人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

Rune guitar

runeguitar.exblog.jp

ギターリペアマンの視点から、仕組みやパーツなどにまつわる話しを綴っています。

 最近、お客様との会話で出た話題で重なるものがありました。

 アコギの弦を交換する時に、ボールエンドの向きは決まりがあるのか?

 これ、今までもいろんな所で何度も取り上げてるネタなんですが、改めてお話ししてみようかと思います。


 ボールエンドの向き。まあ大雑把に言えばどんな向きでも張れます。ピンが浮いてくるとか、チューニングしているとピッチが下がってくるなどは、ボールエンドの向きではなく位置だったりピンの溝だったり、少し違う理由になるのでここでは割愛しますね。
 今回の話しは楽器を長持ちさせる為の工夫としてこうすると良いよって内容なので、初心者の方に限らず皆さん読んでいただけるとうれしいです。

アコギの弦を張る時に_c0179274_01502737.jpg
 まずこちらの画像、ギターのブリッジ部分を内部から見たものです。台形の板はブリッジプレートといいます。穴の部分、ボールエンドに注目してください。これ、本来は埋まっててはイケナイんです。古いギターにはよくあるのですが、ホントはボールエンドがプレートに引っかかる様に外に出てるもの。
アコギの弦を張る時に_c0179274_01510685.jpg

 こういうめり込んだ状態では、大抵ピンも大きく変形してます。ボールエンドがプレートにめり込む際にピンを外側に押しやるからです。
アコギの弦を張る時に_c0179274_01514634.jpg


 まあ弦の張力はアコギの場合1本あたり10kg越えなので、この小さな面積にそれだけの荷重がかかると痛むのは避けられません。
 しかし、負担を軽くする事は出来ます。それによって部品が長持ちすれば、修理に出す時期も遅らせる事が出来ます。ギターがそれだけ長生き出来るのは、僕らもうれしい事です。
 そしてその工夫はとても簡単ですが、その前に破損のメカニズムを説明しておきますね。

 この穴が広がっていく症状は、ボールエンドがブリッジプレートのどこにどの向きで接しているかで進行が違います。図にしてみたのでご参照ください。

アコギの弦を張る時に_c0179274_01564089.jpg
 本来のボールエンドの向きがコチラ。
ピンに対して平面側が接しています。この場合ボールエンドはプレートにしっかり引っかかります。
アコギの弦を張る時に_c0179274_01575704.jpg
 一方90度ズレてボールエンドの側面がピンと接すると、曲面がピンとプレートの僅かな隙間に入り込みやすくなります。ピンに付いてるテーパーによって穴の周りには隙間が生じてるんですね。
 この隙間分ピンは外側に押しやられます。するとボールエンドは広がった隙間に更に入り込もうとします。

アコギの弦を張る時に_c0179274_02002891.jpg
 この負のスパイラルでボールエンドはどんどんプレートに埋まっていきます。ピンも変形します。
 プレートには比較的硬めの材が使われていますが、進行してる個体ではプレートを突き抜けてトップ板さえも貫通してしまいます。トップ板のスプルースは軟らかいので、すぐ一番外側のブリッジベースに到達し、割れや剥がれなどを引き起こす原因となります。

アコギの弦を張る時に_c0179274_02011411.jpg
 ブリッジベースの厚みやサドルの高さによっては、弦の巻きの折返し部分がサドルに乗っかってしまい、正しい弦高にならなくなったりピッチが変になったりします。

アコギの弦を張る時に_c0179274_02020749.jpg
 そうならない為の工夫は、弦を張る時にボールエンドを正しい向きにする工夫は、折返し部分を画像の向きに曲げる事です。巻終わりの出っ張りがスパイクにならないよう外側に出来れば溝に引っかかりにくいです。

 こうしてやるとボールエンドを穴に通す際に平面をピン側に向けてやる事が容易になります。
 因みに2弦(.017とか)はあまり急に曲げると巻きの所で折れる可能性があるので僅かでよいです。
アコギの弦を張る時に_c0179274_02023262.jpg

 この向きによるボールエンドの作用をもう少し詳しく。
 図にしてみたけどイメージ伝わるかな。
アコギの弦を張る時に_c0179274_02032267.jpg
 弦はチューニングされるとナット側に引っ張られますが、ピンが刺さってないとボールエンドは矢印の向きに動きます。ピンがあればブリッジプレートに引っかかってそのまま上に上がろうとしますが、ピンが無ければ外れて穴から抜け出ようとします。
 ピン穴に弦溝が切られてるマーチンなどはまだいいのですが、溝の無いギブソンなどはちょっと不利かも。
 ボールエンドの向きはこの作用に影響してるんです。

アコギの弦を張る時に_c0179274_02040697.jpg
Aは曲面が接してる場合。
穴に溝が有ってもボールエンドの側面がそれよりも内に来る為、ピンは外側に押され隙間が広がります。

アコギの弦を張る時に_c0179274_02044707.jpg
BはAとほぼ同じですが、ピンの溝にボールエンドが入り込んでる状態。ピンの溝自体が開いてしまい、ピンのダメージも大きくなります。

アコギの弦を張る時に_c0179274_02133588.jpg
そしてC。これが一番ピンを押し出す作用が小さく済みます。マーチン型なら弦が穴の溝に収まりやすく、張力はそのままプレートにかかるので、ピンへのダメージも減ります。
溝無しでもピンを押し出す効果はAやBより小さいですが、出来ることなら溝を切るなどすると良いですね。
 まあ、ピンを使うアコギでは全てこの向きに統一でOKです。


さて、こんなミクロの話しではありますが、少なからず良い影響はある訳で、大した手間でもないですから、一つ取り入れてみてください。
あ、必ずそうなっていないとイケナイって話しじゃないです。そんな事に囚われてしまっては本末転倒なので、一応手間はかけたぜくらいの緩さで良いです。壊れたら直せば良い。直す際に少なからず音に変化が出ますが、それも当たり前の事。だからこそ長持ちさせたいですよね。

最後に。以前海外のルシアーの方が、動画でやはり弦の根元を曲げるシーンを見ましたが、なんだか今回の話しとは意味合いが異なるようなので、それとは別でお考えください。曲げる位置も向きも全く異なるので、一緒にすると間違った情報になりかねませんから。

 曲げる場所はサドルに乗る位置よりもボールエンド寄り。これは間違えないように。

それではまた次回。


# by Rune-guitar | 2023-06-28 22:03 | guitar repair
American Performer Mustang のトレモロユニット_c0179274_00144153.jpg
 お得意様からアメリカンパフォーマームスタングという、ちょっとカッコイイギターをお預かりしました。なんとピックアップをジャガーの物に交換!なんかローノイズでルックスも良いぞ。
 このシリーズは従来品のレプリカではなく、あくまで今のモデルとして作られていて、いろんな所が進化してます。その中でちょっと感動したあるパーツの話しをしたいと思います。

 フェンダームスタングというと、ショートスケールで22フレットの使用感、独特のレスポンスが特徴のダイナミックトレモロが魅力ではないかな。ストラトのシンクロナイズトレモロとは一味違う掛かり方。
 使用アーティストではやはりcharさん。ムスタングをあんな風に使える人はそういないですよね。

American Performer Mustang のトレモロユニット_c0179274_00164687.jpg
 ムスタングに搭載されてるダイナミックトレモロユニットは、ストラトのシンクロナイズトレモロとは全く異なり、テイルピースとブリッジがセパレート型。テイルピース側にスプリングを2本装備して、スタッドのクビレを支点として弦との張力バランスを取る仕組み。ブリッジ側は両端から伸びた脚の先端を軸に、弦の動きに合わせて前後に動くようになっています。
American Performer Mustang のトレモロユニット_c0179274_00183688.jpg
こんな感じ。伝わるかな。
以下の画像と併せてご覧ください。
American Performer Mustang のトレモロユニット_c0179274_00180637.jpg
American Performer Mustang のトレモロユニット_c0179274_00203856.jpg
American Performer Mustang のトレモロユニット_c0179274_00230034.jpg
3枚目違うギターだけど、ブリッジサドルの脚。
バーを動かすとテイルピースが前後に振れて、ブリッジサドルはそれに合わせてというか釣られてというか連動する仕組み。
American Performer Mustang のトレモロユニット_c0179274_00213069.jpg

 この動作はオクターブピッチやチューニングの安定を考えるとあまり良いとは言えないけど、当時の需要というか求められてる効果としてはシンクロよりも合ってたのかな。バーの可動範囲は大きい割に、ピッチの揺れ幅はそんなに広くないので、ストラトよりもやわらかでしなやかなビブラートが得られます。まあストラトは急過ぎると。

 charさんはそのダイナミックトレモロを、文字通りダイナミックな使い方してしまう訳ですが、チューニングを保つにはストラトよりも更に気を遣う事になります。

 ストラトもナットの滑りやペグの巻き、バーの操作など、いろいろ使いこなす為のワザがありますが、 ダイナミックトレモロはそもそもその造りにかなり改善の余地があります。その最たる部分がテイルピースの支点です。
 今回紹介するフェンダーのアメリカンパフォーマームスタングのトレモロユニットは、その問題に果敢に取り組んでおりまして、コレは紹介しない訳にはいかない。ここをキッチリ改善してくる辺り流石老舗です。まずは画像を。支点部分をユニット裏側から撮ってみました。
 
American Performer Mustang のトレモロユニット_c0179274_00285057.jpg
American Performer Mustang のトレモロユニット_c0179274_00292710.jpg

 従来まではプレートに開けられた穴がなんとなく支点らしく面取りされていて、スタッド側のクビレもなんとなくでした。まあ、それはそれで一応機能するんですが、トレモロユニットの要はちゃんと元の位置に戻るかどうか。
 フローティングにセットされたユニットはどれもここが一番大事なトコ。フローティングってそのニュートラルな位置で止まるのが案外難しいんです。バランスで留まってるだけなので、0ポイント近辺はちょっとの負荷で位置が微妙にずれやすく、結果全体のチューニングがおかしくなってしまう。

新しいユニットはここをフロイドローズやwilkinson、フェンダーアメリカンスタンダードトレモロのようにナイフエッジ方式にして、支点部分で発生する摩擦を極力減らし不安定要素を取り除く努力がされてます。ここに手を付けたのはホント流石。だって他メーカーは絶対手を出さない領域だもん。

American Performer Mustang のトレモロユニット_c0179274_00255839.jpg
American Performer Mustang のトレモロユニット_c0179274_00270154.jpg
 こんな感じ。わざわざ座ぐりまで変更してやるのが立派。この改良のお陰でユニットの動きはとても良くなってます。
もちろんその他の問題点にも改善が見られます。

American Performer Mustang のトレモロユニット_c0179274_20332216.jpg
 このアメリカンパフォーマーシリーズは演奏性を重視してるので、ヴィンテージの仕様なんかには囚われません。指板Rは9.5インチと最近のフェンダーの仕様になってまして、当然ブリッジサドルも併せて変更してあります。個別の弦高調整が出来ないタイプなので、ここはしっかり9.5になってますね。ABRの汎用品だとRがイマイチだったりするので、この辺りもうれしい。
American Performer Mustang のトレモロユニット_c0179274_00230026.jpg

 そして皆が困っていたアームバーを差し込む穴にナイロンブッシュが付いた!これがあると無いとで使用感がずいぶん違う。以前は横から押さえるネジの先にナイロンのパーツが着いてたんだけど、やはり今度のはアソビが少ないよ。
American Performer Mustang のトレモロユニット_c0179274_20334566.jpg

 ついでに各部の調整画像も少し。
American Performer Mustang のトレモロユニット_c0179274_00244833.jpg
オクターブ調整は普通のドライバーだとテイルピースに当たってやりにくいので、こんなヤツを使ってみた。なかなか良い。因みに出荷時には前後逆向きにマウントされてるみたいだけど、サドルの位置によってはオクターブ調整ネジが当たりそうで、気になっちゃうのでコッチ向きにしてます。

American Performer Mustang のトレモロユニット_c0179274_00250982.jpg
 弦高は個別には出来ないので、ブリッジの左右の高さで調整。ジャガーやジャズマスターみたいなスパイラルサドルにしなかったのはメリットもある。サドルにかかるテンションが弱いので、高さ調整ネジの緩みや鳴きなどにはコッチの方が強い。サドルからの弦落ちなんかにもね。

 以上、かなりざっとだけどアメリカンパフォーマームスタングのトレモロについてでした。ホントはまだ変更点や謎の部分あるんだけど。
 しかし、正直ムスタングってストラトやテレのように数売れる機種じゃないのに、新しくするからにはやるんだぁと思いました。サイクロンの時もボディー厚に合わせてトレモロブロックを短くしてたけど、向うって必要な事は作ってでもやるよね。今有るものでナントカしよう的なのは無い。

そういう物の作り方は好きです。


# by Rune-guitar | 2023-06-07 23:16 | guitar repair
 本業は楽器(主にギター、ベース)の修理ですが、こんな物もやってます。オリジナルのギター内蔵ブースター。BB741といいます。
ブースター内蔵例_c0179274_23335622.jpg

 70年代後半辺りから一世を風靡した、超有名ペダルに使われていたオペアンプLM741を使用。現在では4558などに取って代わられた感がありますが、パーツとしてはまだまだ現役。普通に買えるし104.png
ブースター内蔵例_c0179274_01385801.jpg

 このLM741を使った回路、なんというか高性能ではないけど、必要十分且つ音が痩せないという楽器用機材として失くしてはいけない所をちゃんと持っている、そんなサウンドですね。日本ではオーディオと楽器が同じ枠に入りがちですが、本質は全く違います。

 オーディオは基本録音されたものを再現するのが仕事なので、レンジを広くカバーします。低音から高音まで広く均一に。
 一方楽器用の機材はその楽器専用が多いので、レンジは狭くていいんです。いやむしろ広くしたらダメなんですね。なんだか立体感の無い音になってしまう。

ブースター内蔵例_c0179274_23341758.jpg
 あ、また脱線しちゃいましたね。
話を戻して、そのBB741を搭載していただきましたので、その時の話しを。

 BB741の回路はとてもシンプルで、調整はドライブとレベルのみ。ドライブ用のポットと、On/Off用SW。そしてオーナーさま独自のアイデアによる特種サーキット用のミニSWを追加する為、新たにキャビティーを増設。バッテリーもそこに収納します。

ブースター内蔵例_c0179274_23333285.jpg
 基板は元々のコントロールキャビティーに配置します。ウチのオリジナルギターがテレキャスと同じ小さなキャビティーなので、ボリュームポットと同じ幅にこだわってかなり小さくしてあります。これはほとんどのギターに入る筈。
 バッテリーは交換の手間を考えると、別にした方がよいのですが、更にボックス用のキャビティーを増やすのもなんなので、今回は別の手を使います。

ブースター内蔵例_c0179274_21211231.jpg
 なんだかんだ全部入ると結構混み合いますね。このギターはHSHの配列なんですが、ハムのコイルタップがちゃんとしたシングルのように使えるピックアップなので、3シングルとしても使えるように5wayレバースイッチと、2ハムとして使う為の3wayミニトグルスイッチの2通りの配線を切り替えで実現させます。
ブースター内蔵例_c0179274_09470094.jpg
 1ボリュームとレバースイッチ&ミニトグルスイッチ。下にあるのがそのワイアリング切り替えとブースターのOn/Off。そしてドライブのコントロールというレイアウト。出来る事の割に意外とシンプル。

 ブースターはなるべく元の音をそのままゲインアップさせるようになっているので、ドライブ0ではOn/Offの違いが判らないです。つまりOnのままドライブコントロールだけで操作してもよいし、ドライブ固定でミニSWでOn/Offでもよいです。内部にアウトプットレベルがあるので、ちょい上げ目でソロの時にドンとやっても良いですよ。

ブースター内蔵例_c0179274_21361889.jpg
 願わくば、大型のチューブアンプと一緒に音作りしていただくと理想的。クリーン、クランチ、リードまでほぼ手元でいけます。
 このギターのように元々守備範囲が広いと、音のバリエーションは更に豊富に。足元で操作するのと違ってステージのどこにいてもゲインをいじれるしね。


 こういう何か目的をもって回路を工夫する作業はまるでパズルの様。皆さんも何かやりたい配線があったらパズルを楽しんでください。

とりあえず、ではまた。

# by Rune-guitar | 2023-06-01 23:32 | guitar repair

by Runeguitar