掛けてしまう。
いや、別に弾き心地が悪い訳ではない。どれが良いか迷ってる時にヴィジュアルが優るのはとても大事なこと。


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 最後に今流通しているもので特に人気なのがウルテムという素材。爪に近い素材とか言われるとなんだかすごく良さそうに感じるが、ポイントはそんな事ではない。むしろだから何だという程度。ウルテムの魅力は硬さと滑りの良さが同居している所。同じ1mmでも硬い方じゃないかな。摩擦係数については数字が見つからなかったけど、体感では結構離れが良い。ウルテムに限らず樹脂の種類によってはガラスが混ぜてある物もあるそうで、その辺も関係あるのかも。
 実際弾いてみると判るがやはり滑らかという印象で、そういう所が人気なんだと思う。ちょっとゴムっぽい黄色い見た目が特徴で、製品としてもすぐウルテムとわかるので探しやすいが、床に落とすとメチャ探しにくい。
 因みに画像の左側のピックは右のを小さくカットした物なので、これは売ってません。ダンロップからは1.0mm厚のジャズ3は出てないので比較の為に加工しました。


 さて、今回の話しはお役に立つでしょうか。ウチのブログは製品の紹介よりか考え方についての話がメインなので、サウンドハウスさんとかで商品見ながらそれがどんなヤツなのかをニヤニヤしながら推測するのがおススメです。

 それではまた。

# by Rune-guitar | 2023-11-02 15:10 | guitar repair
フレットワイヤーについて_c0179274_11031734.jpg
 ギターの部品は基本消耗品です。弦はもちろんナットやアコギのサドル、ペグなんかも寿命は長いけど消耗品ちゃ消耗品です。そして本日のお題、フレットもこれは紛れもなく消耗品です。見た感じ取り外せなさそうだし金属だし、交換するものなのかも疑わしいですがペグよりは寿命短いです。弾き方にもよりますが、早いと2〜3年くらいで交換になる方もいらっしゃいました。今回はそんなフレットについてのお話です。

フレットワイヤーについて_c0179274_11045478.jpg
 フレットを交換するまでには前段階があって、まずよく押さえるポジションから減りが目立ってきますよね。そのまま使い続けるとある時点で音や演奏性に支障が出てきます。あまり使わないポジションの方が高いので音がバズる(ビビる)。チョーキングした時に凸凹感が気になったり音が途切れたりなどなど。
 この場合まずはフレットのすり合わせで対応する事が多いです。均一にならしちゃうんですね。当然高さは低くなりますが、元の高さと減った量との差があまりないとか、元の高さがそれなりにあるワイヤーだった場合はこれでOK。
 ところが元から低いワイヤーだったり減りがあまりにも多いと、すり合わせた後が非常に弾きにくくなる事があります。この辺は数字で表した方がわかりやすいかな。
フレットワイヤーについて_c0179274_11094615.jpg

 フレットの形状はだいたい半円型をしているものが多く、幅と高さは直径と半径の関係になってます。つまり幅(width)2.0mmのワイヤーは高さ(height)1.0mmといった具合。W:2.4ならH:1.2とだいたいそういう形になってます。
注:高さをクラウンと表記する事もあるようですが、個人的には形状をイメージしてしまうのでHを使ってます。
メーカーさんのサイトにはサイズが公表されてるので詳しい数字はそちらをご覧ください。終わりの方にリンク張ってます。


 で、みなさんが知りたいのはこの数字をどう見るかですよね。
 一般的によく言われているのは ”高さが低いと弦を押さえにくい” これが一番かな。弦を押さえる時に指板も押さえるから、チョーキングの時にはちょっと余計に力が要るとかビブラートかける時に滑りが悪いとか、バレーコードなんかもそうか。
 やはりフレットは高い方が弾きやすく感じますが、高さ故にスライド時に躓くという声もあります。加えて押さえる強さでピッチが変わりやすいというデメリットもありますが、これは慣れてしまえば大した事無いです。

 一方で幅はアタック音に微妙な違いが現れます。これは幅というよりも頂点のR(弧)の大きさとして見るべき。当然高さが上がれば幅も広くなる訳で、極端に言えばどんどん平らになっていくんです。
 そうすると点が面になるというか、弦が接している部分が多くなる。振動している最中にフレットに当たって、あまりに平だとシタールのようなミョ~ンという異音が出たりします。つまりはシャープさに欠けるトーンになる。
 まあこれがハードロックなどのディストーションサウンドがメインの場合はアンプからのトーンもあるからたいして問題にはならないし、逆に金属の質量が増えている分よりメタリックな音にもなっているので、デカいフレットの人気はそんな所でもあります。

フレットワイヤーについて_c0179274_11102825.jpg
 僕の個人的なカテゴリ分けで言うとミディアムサイズのW:2.4、H:1.2が中央値で、それよりもアコースティックな感じや和音の分離を重視するならより細いサイズ。弾きやすさや倍音の多いトーンが欲しいならより太いワイヤーをお勧めします。細い順にナロー(W:2.0、H:1.0〜)、ミディアム、ミディアムジャンボ、ジャンボ、エクストラジャンボ(〜W:2.99、H:1.47)なんて呼んだりもしますが、結構適当なので数字の方が間違いないです。
 また、サイズには幅と高さの他にTang(タン)という部分の厚みがあります。足とか呼んでますが指板の溝にはまる所ですね。ここは僕ら施工側が気にすればよい所なのでプレイヤーの方にはあまり関係ないですが、ミリ、インチ含めて何種類かあり、ギターとの組み合わせによってはおすすめしないパターンもある事は知っておいて損は無いです。
フレットワイヤーについて_c0179274_11135646.jpg


 話しを戻して肝心の弾きにくくなる高さはというと、僕は0.6mmで交換を勧めています。例えばすり合わせを繰り返して現状の高さが0.7くらいだった場合、もしくはあまりに減りが大きい場合は、完了後の高さが0.6を切る事もあり得るので、そこはあらかじめお話ししておきます。減りは消えても弾きにくくなってしまうのでは意味無いし、またフレットの頭もより平らに近くなっていくので、シャープさも欠けていきます。フレットの寿命はそんな所が判断材料になってる訳です。

 余談ですが、よく見るusedでフレット残り何割とかの表記は元の高さが判らない事が多いので、見た目どのくらい減ってるかをイメージする方がリアルなんじゃないかと。元が1mmと1.4mmでは同じ割合でも実用では判断が分かれます。


 では、いざフレットを交換することになったら何を考えればよいか? 元と変わらないのが良ければ、同じサイズの物でと伝えればだいたい間違いないです。幅から元の高さは決まるので。
 しかしたまにちょっと特殊なワイヤーもあるので、こんな風に使いたいとイメージなりを伝えるのも良いです。こちらからおススメも出来ますし。
 たとえばジムダンロップの6105というワイヤーはW:2.29×H:1.40と、幅の割に高さのあるタイプです これは高さは欲しいが音はシャープさが欲しいなんて場合に選ばれる形状で、スティーブヴァイの使用で有名になったワイヤーですね。
 このタイプはすり合わせで高さが低くなった場合に元が判断しにくいので、サンプルから確認して選んでいただく事が多いワイヤーでもあります。
フレットワイヤーについて_c0179274_11243251.jpg

 6105に限らず好きなアーティストが使ってる物や、好きな音楽に向いている物という見方も良いと思います。アコースティックギターなど音の粒がハッキリ出てくれた方がよいなら細目で、チョーキングもしないならナロー一択でしょうし、歪んだトーンでよりハードなサウンドならジャンボはやはり似合います。
 いずれも音と演奏性のバランスで考えると、好みから理想のワイヤーを絞り込めますよ。


 それともう1点、音にも演奏性にも関係するのが材質です。一般的には18%ニッケルシルバーというのが使われてますが、最近ではステンレスがいいとか聞いた事ないでしょうか。本来は錆びないのでいつも表面がスベスベして滑らかな弾き心地が売りだったんですが、その硬さ故に音も硬い。それもかなり。
 随分前になりますが市場に出た当初はかなりジャンルを選んだワイヤーでした。しかし最近では硬さを調整したステンレスワイヤーも多くなってきて、音色面でも選択肢として十分な存在になったのでどっちがいいか迷う事も。
 また硬度次第ではありますが、寿命が長いのもメリットとして大きいです。とにかく減らない。硬いヤツは軽く倍以上は持ちます。交換時にはやや割高ですが(施工が大変&工具が持たない)、長い目で見るとコスパ高いです。
 
 
 最後に主なメーカーの特徴を挙げておきます。参考にしてみてくださいね。

国産のフレットメーカーで、種類は多くはないが絶妙なポイントを押さえたラインナップ。修理用に足の幅や高さを微妙に変えた型もあるので、僕にはとてもありがたいメーカー。国産ギターによく使われているワイヤーです。(今は国産ギターが少ないので微妙な表現になってしまうが)

アメリカのスチュワートマクドナルドというギターパーツや工具などの通販サイトで、オリジナルのフレットワイヤーがラインナップされてます。僕の所では#147、#152をよく使ってますが、60年代ギブソン用とかバンジョー用なんかもある。足がインチサイズでしかもちょっと太くなってるので、USA物のリフレットには相性が良い。

交換用フレットワイヤーの老舗みたいなメーカー。ジムダン6100や6000といえばイングヴェイ他多くのハード系ギタリスト御用達のジャンボフレットの代名詞。とりあえずデカいフレットの走りですが、ステンレスではないものの硬度が高く(普通の硬度もある)、その長寿命と演奏性を知らしめたメーカー。
サイズのラインナップは豊富だけど入手となるとやや限定されるかも。

日本屈指のカスタムギターメーカー。オリジナルパーツはこだわりの塊で、トレモロユニットやジョイントプレートに加え、ステンレスのフレットワイヤーは人気商品。硬さ違いのスピードタイプとウォームタイプがある。ウォームタイプはニッケルシルバーとの音の隔たりが少ないので、錆びないのはありがたいけど音が変わるのはイヤという方にはお勧め。リンクはステンレスフレットの方です。

おそらく今一番名前を聞くフレットメーカー。サイズ的にはジムダンの何々タイプみたいに、形状はほぼまんまのものが多い。ニッケルシルバーとステンレスの2種類があって、人気に火がついたのはステンレスの方から。そのステンレス、硬さはあるのだけど音に影響が少なく、ギラギラした感じがあまり無いのでアコギに打つ人もいるくらい。立ち上がりや切れが良く、上手くなった気にさせるワイヤー。因みにウチのオリジナルギターは47095のステンレスを使ってます。


 さてさて今回はお役立ちらしい話になったのではないかと。フレットは長く使うと必ずといっていいほど交換時期が来ます。それは同時にネックのちょっとした歪みを取るチャンスでもあります。なので交換後はまるでギターが生まれ変わったようにも感じるくらいのリペアになるので、交換するワイヤー選びはじっくり検討してください。この時が結構たのしいので。

それでは。


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# by Rune-guitar | 2023-10-09 11:34 | guitar repair
チューニング 純正律と平均律_c0179274_00140403.jpg
 純正律と平均律。これって学校で習ってるとしたらいつだったんだろうか? 正直小学校の頃から音楽の成績は良くなくて、中3でギターを始めてから独学で覚えてきた事の方が断然多い。最初はアドリブとか出来たらカッコイイだろうなと思って、高2くらいからスケールとかやり出して。楽典買ったのは20歳過ぎてたかもしれない。

 楽典てのは音楽理論の教科書みたいな、なんだか堅苦しい文章で取っ付き辛い本。でもアレって頭から読むもんじゃなくて、わからない所を調べる物。そう考えるようにしてからは逆によく見るようになって、そのわからない事の中の一つがこの純正律と平均律でした。
 どちらもドレミファ〜の音律の事なんだけど微妙に違っていて、今一般的なのは平均律の方。もちろんギターは平均律の音律が出るように作られてます。

チューニング 純正律と平均律_c0179274_00161869.jpg
 この2つの違いは一言では説明が難しいので、大まかに順を追って話すと、大昔ある音にもう一つ音を重ねた時にキレイな響きになる組み合わせが見つかった。そのルールは周波数の比率だそうで、例えばA=440Hzを基音とするとE=660Hzは5度の関係になる。比率は2:3。弦の長さで言うと5弦開放Aを1とすると同7フレットのEは2/3に当たる。このシンプルな比率がキレイな響きに必要な要素で、これを積み重ねて出来たのがピタゴラス音律。

 この辺の詳しい話しはググってもらうとして、この音律での組み合わせは響きがキレイなのがポイントなんだけど、うまくキレイに響かない組み合わせもある。それを補正発展させて出来たのが純正律という訳。
 最近はこの音律に近い響きが得られるフレッティングが施されてるギターも出てきてますね。

 しかし、この純正律にも欠点があって、一つの調(キー)にしか対応出来ない。キーCで調律された場合、ドに対してのミとソはキレイだけど、レに対してのファ#とラ、つまりキーDはうまく調和しない。
 そこでまた改良を加えて、あらゆるキーに対応出来るようにしたのが平均律。ザックリ言うとどのキーでもちょっとずつズレてるんだけど、わかんないっしょ? ていう感じ。
 純正律のような揺れの少ない美しい和音は得られない代わりに、調に縛られない自由を得た訳です。

 この全てのキーに対応出来るってのはすごく革命的で、以後ピアノやギターを始め多くの楽器に取り入れられて、今耳にする音楽はほぼ全て平均律で作られてます。

チューニング 純正律と平均律_c0179274_00310827.jpg
 そこで本題。ではギターのチューニングはホントに平均律なのか?
 今どきチューニングを耳で合わせる人はどのくらいいるかわからないけど、昔は音叉と耳で合わせるのが普通だった。2本の弦を鳴らしてウネリが無くなる様に合わせるんだけど、これ少なくとも隣り合う弦とかよく使うキーのコードでは部分的に純正律っぽい合わせ方になっていると思われる。ウネリを無くすように合わせるのだから。

 反対にチューナーを使ってる場合は開放から全て平均律になっているはず。どの和音もややウネるが、どのキーでも安定した和音になるし、他の楽器(例えばキーボード)等とユニゾンになる場合はこの方が自然だ。

 その部分的に純正律に近いチューニング。これは開放のチューニングだけではなく、オクターブピッチの合わせ方でも大きく変わってきます。
 そもそもアレはなんで未だに12Fなのか? おそらく昔はチューナーとか無かったから、耳で合わせるのに一番わかり易いように12Fになったってだけじゃないかな。今はクロマチックチューナーというどのポジションでも合わせられるのがあるんだから、低音弦なんかは5Fとかで合わせた方でよいです。だいたいイントネーションピッチが合わせられる範囲ってそんなに広くなくて、太い弦なんかは弦長の1/3くらいの範囲しか合わないです。つまり12Fで合わせたら5Fは合わない。よく使うポジションだけ合ってればOKなんです。

 さてさてまた長話しになりましたが、まとめるとギターはチューナーで合わせた時とそれを耳で補正した時とで、平均律なのに純正律っぽい響きにする事も出来る、ある意味ハイブリッドな楽器であるという事。かな?

 以前、平均律と純正律をフレット位置に置き換えたらどのくらいの差があるのか調べたら、音程によってはかなりの開きがあった。
それ以来、ギターの精度に関してちょっと寛容になった気がします。

それではまた。
 

# by Rune-guitar | 2023-10-02 08:27 | guitar repair

by Runeguitar