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Rune guitar

runeguitar.exblog.jp

ギターリペアマンの視点から、仕組みやパーツなどにまつわる話しを綴っています。

 古い記事では何度かご案内してるのですが、修理の合間にギターの制作もやっております。ほとんど夜中にこちょこちょやっているので、1年に1、2本しか作ってませんが、今回1本だけ完成したのでその紹介をさせてください。

Curion2 NEW MODELについて_c0179274_01575838.jpg
 デザインはよくストラトと間違われるのですが、右半分がテレキャスターで左はそれを元にダブルカッタウェイのラインを取りました。ヘッドはテレキャスターではなく、テレキャスターベースやオリジナルプレシジョンベースをイメージした形になってます。つまりはそのテレキャスターベースのギター版みたいなコンセプトです。

 僕は元々ストラトが大好きなんですが、これまでの修理経験からストラトが先天的に抱える問題を何とかしたいというのがありました。そもそもストラトはその構造上カスタマイズがやり易く様々な改造が施されてきましたが、その結果長い年月の間にオクターブチューニングに限界が生じるという問題が出てきたんです。

 根本的な原因は1950年代の設計をそのままに、部分部分その都度近代化していった事でしょう。最たるはフレットの数とサイズです。元のフレットは幅約2mm、高さ約1mmの今で言うナローサイズ。フレット数は21。これが70年代頃から太いフレットが流行り、最大で幅2.7mm高さ1.4mmくらいまで大型化していきます。この時フレットの高さが0.4mmほど上がるのに伴って、当然ナットもサドルも上がる事になります。するとナットからペグ、サドルからブリッジへの角度がキツクなり結果オクターブピッチがシャープします。
 またフレットの数もギブソンへの対抗策か22Fに拡張されていきますが、この時にネックエンドとピックガードの形はそのままに指板だけの延長で22Fを追加した為に、ネックがボディーから上に飛び出すようになりました。つまりここでもサドルの高さが上がる事になり、オクターブピッチはますますシャープします。

Curion2 NEW MODELについて_c0179274_15313924.jpg

 この辺が顕著に現れたのがアメリカンスタンダードストラトが出始めた頃。最初から太いフレットで22F仕様。6弦の低音部でピッチがシャープしてサドルでは合わせられないとの問い合わせを何件かいただいた覚えがあります。まあこれは昔からよく言われていてアメスタ以前にも改造物などで似たような現象はありました。よく6弦のサドルはスプリングが切り詰められていたりしてましたが、その根本はナットやサドル上の角度がきつくなった(というか摩擦抵抗が増えた)事によるものと僕は考えてます。

 
 Curionではそこの改善をコンセプトの1つに入れていて、オクターブピッチ、取り分け6弦3FのG辺りがちゃんと出るような設計にしてあります。その為に既存(一般的なストラトタイプ)の設計から変更したのはスケール、ナット位置、ブリッジ位置、ネックポケットの深さなど複数個所に及んでいて、長年の改造によるツケを一気に払った感じです。おかげでコードのまとまりがアップして歪ませた時のうねりも少なくなっています。
Curion2 NEW MODELについて_c0179274_03191431.jpg

 そんなバックボーンを持つCurionというモデルに長年考えていたブースターを搭載して、ここでひとつ僕の中での区切りになった気がしてます。現場を選ばない。レトロなルックスの割に中身はハイエンドという相反するような仕様。その他あちこちに仕掛けを施したルーンギターオリジナルモデル。
ぜひお試しください。
お問い合わせは
mail@runeguitar.com までお願いします。

# by Rune-guitar | 2023-07-24 03:23 | Curion
 先日、ギターのスケールについて話す事があって、久々に楽しかったのでブログにも上げてみようと。
 今回は初心者の方に贈るアドリブについての話しです。


 誰しも最初はコピーから入って、憧れのギタリストのフレーズを数えきれないくらい繰り返し練習するけど、いつしか完コピしなきゃダメなん?てなって、特にライブ盤だとスタジオと全然違ったりするもんだから、うん、アドリブでいいんだ🙂となって、ではアドリブってどうやんの?てな流れで理論を小学校からやり直すケースが多いんじゃないかな。

 もっともやり直すというよりは、ほぼ新しく学ぶ感じでしたね。僕の場合は。楽典とか買ってね。
 でも実際の所はまずスケールを覚えて適当になんか弾くというのをたくさんやったように記憶してます。とにかく楽な方に。楽典は辞書みたいな物?
 要は音が外れてなければいいんですよ。最初はね。カッコイイかどうかはその後。

 そんな僕のスケールの覚え方。たぶんアドリブ初心者の方にもハードル低いと思うので、お役に立てるようであれば読んでみてくださいませ。


 まず初めに一応音階の仕組みを理解しておいてください。この世でもっとも有名なメロディー、ドレミファソラシドの秘密(?!)



 音程。音と音の間隔は音程差またはインターバルなどいろんな呼び方がありますが、音程差の基本は全音と半音の2種類です。ドとレは全音(1音)、レとミも全音、ミとファは半音。こんな風にメロディーは全音と半音の組み合わせで出来ています。
 先のドレミファソラシドは全全半全全全半という音程差であのメロディーになる訳で、ギターに当てはめると半音は1フレット、全音は2フレットの間隔で弾く事が出来ます。

 これを実際の押さえる位置で示したのがこの画像。
エレキギターの簡単なアドリブネタ_c0179274_01530087.jpg
5フレット辺りの1、2、3弦でドレミファ〜を弾く時に押さえるポジションはこんな感じ。3つとも同じですが、音の呼び方を変えてみました。
 お馴染みのドレミ〜はイタリア、CDE〜はドイツやアメリカ(発音は違うけど)、数字は音程差を度数で表したもの。ドレミのドを1(ルート)として、何番目の音かって考え方。調性に囚われないので便利。

 因みにこのメロディーはハ長調、keyCのスケールになります。ピアノで言うと白鍵の並びがこれ。keyCもしくはAmの曲なら、このポジションを適当に弾きまくればOK。これもアドリブ。各弦とも前後に同じスケール上の音があるので書き出してみるとよい。

 さて、このCまたはAmのスケール。とりあえずこのブロックで覚えちゃいましょう。ギターはポジションをズラせば移調が簡単に出来るので、そのまま2フレット上にズラせばそれはDまたはBmのスケールになります。


エレキギターの簡単なアドリブネタ_c0179274_02060793.jpg
 これは同じ形のまま12Fまでズラしたもの。ドがソまで上がりましたね。このまま弾けばメロディー的にはドレミファ〜と同じに聴こえますが、実際にはファの音を半音上げた状態になってます。

 つまり、keyCの楽曲まるまる全てのファ(F)をシャープさせれば、ハ長調からト長調に移調した事になるんです。もちろん全体を5度上げないと元のメロディーにならないけどね。
 それを表すのがト音記号の横の調号。ファの位置にシャープを付けてkeyを指定してるんです。


 ここでまたポジションを5Fに戻して、今度は押さえる場所を一箇所だけ変えてみます。
エレキギターの簡単なアドリブネタ_c0179274_02150042.jpg
1弦7Fのシの位置を6Fに下げます。調号ではシの所にフラットが付きました。これだけでスケール上はへ長調または二短調になります。keyFまたはDmですね。
 さっきと同様に2フレット上げればこれはGまたはEmのスケールとして使える訳です。12Fの時とはルート(この場合はGの音)の位置が異なりますが、スケール上は同じなので、これでGのスケールを2つゲット。
 更にそのまま12Fまでズラせば、それは再びハ長調、keyCのスケールになります。シャープもフラットも無く純粋にドレミファソラシドなんですが、メロディー的にはソラシドレミファソ。Cスケールをソから弾いたらこうなるってフレーズになっております。
エレキギターの簡単なアドリブネタ_c0179274_02273481.jpg


 先にも述べたけど、1枚目の画像にある3番目の図は、あえてポジションの数字を入れませんでした。音名も数字で代用。こうするとどのポジションでも考えやすくなるんです。長調のルートを1として、何番目の音がどんな役割を持つか解ってくると、アドリブで何を弾いたらカッコイイかが見えてきます。 



エレキギターの簡単なアドリブネタ_c0179274_02433664.jpg
 なのでまず今回はこの2つのポジションをスケールとして覚えてみてください。違いは矢印のトコ2か所。2重マルは長調の時のルートです。
 割りとよく使うポジションなので、コピーにも役立つと思います。これの半音の所を省いたスケールはペンタトニックスケールといって、アドリブの基本みたいなフレーズになります。調性がアバウトになるので、シンプルなロックでは王道フレーズだったり。

そして段々にルートの位置や5度の位置、その前後のポジションなんかも覚えていくと、なんとなくアドリブは出来るようになります。
てか、ロックとかだとほとんど手癖フレーズなんで、今までコピーしたネタをkey合わせて弾けばそれも立派なアドリブです。

 アドリブ出来ると音楽の遊び方が格段に広がるので、ぜひ皆さんトライしてみてね。

# by Rune-guitar | 2023-07-09 06:15 | いろんな事
 最近、お客様との会話で出た話題で重なるものがありました。

 アコギの弦を交換する時に、ボールエンドの向きは決まりがあるのか?

 これ、今までもいろんな所で何度も取り上げてるネタなんですが、改めてお話ししてみようかと思います。


 ボールエンドの向き。まあ大雑把に言えばどんな向きでも張れます。ピンが浮いてくるとか、チューニングしているとピッチが下がってくるなどは、ボールエンドの向きではなく位置だったりピンの溝だったり、少し違う理由になるのでここでは割愛しますね。
 今回の話しは楽器を長持ちさせる為の工夫としてこうすると良いよって内容なので、初心者の方に限らず皆さん読んでいただけるとうれしいです。

アコギの弦を張る時に_c0179274_01502737.jpg
 まずこちらの画像、ギターのブリッジ部分を内部から見たものです。台形の板はブリッジプレートといいます。穴の部分、ボールエンドに注目してください。これ、本来は埋まっててはイケナイんです。古いギターにはよくあるのですが、ホントはボールエンドがプレートに引っかかる様に外に出てるもの。
アコギの弦を張る時に_c0179274_01510685.jpg

 こういうめり込んだ状態では、大抵ピンも大きく変形してます。ボールエンドがプレートにめり込む際にピンを外側に押しやるからです。
アコギの弦を張る時に_c0179274_01514634.jpg


 まあ弦の張力はアコギの場合1本あたり10kg越えなので、この小さな面積にそれだけの荷重がかかると痛むのは避けられません。
 しかし、負担を軽くする事は出来ます。それによって部品が長持ちすれば、修理に出す時期も遅らせる事が出来ます。ギターがそれだけ長生き出来るのは、僕らもうれしい事です。
 そしてその工夫はとても簡単ですが、その前に破損のメカニズムを説明しておきますね。

 この穴が広がっていく症状は、ボールエンドがブリッジプレートのどこにどの向きで接しているかで進行が違います。図にしてみたのでご参照ください。

アコギの弦を張る時に_c0179274_01564089.jpg
 上の図。本来のボールエンドの向きがコチラ。
ピンに対して平面側が接しています。この場合ボールエンドはプレートにしっかり引っかかります。

アコギの弦を張る時に_c0179274_01575704.jpg
 一方90度ズレてボールエンドの側面がピンと接すると、曲面がピンとプレートの僅かな隙間に入り込みやすくなります。ピンに付いてるテーパーによって穴の周りには隙間が生じてるんですね。
 この隙間分ピンは外側に押しやられます。するとボールエンドは広がった隙間に更に入り込もうとします。

アコギの弦を張る時に_c0179274_02002891.jpg
 この負のスパイラルでボールエンドはどんどんプレートに埋まっていきます。ピンも変形します。
 プレートには比較的硬めの材が使われていますが、進行してる個体ではプレートを突き抜けてトップ板さえも貫通してしまいます。トップ板のスプルースは軟らかいので、すぐ一番外側のブリッジベースに到達し、割れや剥がれなどを引き起こす原因となります。

アコギの弦を張る時に_c0179274_02011411.jpg
 ブリッジベースの厚みやサドルの高さによっては、弦の巻きの折返し部分がサドルに乗っかってしまい、正しい弦高にならなくなったりピッチが変になったりします。

アコギの弦を張る時に_c0179274_02020749.jpg
 そうならない為の工夫は、弦を張る時にボールエンドを正しい向きにする工夫は、折返し部分を画像の向きに曲げる事です。巻終わりの出っ張りがスパイクにならないよう外側に出来れば溝に引っかかりにくいです。

 こうしてやるとボールエンドを穴に通す際に平面をピン側に向けてやる事が容易になります。
 因みに2弦(.017とか)はあまり急に曲げると巻きの所で折れる可能性があるので僅かでよいです。
アコギの弦を張る時に_c0179274_02023262.jpg

 この向きによるボールエンドの作用をもう少し詳しく。
 図にしてみたけどイメージ伝わるかな。
アコギの弦を張る時に_c0179274_02032267.jpg
 弦はチューニングされるとナット側に引っ張られますが、ピンが刺さってないとボールエンドは矢印の向きに動きます。ピンがあればブリッジプレートに引っかかってそのまま上に上がろうとしますが、ピンが無ければ外れて穴から抜け出ようとします。
 ピン穴に弦溝が切られてるマーチンなどはまだいいのですが、溝の無いギブソンなどはちょっと不利かも。
 ボールエンドの向きはこの作用に影響してるんです。

アコギの弦を張る時に_c0179274_02040697.jpg
Aは曲面が接してる場合。
穴に溝が有ってもボールエンドの側面がそれよりも内に来る為、ピンは外側に押され隙間が広がります。

アコギの弦を張る時に_c0179274_02044707.jpg
BはAとほぼ同じですが、ピンの溝にボールエンドが入り込んでる状態。ピンの溝自体が開いてしまい、ピンのダメージも大きくなります。

アコギの弦を張る時に_c0179274_02133588.jpg
そしてC。これが一番ピンを押し出す作用が小さく済みます。マーチン型なら弦が穴の溝に収まりやすく、張力はそのままプレートにかかるので、ピンへのダメージも減ります。
溝無しでもピンを押し出す効果はAやBより小さいですが、出来ることなら溝を切るなどすると良いですね。
 まあ、ピンを使うアコギでは全てこの向きに統一でOKです。


さて、こんなミクロの話しではありますが、少なからず良い影響はある訳で、大した手間でもないですから、一つ取り入れてみてください。
あ、必ずそうなっていないとイケナイって話しじゃないです。そんな事に囚われてしまっては本末転倒なので、一応手間はかけたぜくらいの緩さで良いです。壊れたら直せば良い。直す際に少なからず音に変化が出ますが、それも当たり前の事。だからこそ長持ちさせたいですよね。

最後に。以前海外のルシアーの方が、動画でやはり弦の根元を曲げるシーンを見ましたが、なんだか今回の話しとは意味合いが異なるようなので、それとは別でお考えください。曲げる位置も向きも全く異なるので、一緒にすると間違った情報になりかねませんから。

 曲げる場所はサドルに乗る位置よりもボールエンド寄り。これは間違えないように。

それではまた次回。


# by Rune-guitar | 2023-06-28 22:03 | guitar repair

by Runeguitar